しかし、紙にある文字は、記号のような、落書きのようなものばかり並んでいて、ファレスターにはさっぱり読めなかった。
｢解読出来そう？　ロビン……｣
　と訊ねているところ、ナミもその文字が読めないらしかった。
｢これが本当に文字なら、何か規則性があるはずよ｣とロビンは言った。｢時間はかかると思うけど、解読してみるわね｣
｢確かロビンさんは、考古学者さんでしたよね……？｣
　ファレスターは思い出しながらそう聞いた。
｢ええ、そうよ｣
｢すげェな、人形！｣
　直後、ルフィの声が飛んできた。
　見ると、フィーが逆立ちをしたまま両腕だけで歩いているのを、ルフィとチョッパーが楽しそうに見ていた。
｢それでお前は、何が出来るんだ？｣
　そしてそこから少し離れたところでは、ソニックに何か取り調べをしているかのようなウソップがいた。
　よかった。フィーもソニックも、この船の人たちに馴染んだみたいだ、とファレスターがほっとするのも束の間。
｢そういえば、フェイタンさんは……？｣
｢ここからは見えないわね……｣
　ファレスターの問いに、ロビンもキョロキョロし出す。
｢でもちょっと、あの人雰囲気怖いわよね〜｣とナミが言い出した。｢あの目、只者じゃないわ｣
　と眉をひそめたのは、ただ嫌っているだけではないように思えた。
｢私、ちょっとフェイタンさんと話してきます｣
　ファレスターは席を立った。
｢彼なら船の後ろに行ったかもしれないわ｣
｢行ってみます｣
　ファレスターはロビンに言われた通り、船の後ろへ回り込むと、黒ずくめの服の男性が、水平線を眺めて立っていた。
｢あの、フェイタンさん……｣
｢話し掛けなくても分かてるね｣フェイタンがこちらに一瞥もせずに返事をした。｢お前の足音は分かりやすいね｣
｢足音うるさいですかね？｣
｢そういうことじゃないよ｣
　一切表情の変わらないフェイタンが、ちらりとこちらを見てまた水平線を眺めた。
｢あの、早く元の世界に戻りたいと思いますか？｣
　なんてことを聞いてしまったんだろう、とファレスターは思いつくままに話した自分を後悔したが、フェイタンはすぐに返事をした。
｢当たり前ね｣とフェイタンは言った。｢ここには仲間もいない。しかもこの船は賑やか過ぎよ｣
　そうだった。ルフィたちはこの異世界に仲間と一緒にやって来た訳だが、フェイタンはたった一人でここに飛ばされてきたようなものだった。
｢そうですよね……｣なんだかそれは、今の自分の境遇と重なる気がした。｢でも私、頑張りますから！　一緒に帰りましょう！｣
｢お前が救世主なんて信じられないね｣
　しかし、フェイタンは冷ややかだった。ファレスターも、自分が救世主だなんて思えなかったので困惑した。
｢私も、そう思いますけど……｣
　言いかけた時だった。
｢妙な気配がする！　お前ら、構えろ！｣
　見張り台にいるゾロの声が、イヤホンを通して船に響き渡った……。