ててご夢、龍如夢共通。
シン長編
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
重々しい鉄の扉が開くと、ごちゃごちゃした部屋の中央にあったソファーにリッパーは私を降ろし、そのまま隣に腰をかけた。
「……ここが、バルク様のお部屋ですか。」
「フフ、そうですね。暫くはここを拠点に過ごして貰いましょうか。バルクかボンボンが居れば殺される確率は減るでしょうから。」
「……どうして、私が殺されるんですか……。もしかしてですけど私と同じ名前の使用人が居たから……です?」
肩をグイッと強い力で掴まれた。
「……どこでその情報を知りました?」
「バ、バルク様です。ボンボン様がエラーを出した時に、私とその前の使用人さんの権兵衛さんとは違うと……。そこからもしかして使用人さんと同じ名前だから私は嫌われてしまうのでは……と考えたからです。」
「そうでしたか。」
リッパーは一言だけそう呟くとを掴んでいた肩を解放し、そのまま鼻歌を歌い始めたので、今になって応答を失敗していたら……と冷静に考えてしまい背筋を凍りつかせていた。
「……」
「権兵衛、モテナス!」
いいタイミングでボンボンは目の前にお水の入ったコップを差し出してくれ、私はコップをすぐさま手に取り口付けた。
「バルク、イナイ。マツ。」
「バルク様が居ないのですか?ボンボン様。」
「ボンボンサマ、チガウ。ボンボン。」
「ボンボン様……ですが、ボンボンと使用人がお呼びするのは……その。」
「ボンボン、ヨブ。ボンボン、ウレシイ。」
果たして使用人がロボット本人(人なのだろうか)が許可を出し、ボンボンと呼んだ事で私はまた死を迎える可能性もある……。でも、逆にボンボン様と呼び怒りを買ってしまったら…………。でも所有者はバルク…………。
「それじゃあ私の事はジャックさんとでも呼んでもらいましょうか。リッパーとは私の事ですが、私の事でも無いです。嗚呼、ジャックと言う名前もそう該当してしまうと言えばそうなんですけれども。」
「……え……あ、ちょっと私には難しいお話過ぎて……、でも流石に使用人が様を付けないのは忍びないのでジャック様と呼ばせて下さい。」
「フフ、使用人が私に意見ですか?」
「そ、そういう訳ではありませんが、他の方が驚かれるのではありませんか?」
「その点は大丈夫ですよ。他の方達は自分以外に関心がありませんから。」
「……え?……あ……わ、わかりました。ジャックさんと呼ばせて頂きます。」
「ボンボン!ボンボン!」
「ボンボンと呼んであげて下さい?因みに彼をきちんと呼ぶならバルクの付けたガードNo.26様と呼ばないといけませんからね。」
「ボンボン!ボンボン!」
ガシャンガシャンと上下に動き抗議を始めてしまったので、何かあればボンボンに守って貰おう……いや、やり直せばいいと諦めて「ではボンボンとお呼びします」と言うとウレシイと喜ばれた。
…………ボンボンは機械仕掛けなのに心が宿っているかもしれないという仮定は覚えておこうと思った。
結論を言うと殺されなかったが、もしこの先また死んでやり直した時に、素知らぬ顔が出来るのだろうか……。
バルクはリッパーと呼んでいた所から、使用人はリッパー様と呼ばないと不審がられる……。
頭に入れておかなければならない。
「……バルク様、遅いですね。…………ん?」
と部屋の扉を見つめていたら、目の前が急に白く霞み始め、目を擦った。
「権兵衛?」
「大丈夫ですよ、ボンボン。権兵衛は少し眠たくなったみたいだけで……、…………、…………。」
あれ……、聞こえな……。
「………?おやすみなさい、権兵衛。」
「……………………っっ。」
「おや、目が覚めましたか?」
「…………。」
目が覚めると、リッパーの膝の上に頭を乗せた状態だった。
「ひゃああああああっっ。」
「寝ぼけてます?……先程の事覚えていますか?私とボンボンの……。」
「…………。」
あの朝では無く、時が進んだのか。
あの異様な睡魔に襲われた後……?
私はボロボロ涙が零れた。あの永遠のループを乗り越えたのだ。
「……怖い、夢を見てしまっていて……泣いているだけです。」
「それはそれは……可哀想ですね。」
頭やおでこを優しく撫でてくれ、私はゆっくりと目を閉じた。
「……ジャックさん、ありがとうございます。」
「いえいえ、どんな夢に苦しんで居たのですか?」
「……ずっと、同じ所に居るような……、地獄のような夢でした。」
「そうでしたか。……ゆっくり休んでください。そろそろバルク達が戻って来ると思いますので、私は失礼しますね。」
そう言うと私の頭をソファーに移し、リッパーは部屋を出て行った。ボンボンの姿を探したけれども見当たらず、そのままソファーに座り直して待っていると、ドアが静かに開いた。
「……君が権兵衛か?」
「……はい、そうですっ。使用人の権兵衛です。バルク様が私をこちらに連れて来られまして、」
慌ててソファーから立ち上がり、声の主の方へ頭を下げた。
部屋にバルクと背の高い銀髪で長い杖を持った男性が部屋に入って来た。
「私の名はロレンツ、覚えておきたまえ。」
ソファーを指さされたので私は頭を下げて座った。
「あのぅ。」
「これまであった事を話したまえ。」
「……えっと、いつも通り屋根裏部屋をお掃除していたのですが、バルク様に鉄くずを持って来いと申し付けられ、重たいので持てないと申し上げた所ボンボン様に手伝ってもらい、道中でリッパー様に抱き抱えて頂き、こちらのお部屋に参りました。」
「して、その次は?」
「……へ?つ、次は、えっと、ジャックさんとボンボンと呼ぶ様に申し付けられて、眠ってしまっていた……という所でしょうか。」
「ふふふ、はははははははは。私は間違っていなかった……そうだろう、バルクよ。」
「…………。」
バルクは機嫌が悪そうな顔でそのままパイプを咥えていた。
ロレンツが急に立ち上がり私の手首を掴み強い力で引っ張った。
「痛っっ、ロレンツ様?私何かしましたでしょうかっ」
心臓が痛い。嫌な予感がする。
戻りたくない。
戻りたくない。
あの地獄に。
「ははははははははははは。」
壁に強く打ち付けられ、身体を焼かれるような電撃に白目を剥き痙攣した。
「…………あ゛…………あ゛……。」
「サバイバーの様に耐久力は無いようだな……、………………、………………、おぼえ…………。」
そのまま私はフワッと苦痛が身体から抜けた。