その後、迷子だったゾロをサンジが連れて帰ったところで、麦わら海賊団の船は、名前も知らない廃れた町から出航した。
｢結局、あの町のことは何も分からなかったわね〜｣
　甲板でティータイムを楽しむナミが、向かいの席にいるファレスターとロビンにそう言った。
｢そうね。本も置いていなかったわ｣とロビンが話に続いた。｢擦り切れて読めない本すらなかったわ。まるで誰かが、全ての書物をどこかに盗んでしまったみたいね｣
｢泥棒……がいたんでしょうか？｣
　とファレスターが言うと、ナミはそうかもね、と返事をしたが、ロビンは意味深そうに眉をひそめた。
｢もしかしたら、誰かが隠そうとしているのかもしれないわね……いいえ、誰かではなく、この世界全てが｣
｢ロビン、それってどういう……｣
　ロビンの言葉にナミが言いかけて口をつぐんだ。もしそれが本当なら、恐ろしいことだからだろう。
｢あ、でも、私たちがいたところの遺跡には、見たことのない文字みたいなのが書いてありました｣
　と言ったのはファレスター。ファレスターは、記号のような文字が妙に気になっていたのである。
｢お嬢さんたち｣とそこに声を掛けてきたのはブルックだった。｢私も会話に混ざってよろしいでしょうか？｣
｢はい、もちろんです！｣
　ファレスターは即答したが、ナミはなぜか妙に警戒した様子で、ロビンは意味深にくすりと笑った。
　なんだろう？　とファレスターが思っていると、ブルックが目の前で跪いた。
｢では、ファレスターさん、パンツ見せてもらってもよろし……ふごげ？！｣
　ブルックが最後まで言い切る前に、ナミの拳が一発飛んだ。
｢わ、大丈夫、ですか……？！｣
　とファレスターは驚いて駆け寄るが、ナミとロビンは冷静だ。
｢大丈夫よ。またすぐ起きるから｣
　なんてナミは言っている。
｢それより、ブルック｣ロビンなんて、ブルックがそこで倒れたまま話を続けた。｢遺跡の文字を写して来てくれたかしら？｣
｢え？｣
｢もちろんですよ、ロビンさん！｣
　ファレスターが驚く間もなく、ブルックは起き上がり、なんと自分の頭がい骨を蓋のように開け、一枚の紙を取り出した。
　ナミの言っていた通り、すぐに起きた訳だが……。
｢これが遺跡の文字？｣
｢ええ、そうですよ｣
　ロビンがもう一度訊ね、ブルックはそう答える。
　この船では、色々なことにいちいち驚いてはいられないのかもしれない、とファレスターは、ブルックが書き写して来たという遺跡の文字が書いてある紙を覗き込んだ……。