｢なんだ、さっきの声は……？｣
　ソニックは辺りをキョロキョロとする。一方のフェイタンは、冷静なのか、もうすでに声の主を分かっているのか、身動ぎ一つしない。
<もしかして、この穴から聞こえてないか？>
　と言い出したのはフィーだった。
　ファレスターはまさかと思いながらフィーを見やった。やはりフィーは、落とし穴の先を指していた。
｢こんなに分かりやすい落とし穴に、誰か落ちたっていうのか？｣
　ソニックも疑い深げに落とし穴へと近付いた。落とし穴はなぜか、蓋もされずに開いたままだったのだ。
｢あの、気をつけて下さい、ソニックさん……｣
　とファレスターが言った矢先だった。
｢ゴムゴムのォ……！｣
　聞き覚えのある文句が、落とし穴から聞こえてきた……。
｢やっぱり誰かいそうだな……？｣
　ソニックが落とし穴へ身を乗り出した時、それは起きた。
｢ロケットォ！｣
｢ソニックさん、避けて……｣
　ファレスターは叫ぼうとしたが、ソニックはそれよりも早く後ろへ跳ね、間もなく落とし穴から飛び出してきた人物から避けた……。
｢なーはっはっはっ！　ほらな、出られただろ！｣
　その人物は勢いよく上空へ舞い上がりながらそう言った。よく見たら、腕に誰かを抱えている。
｢すごいな、ルフィ！　これでみんなを探そう！｣
　と誰かの腕にいるタヌキ……違う、チョッパーだ！
｢ルフィ！　チョッパー！｣
　たまらずファレスターは呼び掛けた。
　あんな高さから着地したというのに、草鞋（わらじ）二足でへらりとしている男性が、すぐにファレスターの声に気が付いた。
｢おお、ファレスター！　無事だったんだなァ！｣
　ルフィは気さくにファレスターの肩を叩いた。
｢はい！　ルフィとチョッパーも無事で何よりで……｣と再会を喜ぶのも束の間、ファレスターはあることに気がついた。｢あの、他の仲間は……？｣
｢それが……｣
　チョッパーは説明しようとした。だが、それよりも何より、ルフィが大声で会話を割った。
｢なんだ、おまえ達！　青いトゲトゲと黒い男！｣
　そう言うなり、ルフィは身構えて戦闘体勢だ。
｢ルフィ、少し話を聞いて……｣
　船でしばらく一緒だった仲である。ルフィと関わるナミがいつも頭を抱えていたのがファレスターの脳裏に浮かんでいた。
<その人間、ルフィっていうのか？>
　そこにフィーが話しかけてきた。ファレスターはちょっと待ってと言ったのだが……。
｢あ、人形！　おまえがファレスターを傷つけたのか！｣
　途端にルフィがフィーに敵意を向け始める。
｢ちょっとルフィ、お願いだから話を聞いて……｣
｢大丈夫だ、ファレスター！　今人形から助けてやるからな……｣
　その時だった。
｢グゥオオオオオオオオオオオオオ！｣
　上空に、咆哮のようなものが響いた……。