真田
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
土日シフトの私は25日の夜にバイトが入ってしまい、恋人の弦一郎くんと過ごせないことが早々に分かった。
それなので11月の時点で24日から過ごすことを決めた。
しかし24日はHRがあり、私は朝から弦一郎くんと会えない。だから彼は自由参加となっている部活へ午前中は向かうことになった。
ごめんねと謝ったときも、終わったら会えばいい、と彼は優しく微笑んでくれた。
とはいえ折角のクリスマスデートだ。学校に行くとはいえ、可愛くありたい。
いつもより1時間早く起きてメイクと髪の毛をセットする。
そして学校へと向かえばニヤニヤとした友達に声を掛けられた。
「やだ、今日の○○可愛いじゃん。もしかしてデート?」
その一言に焦ったように返せば友達は分かっているとでも言いたげに頷いた。
「例の年下彼氏くんでしょ?楽しんで来なね。うちらは1人もん同士カラオケ行くんで!」
そう言って隣にいた別の友達の肩を組む彼女に私は笑いながらもありがとう、と言った。
「あんたの彼氏が年下って聞いた時はめちゃくちゃ驚いたけどさ、順調そうで良かったよ。」
そう言うと彼女は先生が教室に入ってきたことを確認すると席へと戻る。私も自分の席へ腰をかけ、早くHRが終わることを祈りながらメモ帳を取りだした。
約1時間でHRは終わった。配布物を受け取ればその他の学生もみんな早々に教室を後にする。私もそれに倣って教室を出た。
車に乗り込んで弦一郎くんへと終わったことをメッセージで伝えればうさいぬの了解スタンプが送られてくる。
彼のいつもの返事にふっと微笑みながら私はパーキングブレーキを降ろして発進させた。
約30分で立海大附属中学校へと着いた。冬休み中のためか、学校は部活に励む生徒たちの声だけが響いていた。
弦一郎くんの所属するテニス部のいるであろうテニスコートへ向かえば、ボールの跳ねる音がする。
その音を聞きながら弦一郎くんを見つければテニスコートへ近づき、コートから出ていた幸村くんに声をかけた。
「幸村くん、ちょっといいかな。」
「…?ああ、□□さん。真田ですか?」
「うん、そう。迎えに来たんだけど…。」
「気づいてないみたいですね。呼びましょうか?」
「お願いしたいんだけど…切原くん?だっけ。今指導中じゃない?」
私がそう言えば幸村くんは弦一郎くんの方を見やる。そしてああ、と頷くと
「確かに指導中みたいですけど…でも大丈夫ですよ。いつもと同じことだと思うので。俺呼んできますから。」
にっこり笑ってそう言い、幸村くんはジャージを翻して弦一郎くんの元へと向かって行った。
それから程なくして弦一郎くんがこちらへと駆けてきた。
「すまない、赤也と話していた。」
「大丈夫だよ。お疲れ様。」
「ああ…。○○もな。」
そう言って微笑む弦一郎くんに私はありがとう、と伝え鍵を取り出す。
「行けそう?」
「ああ。だが部室に鞄があるから取りに行きたい。いいか?」
「もちろん。車で待ってるね。」
私の答えに弦一郎くんは頷くと部室へと駆けていく。そんな彼を見送って私は車へと戻る。
車に乗り込んで直ぐに弦一郎くんは鞄を持ってやってきた。少し息を乱した彼に少しドキリとしながら助手席を開ける。
「すまない、待たせたか。」
「全然。私今乗ったとこだもん。…車、まだ寒いでしょ?」
「少し暖かいがな。」
「つけてここまで来たからかな。」
そんな会話をしながら、弦一郎くんがシートベルトを締めたことを確認し、車を発進させる。
「最初にケーキ買ってこうと思うんだけど…。」
「構わん。」
「ありがとう。何か食べたいのはある?」
私がそう問うと弦一郎くんは顎に手を当て考える。
