屋敷に戻ると、白い大きな手……マスターハンドがファレスターたちを出迎えてくれた。
　麦わらの一味とはそこで各々の作業や行動へ移って行き、ファレスターはというと、船旅はどうだったのかと、マスターハンドに詳細を訊ねられた。
　屋敷に着いた時にはすでにファレスターは一人で歩けるようになってはいたが、あの船上での戦いを何度思い出そうとしても、自分が何をしたのかはっきりと分からないでいた。
｢それで……そこにいる人形は？｣
　覚悟していた質問。ファレスターはなんて答えようか考えていたのに、言葉が出てこなかった。
〈オレはフィーだぞ〉
　そんな不安をよそに、フィーはいつも通りの調子で名乗った。へぇ、人形ってまともに喋るんだね〜なんて、軽い口調で返すマスターハンドの心の底は伺えない。
｢あの、フィーは、船から落ちて砂浜にいた時、ずっとそばにいてくれたみたいで……｣ファレスターはようやく言った。｢だからきっと、フィーは悪い人形じゃないんだと思います｣
　それには根拠がなかった。だが、ファレスターはどうしても、ここまで一緒に来てくれたフィーを疑いたくなかったのだ。
｢ふぅん……｣
　マスターハンドの返事はそれだけだった。それからはフィーの周りをぐるぐると眺めるように飛び回り、最終的に放った言葉は、クレイジーハンドなら怒るだろうな、という一言だった。
｢あの、私、フィーのことは責任を持って見ていますので……｣
　ファレスターは言いかけて口をつぐんだ。もし、フィーが暴れてこの屋敷の住民を襲い出したら、果たして自分は一人で止めることが出来るのだろうか、と。
｢大丈夫だろ｣と言ったのは、ファレスターたちに近づいてきたソニックだった。｢もしその人形がおかしなことをしたら、オレたちで止める。それでいいだろ？｣
｢ソニック……｣
　ファレスターがソニックを見つめた。ソニックはファレスターに向かってウインクをした。
｢まぁそうだね♪｣マスターハンドは気にしないのか、そう言ってフィーへ手を向けた。｢初めまして、人形さん。僕はマスターハンドだよ♪｣
〈オレはフィーだ。よろしくな、マスターハンド〉
　フィーは突然のマスターハンドの姿に驚くこともなく、快く握手を交わした。
｢フィーの部屋は後で用意しとくね｣
｢ありがとうございます、マスターハンドさん｣
　マスターハンドの言葉にファレスターがホットしたのも束の間。
｢それと、もう一つ気になることがあるんだけど｣
　それは、ファレスターの隣にいるナミから発せられた。