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法正は見事、劉備入蜀の立役者となった。
その功で尚書令に任命された。
また、ユリも大尉に任命されたが、断った。

法正「せっかくの出世を断るとはな、何故断った?」

ユリ「すみません‥このままで満足してるのもあって‥あと、大尉?どんな役職なのか分からなかったので‥」

法正「なら、お前を尚書僕射に任命する。今後も俺の補佐をしろ。良いな?」

ユリ「はい」


そして翌日


城へ向かう道中、歩くたびに噂が聞こえる。
劉璋が法正に殺されたと。
そして、兵達が益州の元役人を捕縛して歩いているのを見かける。

ユリ「‥‥」

そして、次の日もまた次の日も役人を捕らえては、法正自ら手を下す事もあった。

ユリ「法正様」

法正「何だ?」

ユリ「何も自ら手を汚さなくても‥」

法正「俺がやりたいからやってるだけだ。ほっとけ」

ユリは困った顔をしながら法正を見つめる。

法正「そんな顔をするな。鬱陶しい。」

ユリ「あと何人ですか?」

法正「そんな事を聞いてどうする?」

ユリ「私が変わりに‥」

法正「ユリ」

ユリ「何ですか?」

法正「お前は俺の真似事は絶対にするな」


ユリ「‥‥‥」

法正「いいな?」

ユリ「はい‥」

法正「分かったなら下がれ」

ユリ「あ、法正様、劉備様が許靖殿の処遇をどうしたら良いかと」

法正「ああ、俺なら生かしてはおかないがな‥」

ユリ「じゃあ、死罪に?あの方名声のある方ですよね?」

法正「それがどう‥‥なるほど名声か‥」

法正は椅子から立ち上がり、劉備の元へ謁見しに向かった。


劉備「何⁉︎許靖を⁉︎」

法正「ええ、名声だけは高い方です。その虚名を利用しない手はありません」

劉備「うむ、分かった。許靖殿を厚遇しよう」


法正が執務室に戻るとユリがまだ仕事しながら法正を待っていた。

法正「まだ居たのか?」 

ユリ「大事な物を渡し忘れてましたので‥」

法正「?」

ユリは懐から包み物を法正に差し出した。

法正は受け取り包みを開いて瞠目する。それは劉璋を暗殺した時に探していた物その物、玉璽だった。

ユリ「劉璋を攻める前日、リュオ達がコソコソしていたので、ついでにお願いしてしまいました。事後報告になってしまって申し訳ありませんでした。」

ユリは申し訳なさそうに法正に謝罪をする。

法正「リュオに?アイツはこういった類の物に手を出すヤツではないはずだ。」

ユリ「はい。最初は断られましたがお金で釣りました。」

法正「お前‥俺の想像を超える悪党だな」

法正は呆れたように言う

ユリ「法正様、これがあってもなくてもやっぱり劉璋様は‥」

法正「当然だ。今のこの蜀に内乱の火種は消しておかなければ北伐を目指す事は難しい。」

ユリ「それが目的でこの騒動を‥」

ユリは納得したように呟く

法正「玉璽の事は助かった。だが喋り過ぎたな。あまり俺に深く関わるな。」

ユリ「はい‥」

ユリは納得いかない様子で部屋を出て行った。

法正はその後ろ姿を見送るとため息を吐く。

法正「あれは納得していないな‥。俺と関わって良い事などあるはずがない‥あいつは何を考えてるんだか‥」


法正が執務室を出て帰宅する道中、飲み屋からユリの酔っ払う声がした。

法正「‥‥‥」

法正は気にしない様に通り過ぎようとするが、足を止める。

リュオ「おい、ユリ!あんま飲むなって!」

ユリ「私のお金で飲んでるんだから勝手でしょ!」

そして5分も持たない内にユリは寝てしまう。

リュオ「ああ、やっぱり‥」

リュウキ「なぁ、ユリは何で家に帰ろうとしないんだ?」

リュオ「あ?そりゃぁ、ユリに帰る家が無いからだろ?」

リュウキ「え?」

法正「ほう?興味深い話しだな。」

リュオ・リュウキ「ほっ法正様⁉︎」

法正「ユリを俺の隊に入る時にその話しは聞いてないな。」

リュオ「も、申し訳ありません!特に問題無いかと思い言ってませんでした」

法正「聞かせろ。細大漏らさずにだ。」

リュオ「ユリは雲南の農村地で倒れてたのを保護されたんだと聞きました。見慣れない服装から恐らく遠くから来た商団の護衛でもしてたんじゃないか?って噂です。かなりの腕だったんで、入団を薦めても断られましたが、保護先の両親の声でやっと」

法正「お前、明日からユリを見張ってろ」

リュオ「え?あ、はい‥」

法正はユリを担ぐ

リュオ「あの‥ユリをどうなさるんですか?」

法正「連れて帰る。」

リュオ「‥‥」

リュウキ「‥‥」

法正がユリを担いで歩く姿を珍しい物を見たよにリュオは見つめていた。

リュウキ「ユリのヤツ大丈夫だよね?」

リュウキはユリが無理して酒を飲んでいたので心配そうにしていた。

リュオ「大丈夫だ。法正様がしっかりと面倒を見て下さるはずだ。あの女でも容赦しない法正様がユリにだけは‥これはひょっとして‥」

リュオは2人を応援しなくてはという気持ちでいっぱいになっていた。


法正は自宅の別室の空き部屋のベッドにユリを寝かせて部屋を出て行った。



翌朝、ユリは酷い頭痛で目を覚ます。

ユリ「ん?此処は‥?」

見慣れない部屋に困惑していると、法正が部屋に入って来た。

法正「やっとお目覚めですか」

ユリ「え⁉︎法正様⁉︎」

法正「昨夜は飲めない酒を無理やり飲んでたらしいですね。無謀な行動を取った理由を聞かせていただけませんかね?」

ユリ「別に昨日だけじゃないし‥」

法正の眉がピクつく

法正「お前、まさか毎日あんな事を?」

ユリ「毎日、眠れないから酔えば寝れるのかなって、リュオ達に付き合って貰ってました。お酒を飲む前はずっと夜の散歩を‥」

法正「今日からこの部屋を使え」

ユリ「?でも‥此処は法正様の家‥?ですよね?遠慮します」

法正「何だと?」

ユリ「昨日、ご自分から関わるなと言ってたじゃないですか?私の事は私で何とかしますから」

ユリは軽く身支度を整えると、部屋を出て行こうとする。
しかし、すかさず法正がユリの腕を掴み止める。

ユリ「法正様?」

法正「まだ話しは終わってない。確かに昨日はそう言ったが、自分の部下が毎日何処かで飲んだくれていては困る。」

ユリは少し痛い所を突かれた。

ユリ「な、ならお酒は辞めます。別に飲みたくて飲んでた訳じゃないし‥」

法正「明日から家事全般はお前がやれ。その変わりこの部屋と生活に必要なものは俺が負担してやる。どうだ?悪い条件じゃないと思うが‥」

法正はユリが首を盾に振って貰えるよう提案するが

ユリ「どうしてそんなに私を優遇するんですか?」

法正「昨日の玉璽の件と良い、お前を近くに置いておかないと何をしでかすか‥そう思っただけだ。」

ユリ「‥‥」

法正「で、どうする?」

ユリ「‥‥分かりました。お世話になります‥」

法正は内心ホッとした気持ちになる。自分から遠ざけようとしておきながら矛盾した自分の行動に苦笑いする。







 
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