「肉、だろうか…。」
「あはは、弦一郎くんらしいね。いいよ買ってこ。……そうだ。」
私がそう言って言葉を区切ると弦一郎くんはこちらを見ていた。運転しながらでも自分が彼の視線を受けていることがわかる。
「ケーキじゃなくて、いちご大福にしよう。弦一郎くんもこれからいやってほど食べるでしょ?」
私のその言葉に、弦一郎くんは一瞬驚いた顔をしてすぐに笑った。
「いいな。確かに明日は家族でも部活でも食べるかもしれん。」
「でしょ。私も弦一郎くんと初めて過ごすクリスマスは特別なのがいいし。」
「!!そ、そうか…。」
弦一郎くんが照れた瞬間、ちょうど赤信号で車が停車したので見ることが出来た。少し嬉しそうに口角を上げ、照れる彼は最近では珍しい。
それから何分かしてスーパーへと着いた。やはりクリスマスイブだからか、ケーキはホールで置いてあったし、チキンも沢山置かれていた。そこでアルコール入りではないシャンパンとチキンを買ってすぐに店を後にする。
そうして最後に私の家の近所にある和菓子屋さんへと寄れば、クリスマスのためには印刷されたヒイラギの葉がいちご大福に付けられていた。
予定通りの買い物を終わらせて5分も経たないうちに家へと着く。
弦一郎くんが後部座席から自分の鞄と買い物袋を降ろしながら私は家の鍵を開ける。
「運んでくれてありがとう。」
「力仕事くらいしか出来んからな。」
ドアを開けながら両手に荷物を持った弦一郎くんを家に招き入れる。
弦一郎くんは荷物を1度置くと、靴を揃えて室内へ上がる。
「私食べ物運んじゃうから、弦一郎くんは手洗いうがいして来て。」
そう言った私に弦一郎くんは頷くと洗面所へと向かう。弦一郎くんが持ってくれていた買い物袋を持ち上げると、なるほど些か重かった。
本当なら夜食べるべきなのだろうけれど、お昼を逃してお腹の空いていた私たちは買ってきたチキンとシャンパンをテーブルに出し、いちご大福も並べる。
いただきます、と手を合わせてお昼を始める。食事の時は2人とも何も話さないため、静かな時間が流れる。
食事を終えて片付けをしていれば、弦一郎くんから、手伝うことはないか、と問われるが大丈夫だと伝え、彼にはソファで休んでもらう。
テレビを付ければ彼はリモコンを手にして私に声をかけてくる。
「何か見たいものはあるか?」
「特にないかな…。好きなの見てていいよ。」
そう言えば弦一郎くんはテレビに向き直り、チャンネルを変える。その様子を見ながら私はグラスやお皿を片付ける。
それからしばらくして。片付けが終わり弦一郎くんの隣に座る。彼の肩に頭を預け、テレビを流し見する。
彼はテレビの特集に集中しているようで、私の視線は気にしていなかった。
暖かい彼の温もりにウトウトしてしまい、気づけば意識を手放していた。
ハッと目を開けて自分が眠っていたことに気づく。
辺りを見回すと弦一郎くんが見当たらず驚いて立ち上がる。
「目を覚ましたか。」
弦一郎くんの声がしてそちらを見ると、ラフな格好をした彼が立っていた。
「ごめんね、私、寝ちゃった…。」
「気にするな。疲れてたんだろう。」
「でも、折角のイブなのに…。」
そう言う私の隣に腰掛けると、彼は私の頭に手を優しく置きゆっくりと撫でる。
「今日は俺のために早起きしたのだろう?学校の時は寝たいから化粧をしないと言っていたからな。」
「覚えてたの…。」
普段早起きする彼にそんなことを言われるととても嬉しくて涙が目に浮かぶ。
涙を流す私に弦一郎くんは困ったように私の顔を覗く。
「お前に泣かれるとどうすればいいかわからん。」
「うん、ごめんね。…ありがとう。」
それでもなお優しく撫でてくれる弦一郎くんに私は微笑む。
「…って!あれ、今何時?」
「8時だな。」
「ああ…もうそんな時間なの…。どうしよう…。」
