ててご夢、龍如夢共通。
20220214大作戦ネタ
おなまえ
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「…………うーん。」
特別な日だから、特別に特別を選んだのに。
ハートの箱にリボンを飾りとても満足いくラッピングに仕上がった
のに。
肝心の中身がチョコらしき謎のねばねば。
作り直しでも作り直しただけねばねばしていた。
「あーー、権兵衛。そ、それはもしかして……チョコだよな?……な?」
いつの間にかウィリアムとガンジが後ろにいた。
「……いや、違うかもしれない……でも明日はバレンタインデーだからチョコなのかもしれないが。」
「失礼ね!立派な権兵衛印の特別なチョコレートですよーだ!」
「何を混ぜたら……。いやいやそんな心配に来たんじゃねーよ。皆気になってるから教えてくれねーか?
そのチョコ誰にあげるんだ?」
「はあー。あんた達にあげるわけないでしょ。これは特別なチョコレートなんだよ?」
権兵衛は頬を膨らませながら、プイッとそっぽを向いてしまった。
「ウィリアムと同じく皆本当に気になっているし、なんと言うか、渡す時に協力したいと思っている。」
ガンジの背中には冷や汗が走っていた。
料理オンチの権兵衛がチョコを作っていると会議があり、この館内ほ騒然としていた。
誰にあげるのか……いや、被害者は出来るだけ最小限で押さえたい。そこで、権兵衛から誰にあげるのかを聞き出すこと。そして、義理チョコなどと作ろうものならなんとか本命一筋に仕向けること。この二つの任務をハズレくじを引いた俺たちが担っている。
「そうなの?……うーん、じゃあさ例えばゲームにわざと負けるとか出来る?」
「勿論。権兵衛の恋のためならやるぜ?」
ウィリアムはガッツポーズを見せた。
「……じゃあ応援してよね。……ペルシーにあげるの。」
「……ペルシー?……ペルシーって、アンデッドだよな……?ええ!?」
「それなら理解出来た。アンデッド用にゾンビのような得体の知れないチョコのような物を作ったんだな。」
「あんた達!出て行きなさいよっっバカー!!」
特別なチョコレートを馬鹿にしてきた馬鹿2人には失敗作のドロドロを口にぶち込んであげた。
後で聞いたけど、熱を出して倒れたとかなんとか。
私しーらない。
聞いた事ない控えめなノック音にドアまで向かうとベインがそこに居た。
「ペルシー……話がある。」
「……入るか?」
「い゛……いやここでいい。」
何処かうわの空というか、何か困った事があったのか……いや、そもそもベインは困ったらレオやジョーカー辺りに相談するだろうし……ああ、バルクも居たか。
「それにしても珍しいな。……何の用だ?」
「サバイバーを部屋に連れて来てもいいか?…………っっぐぅ。」
真顔で何を言っているのか不思議に思っていたらベインは小さな悲鳴をあげて膝をついていた。
「もう、話下手あああ!もっとロマンチックにって頼んだのに!!」
ベインの背中からサバイバーの権兵衛が出てきた。
…………ああ。コイツか。とため息をついた。
「サバイバーとは関わりを持つつもりはない。……部屋には来ないでもらおう。」
「ええ……やだあ。やだやだやだやだやだっ。ベインからも何とかしてよ!チョコあげるから。」
「っっそれだけは勘弁してくれ。……ペルシー、俺を助けるとと思って……頼む。
権兵衛は絶対に悪いことはしない。それだけは約束出来るだろ?権兵衛。」
「……ベインに免じて今日だけ許可するが……。ベイン……サバイバーに脅されるとはな。」
「…………森の……動物達に、ご馳走を作ってくる……なんて言われたら…………。俺には無理だ……。すまない、ペルシー。」
一回り小さくなったようなベインはそのままトボトボ行ってしまった。
「……あのぅ……ご、御迷惑なのは承知の上で……ごめんなさい。
頑張って作りましたっ、受け取って下さい。」
とても良いチェイスするのに、後半になると、攻撃を振るタイミングで板乗越えや窓枠乗り越えをして、ダウンしてからは1度も立ち上がらずに俺を見つめ続けて死んでいく。
俺が遠のくと這いずりで付いてくる謎のガキ。
話しかけた事も話しかけられた事もないのだが。
「……ふん。『完全な体』を持つ俺にチョコレート?愚かだな。」
「…………。」
「エネルギーの足しにもならないな。」
ただ受け取ってやればよかったのだが、気がないガキに無駄な期待を植え付けては可哀想だし、喚いて憎めばいい……と思っていたのだが、権兵衛はプルプル肩を震わせながら俯いていた。
「帰れ。」
「…………っごめんなさい。御迷惑をお掛けしました。」
そのまま権兵衛はくるり踵を返し、驚いてしまった俺はつい権兵衛の肩を掴んでいた。
「……なんで俺が……待て。」
「……うぐっ、ひぐっ、いいんです。皆から私の料理は嫌われていてっ、リッパーと対でサバイバーの死神って陰で言われてるしっ、受け取って貰えない事も分かっ……ましたけど、悲しくなって、ごめんなさい。涙が、止まらくて、ご、めんなさ」
サバイバーなら自分の幸せの為に傲慢に振る舞ってくれないと調子が狂う。
「……チョコは置いて帰れ。……捨てない事を約束しよう。」
「……え?……う、れしい。……良かった。……味には自信ないけど……でも渡せて良かった……。」
「物好きだな……。」
権兵衛は大慌てで目元を袖口で擦り、ニコリと笑ってハート形の箱を渡してきた。
「……ペルシーさんは私の特別ですから。」
「…………っ」
涙で濡れた湿った睫毛が輝いて見えて、擦った瞼はほんのりと紅くそまっていて、幸せそうに笑う権兵衛の笑顔にドクリと心臓が動いたような気がした。
「……お返しは必ず渡す。」
「や、約束ですからね。楽しみにしてますから。
……それでは私はこれでっっ。」
信じられないスピードで部屋を出て行った権兵衛の後ろ姿を見送った。
「ふ……。相当チェイスでは手を抜いてるな…これは。」
ハートの箱は誰にも見つからないようにそっと引き出しに片付けた。
……少しだけ心臓が五月蝿い気がする。
彼がようやく箱を開け、直ぐに引き出しに片付けたお話は権兵衛の耳に入ることは無さそうだ。
(終)