フレイとピーチの強引さに負け、ウォルという男性がいる中の女子会に連れ回されるままのファレスター。
　自分は場違いなのではないか、という顔すら浮かべないウォルは、静かにフレイとピーチの話に耳を傾けながら、後ろをついてきた。
｢なーんで女子会にライトがいるのさー｣
｢楽しいことは、大勢で楽しんだほうがいいですわ｣
　不服そうなフレイに対し、いつもにこやかな笑顔が絶えないピーチの会話は、通じてそうで一方通行だった。
｢あの……｣
　その間に挟まれるファレスターが、とうとう声をあげた時、ピーチははっと口元を覆った。
｢そうでしたわ。ファレスター様は、ここのこと、よく知らないんでした｣
　それから、二人は交互に、屋敷のことについての話をしてくれた。
　ここは、森と海に囲まれているなんの娯楽もない場所に建っている為、マスターハンドが気まぐれに、この屋敷内のみに使える硬貨を作り出したらしい。
　それらを使って、屋敷内の住民たちは、一階をそれぞれのお店に作り変えて経営をしているのだという。
｢でも、お金がなくなったらマスターハンドが出してくれるから、ここのお金は実質雲みたいなもの｣
　とフレイも説明してくれたが、ここに来たばかりのファレスターには、そんな硬貨は持ち合わせていなかった。
｢私、お金なんて一銭もないし……｣
　自分が床についた時にこの世界にやって来たファレスターにとって、金目になるものも持ち合わせてはいなかった。
｢あら、そんなことは心配ありませんわ｣
｢うんうん！　マスターハンドから貰えるとは思うけど、買ってあげるよ！｣
　とピーチとフレイは言い、ファレスターはますます申し訳なくなった。
｢そんな……｣
　ファレスターが言いかけた時、別の声が飛んだ。
｢あーら、アナタ！　全っ然ダメじゃなーい！｣
｢へ？｣
　すっとんきょうな声を出しながらファレスターが顔をあげると、そこに、おしゃれな格好をした骸骨が立っていた。ファレスターは悲鳴をあげた。
｢キャー！！　お化けー！！！｣
　ファレスターは、今までお化けをそんなに怖いと思ったことはなかったはずなのだが、実際このようにはっきりと見えてしまうと、それはそれは恐ろしいものだった。
｢あーら、アナタ……このオシャレコウベになんて態度を取るのよ、失礼な人ねぇ｣
　とおしゃれな格好をした骸骨人間……オシャレコウベだなんてそのまんまの名前……がファレスターに言った。
｢ごきげんよう、オシャレコウベ様｣
｢やっほー、オシャレコウベ！｣
　一方のピーチとフレイは特に驚く顔もせずに挨拶をし、後ろにいるウォルは顔色一つ変えずにオシャレコウベをみつめた。
｢あら、アナタ……またそんなダッサイ格好してるのねぇ……｣
｢この服気にいってるんだもーん｣
　オシャレコウベのファッションチェックに、フレイは子どもっぽく口を尖らせながら言った。
｢それに比べてご覧なさい！　ピーチという名前に相応しい素敵なドレスじゃない！｣
｢お褒めに預かり光栄ですわ｣
　ファレスターを放って置いて、オシャレコウベは今度はピーチのファッションチェックをし出す。
｢あのー……｣
　ようやく少し落ち着いたところでファレスターが声を掛けると、あら、アナタそこにいたのね、とでも言うかのように、オシャレコウベが近付いてきた。
｢どこの誰か分からないけれど、アナタのファッションは全然ダメよ！｣
｢え……？　あ｣
　ファレスターは今ここで初めて、自分の服装に気が付いた。
　この世界に来る前、自分は確かにベットにいたのである。ファレスターは、パジャマの姿のままだった。しかも、花畑で寝ていたのだから、膝辺りが土で汚れている。
｢こっちに来なさーい！｣
　オシャレコウベは、ファレスターの手を、骨だけの手で取ってどこかへと連れて行こうとした。
｢え、あの、ちょっと？！｣
　ファレスターの声を無視するオシャレコウベ。
　助けを求めるようにピーチとフレイを振り向くが、二人揃ってにこにこ笑うだけだ。
　一体これから何をされるのか。
　ファレスターは、恐怖と期待が混ざったような気持ちで、一つのお店の中へと連れ込まれて行った……。