「夕飯か?」
そう問いかける弦一郎くんに頷きながら近くにあった上着を羽織る。
「何食べたい?買い行く?」
「うむ…。いや、あるものでいい。今から出るのも大変だろう。」
「え、でも…パスタとかしかないよ。」
そう言う私に弦一郎くんは構わん、と言うとキッチンへと向かう。
「パスタくらいなら俺でも作れる。○○に習ったからな。」
そう言って弦一郎くんは引き出しから麺を取り出す。そして買い置きしているパスタソースを見つけると私に声をかけた。
「ソースは何がいいんだ?」
「どうしよう…あ、ミートソースがいい。」
私の答えに弦一郎くんは短く返事をすると鍋に水を入れ火にかける。待つ時間弦一郎くんはコンロを見ていた。多分沸騰するのを待っているんだと思う。
「ねえ私どうしたらいい?」
「座っていろ。直にできる。」
「まあそうだろうけど…。弦一郎くんにやらせるのは申し訳ない…。」
私がそう言うと弦一郎くんはふっと笑う。
「それを言うならいつもの俺はどうするんだ。うかに作らせているだろう。」
「え、だってそれは、私がやりたくてやってるんだし…。」
「そうだ。俺も好きでやっている。だから気にするな。」
そう言うと私から視線を外し弦一郎くんは再びコンロに目をやる。
付き合った時はあんなに照れ屋だったのに、今じゃこんなにも男前だ。慣れが彼をこうしたのだろうか。
照れる羽目になった私はソファに座り、ブランケットに隠すように顔を埋めた。
それから程なくしてパスタは出来上がり、遅い夕飯を済ませた。
弦一郎くんは食後すぐにはお風呂に入らない。私がやめた方がいいと諭したのだ。それなので、夕飯後の30分間、また私たちはソファに並んでテレビを見る。
夜の情報番組を見れば世間を騒がすウイルスのニュースが絶え間なく流れるし、バラエティは専らクリスマスものばかりだ。
「今この時間なんてどうせみんなカップルで過ごしてるよね。」
「?そうだな。」
「あーあ。ホントならデート、どっか行けたのに。ごめん。」
そう謝る私に弦一郎くんは肩を抱き寄せた。
「お前は本当に謝ってばかりだな。俺がそんなことを気にするように見えるか。」
「…見えないけど…。」
「お前は将来のために来年から更に頑張るのだろう。そのための我慢ならいくらでも付き合おう。…家で過ごすのも悪くない。2人きりだからな。」
そう言うと弦一郎くんは私の頭を優しく撫でた。大きな掌はとても暖かい。
「ん。ありがとう。私頑張る。」
「ああ。…あと、弱音は溜めるなよ。お前はすぐに溜め込むからな。」
「うっ…。それは…ごめん…。」
「○○には頼られたい。重荷などとは思わん。」
弦一郎くんの言葉に瞳が潤む。
この年下の彼氏はどうしてこんなにも欲しい言葉をくれて、男前なんだ。
私には勿体ないくらいの彼に、釣り合わない自分が嫌になることがある。
だけど彼はそんな時にもすぐに気づいて支えてくれる。
今だってそうだ。
涙を零しそうな私に気づいて彼は私に向き合い、抱きしめる。私が泣きそうな時、泣いた時、弦一郎くんはこうやって抱きしめてくれる。
理由はただ1つ。私が弦一郎くんの前で初めて弱音を吐いた時、抱きしめられて凄く安心した、嬉しかったと伝えたからだ。
そうして弦一郎くんは私が泣き止むまでそのままでいてくれる。
暖かい体も、しっかりと私を抱きしめるその腕も、全てが私を安心させてくれて彼からの愛を感じることが出来る。
「ねえ弦一郎くん。」
「どうした。もう平気なのか。」
「うん、でも違うの。あのね……また来年もこうやって弦一郎くんとクリスマス過ごしたいな。」
私の言葉に目を丸くすると弦一郎くんはふっと微笑んだ。
「来年だけで満足か?俺はその先も共にありたいがな。」
