｢海に、信じられないくらい大きな怪物がいたのよ｣とナミは話し出した。｢そしたら、ファレスターちゃんの持ってたクリスタルが光ったのよね｣
｢クリスタルが？｣
　マスターハンドの目線は……といっても、目がないから手の平側をファレスターに向けた。口調からして半分疑っているのだろう。
｢私、よく覚えていないんですが……｣
　とファレスターは言いながら、ウエストポーチからクリスタルを取り出した。今はそのクリスタルは、怪物が出た時のように光ってはいなかったが、中でうっすらと輝きを放っているように見えた。
｢なるほどね〜｣
　マスターハンドは何かを考えている様子でそう呟いた。それからもう一度ファレスターの方へ向き直り、こう言った。
｢もう一度、リーダー会議をした方がいいかもね｣
｢リーダー会議……｣
　それは、十九人の男女が集まったあの会議室で話し合ったことだ、とファレスターはすぐに分かったのだが、不安は拭いきれなかった。
｢そうね。その方がいいわ｣とナミは言った。｢ルフィだけじゃ心配だから、今度は私も参加したいけど、いいかしら？｣
｢もちろんだよ♪｣
　ファレスターを置いてどんどんと話が進めるナミとマスターハンド。
　自分は、そこで何が話せるだろうか。ファレスターは何度も自分のしたことを思い返そうとしたが、やはりはっきりとは覚えていなくて心の中で落胆した。
｢私、やっぱりあまりよく思い出せなくて……｣
　とファレスターが言うと、心配しないで、とマスターハンドが言葉を続けた。
｢おおよそのことは検討がついているよ｣とマスターハンド。｢だけど今日は、長い船旅で疲れたよね？　部屋で休んでもいいんじゃないかな？｣
｢え｣
　休んでいる場合ではないのではないか、とファレスターが言おうとした時、大きな音が会話に割り込んできた。
　グルグルル〜……。
　お腹の虫の音だ。
　思えば、そろそろ夕食の時間だ。日も落ちていて、外がそろそろ暗くなる。
｢すみません、お腹がすいちゃって……｣
｢大丈夫大丈夫！　食事は大事だからね♪｣
　マスターハンドは相変わらず軽い口調でそう言い、隣のナミがにこりと笑った。
｢まずは、食堂に行きましょ、ファレスターちゃん｣
｢はい！｣
　ファレスターは、ナミと一緒に食堂へ向かった。