そう言った彼に私の頬は熱を持つ。見られたくなくて彼の胸に顔を埋めたけど、ゆるゆると解かれた彼の腕に私の真っ赤な顔を見られてしまうのはそう遅くない。
それなので11月の時点で24日から過ごすことを決めた。
しかし24日はHRがあり、私は朝から弦一郎くんと会えない。だから彼は自由参加となっている部活へ午前中は向かうことになった。
ごめんねと謝ったときも、終わったら会えばいい、と彼は優しく微笑んでくれた。
とはいえ折角のクリスマスデートだ。学校に行くとはいえ、可愛くありたい。
いつもより1時間早く起きてメイクと髪の毛をセットする。
そして学校へと向かえばニヤニヤとした友達に声を掛けられた。
「やだ、今日の○○可愛いじゃん。もしかしてデート?」
その一言に焦ったように返せば友達は分かっているとでも言いたげに頷いた。
「例の年下彼氏くんでしょ?楽しんで来なね。うちらは1人もん同士カラオケ行くんで!」
そう言って隣にいた別の友達の肩を組む彼女に私は笑いながらもありがとう、と言った。
「あんたの彼氏が年下って聞いた時はめちゃくちゃ驚いたけどさ、順調そうで良かったよ。」
そう言うと彼女は先生が教室に入ってきたことを確認すると席へと戻る。私も自分の席へ腰をかけ、早くHRが終わることを祈りながらメモ帳を取りだした。
約1時間でHRは終わった。配布物を受け取ればその他の学生もみんな早々に教室を後にする。私もそれに倣って教室を出た。
車に乗り込んで弦一郎くんへと終わったことをメッセージで伝えればうさいぬの了解スタンプが送られてくる。
彼のいつもの返事にふっと微笑みながら私はパーキングブレーキを降ろして発進させた。
約30分で立海大附属中学校へと着いた。冬休み中のためか、学校は部活に励む生徒たちの声だけが響いていた。
弦一郎くんの所属するテニス部のいるであろうテニスコートへ向かえば、ボールの跳ねる音がする。
その音を聞きながら弦一郎くんを見つければテニスコートへ近づき、コートから出ていた幸村くんに声をかけた。
「幸村くん、ちょっといいかな。」
「…?ああ、□□さん。真田ですか?」
「うん、そう。迎えに来たんだけど…。」
「気づいてないみたいですね。呼びましょうか?」
「お願いしたいんだけど…切原くん?だっけ。今指導中じゃない?」
私がそう言えば幸村くんは弦一郎くんの方を見やる。そしてああ、と頷くと
「確かに指導中みたいですけど…でも大丈夫ですよ。いつもと同じことだと思うので。俺呼んできますから。」
にっこり笑ってそう言い、幸村くんはジャージを翻して弦一郎くんの元へと向かって行った。
それから程なくして弦一郎くんがこちらへと駆けてきた。
「すまない、赤也と話していた。」
「大丈夫だよ。お疲れ様。」
「ああ…。○○もな。」
そう言って微笑む弦一郎くんに私はありがとう、と伝え鍵を取り出す。
「行けそう?」
「ああ。だが部室に鞄があるから取りに行きたい。いいか?」
「もちろん。車で待ってるね。」
私の答えに弦一郎くんは頷くと部室へと駆けていく。そんな彼を見送って私は車へと戻る。
車に乗り込んで直ぐに弦一郎くんは鞄を持ってやってきた。少し息を乱した彼に少しドキリとしながら助手席を開ける。
「すまない、待たせたか。」
「全然。私今乗ったとこだもん。…車、まだ寒いでしょ?」
「少し暖かいがな。」
「つけてここまで来たからかな。」
そんな会話をしながら、弦一郎くんがシートベルトを締めたことを確認し、車を発進させる。
「最初にケーキ買ってこうと思うんだけど…。」
「構わん。」
「ありがとう。何か食べたいのはある?」
私がそう問うと弦一郎くんは顎に手を当て考える。
「肉、だろうか…。」
「あはは、弦一郎くんらしいね。いいよ買ってこ。……そうだ。」
私がそう言って言葉を区切ると弦一郎くんはこちらを見ていた。運転しながらでも自分が彼の視線を受けていることがわかる。
「ケーキじゃなくて、いちご大福にしよう。弦一郎くんもこれからいやってほど食べるでしょ?」
私のその言葉に、弦一郎くんは一瞬驚いた顔をしてすぐに笑った。
「いいな。確かに明日は家族でも部活でも食べるかもしれん。」
「でしょ。私も弦一郎くんと初めて過ごすクリスマスは特別なのがいいし。」
「!!そ、そうか…。」
弦一郎くんが照れた瞬間、ちょうど赤信号で車が停車したので見ることが出来た。少し嬉しそうに口角を上げ、照れる彼は最近では珍しい。
それから何分かしてスーパーへと着いた。やはりクリスマスイブだからか、ケーキはホールで置いてあったし、チキンも沢山置かれていた。そこでアルコール入りではないシャンパンとチキンを買ってすぐに店を後にする。
そうして最後に私の家の近所にある和菓子屋さんへと寄れば、クリスマスのためには印刷されたヒイラギの葉がいちご大福に付けられていた。
予定通りの買い物を終わらせて5分も経たないうちに家へと着く。
弦一郎くんが後部座席から自分の鞄と買い物袋を降ろしながら私は家の鍵を開ける。
「運んでくれてありがとう。」
「力仕事くらいしか出来んからな。」
ドアを開けながら両手に荷物を持った弦一郎くんを家に招き入れる。
弦一郎くんは荷物を1度置くと、靴を揃えて室内へ上がる。
「私食べ物運んじゃうから、弦一郎くんは手洗いうがいして来て。」
そう言った私に弦一郎くんは頷くと洗面所へと向かう。弦一郎くんが持ってくれていた買い物袋を持ち上げると、なるほど些か重かった。
本当なら夜食べるべきなのだろうけれど、お昼を逃してお腹の空いていた私たちは買ってきたチキンとシャンパンをテーブルに出し、いちご大福も並べる。
いただきます、と手を合わせてお昼を始める。食事の時は2人とも何も話さないため、静かな時間が流れる。
食事を終えて片付けをしていれば、弦一郎くんから、手伝うことはないか、と問われるが大丈夫だと伝え、彼にはソファで休んでもらう。
テレビを付ければ彼はリモコンを手にして私に声をかけてくる。
「何か見たいものはあるか?」
「特にないかな…。好きなの見てていいよ。」
そう言えば弦一郎くんはテレビに向き直り、チャンネルを変える。その様子を見ながら私はグラスやお皿を片付ける。
それからしばらくして。片付けが終わり弦一郎くんの隣に座る。彼の肩に頭を預け、テレビを流し見する。
彼はテレビの特集に集中しているようで、私の視線は気にしていなかった。
暖かい彼の温もりにウトウトしてしまい、気づけば意識を手放していた。
ハッと目を開けて自分が眠っていたことに気づく。
辺りを見回すと弦一郎くんが見当たらず驚いて立ち上がる。
「目を覚ましたか。」
弦一郎くんの声がしてそちらを見ると、ラフな格好をした彼が立っていた。
「ごめんね、私、寝ちゃった…。」
「気にするな。疲れてたんだろう。」
「でも、折角のイブなのに…。」
そう言う私の隣に腰掛けると、彼は私の頭に手を優しく置きゆっくりと撫でる。
「今日は俺のために早起きしたのだろう?学校の時は寝たいから化粧をしないと言っていたからな。」
「覚えてたの…。」
普段早起きする彼にそんなことを言われるととても嬉しくて涙が目に浮かぶ。
涙を流す私に弦一郎くんは困ったように私の顔を覗く。
「お前に泣かれるとどうすればいいかわからん。」
「うん、ごめんね。…ありがとう。」
それでもなお優しく撫でてくれる弦一郎くんに私は微笑む。
「…って!あれ、今何時?」
「8時だな。」
「ああ…もうそんな時間なの…。どうしよう…。」
「夕飯か?」
そう問いかける弦一郎くんに頷きながら近くにあった上着を羽織る。
「何食べたい?買い行く?」
「うむ…。いや、あるものでいい。今から出るのも大変だろう。」
「え、でも…パスタとかしかないよ。」
そう言う私に弦一郎くんは構わん、と言うとキッチンへと向かう。
「パスタくらいなら俺でも作れる。○○に習ったからな。」
そう言って弦一郎くんは引き出しから麺を取り出す。そして買い置きしているパスタソースを見つけると私に声をかけた。
「ソースは何がいいんだ?」
「どうしよう…あ、ミートソースがいい。」
私の答えに弦一郎くんは短く返事をすると鍋に水を入れ火にかける。待つ時間弦一郎くんはコンロを見ていた。多分沸騰するのを待っているんだと思う。
「ねえ私どうしたらいい?」
「座っていろ。直にできる。」
「まあそうだろうけど…。弦一郎くんにやらせるのは申し訳ない…。」
私がそう言うと弦一郎くんはふっと笑う。
「それを言うならいつもの俺はどうするんだ。うかに作らせているだろう。」
「え、だってそれは、私がやりたくてやってるんだし…。」
「そうだ。俺も好きでやっている。だから気にするな。」
そう言うと私から視線を外し弦一郎くんは再びコンロに目をやる。
付き合った時はあんなに照れ屋だったのに、今じゃこんなにも男前だ。慣れが彼をこうしたのだろうか。
照れる羽目になった私はソファに座り、ブランケットに隠すように顔を埋めた。
それから程なくしてパスタは出来上がり、遅い夕飯を済ませた。
弦一郎くんは食後すぐにはお風呂に入らない。私がやめた方がいいと諭したのだ。それなので、夕飯後の30分間、また私たちはソファに並んでテレビを見る。
夜の情報番組を見れば世間を騒がすウイルスのニュースが絶え間なく流れるし、バラエティは専らクリスマスものばかりだ。
「今この時間なんてどうせみんなカップルで過ごしてるよね。」
「?そうだな。」
「あーあ。ホントならデート、どっか行けたのに。ごめん。」
そう謝る私に弦一郎くんは肩を抱き寄せた。
「お前は本当に謝ってばかりだな。俺がそんなことを気にするように見えるか。」
「…見えないけど…。」
「お前は将来のために来年から更に頑張るのだろう。そのための我慢ならいくらでも付き合おう。…家で過ごすのも悪くない。2人きりだからな。」
そう言うと弦一郎くんは私の頭を優しく撫でた。大きな掌はとても暖かい。
「ん。ありがとう。私頑張る。」
「ああ。…あと、弱音は溜めるなよ。お前はすぐに溜め込むからな。」
「うっ…。それは…ごめん…。」
「○○には頼られたい。重荷などとは思わん。」
弦一郎くんの言葉に瞳が潤む。
この年下の彼氏はどうしてこんなにも欲しい言葉をくれて、男前なんだ。
私には勿体ないくらいの彼に、釣り合わない自分が嫌になることがある。
だけど彼はそんな時にもすぐに気づいて支えてくれる。
今だってそうだ。
涙を零しそうな私に気づいて彼は私に向き合い、抱きしめる。私が泣きそうな時、泣いた時、弦一郎くんはこうやって抱きしめてくれる。
理由はただ1つ。私が弦一郎くんの前で初めて弱音を吐いた時、抱きしめられて凄く安心した、嬉しかったと伝えたからだ。
そうして弦一郎くんは私が泣き止むまでそのままでいてくれる。
暖かい体も、しっかりと私を抱きしめるその腕も、全てが私を安心させてくれて彼からの愛を感じることが出来る。
「ねえ弦一郎くん。」
「どうした。もう平気なのか。」
「うん、でも違うの。あのね……また来年もこうやって弦一郎くんとクリスマス過ごしたいな。」
私の言葉に目を丸くすると弦一郎くんはふっと微笑んだ。
「来年だけで満足か?俺はその先も共にありたいがな。」
そう言った彼に私の頬は熱を持つ。見られたくなくて彼の胸に顔を埋めたけど、ゆるゆると解かれた彼の腕に私の真っ赤な顔を見られてしまうのはそう遅くない。