ててご夢、龍如夢共通。
旧長編
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「何かされたらすぐにこれに引っこ抜いて投げるんですよ?」
ズボンのポケットにウネウネした黒いものを謝必安さんに突っ込まれた。…………持たされたポシェットの中にも黒いウネウネが入っているんですけど。いや、その前に今日はズボン着用命令されてるんですけど、毎日してもらっても良いですか。それは……諦めよう。
「あの……謝必安さん、これ生きてます?」
「この日のためにバルクに無理を言って調整してもらって2時間消えませんので安心して下さい。
くれぐれも何かあったら引っこ抜いてなげるのですよ?………嗚呼、どうして権兵衛があの忌々しい……」
どうやらそれどころでは無い様子で、謝必安さんに私の声は聞こえていないみたい。
「ハンカチとティッシュはもったか?おやつは食べ過ぎたらお腹を壊すからな?」
「もー!!レオさん、子ども扱い過ぎです!なんの心配してるんですか!!」
「……何もないと思うが……持っていくか?」
ベインさんが鎖の長いチェーンをポケットに押し込もうとしたので、丁寧にお断りした。
そう……一周年なので、一日ハンターもサバイバーもゲームはお休みするとのこと……なんだけど、
サバイバーの方が信じていないらしく、私が伝えて来る事になった。
ハンターサイドが出向いても信用してもらえないのではないか?という事で、私に役が回ってきたのである。
「何かあったらすぐに助けを呼びます。あと、私の記憶の事も聞いてきます。長居はせず、ちゃんと帰ってきます。皆さんの事が大好きですからね。」
そこまで言うと、心配症のメンバーは少しだけ安心したのか、フーと息を吐いていた。
「まー、何かあったら面白い事になりそうだけどなあー。」
「ジョーカー、冗談が過ぎる。あのサバイバー達の事だ……権兵衛に危害を加える可能性だって十分に有り得る話だろう?」
「権兵衛危ないのか?なあ?危ないのか?」
「権兵衛ちゃん、やっぱり行かないで。」
ヘラヘラ笑うジョーカーさんに、眉間に皺を寄せるジョゼフさんの横で、
ロビー君とヴィオがわちゃわちゃ慌て始めていた。ポンポンと方を叩かれ振り向くと美智子さんが居た。
「権兵衛ちゃん?これを持っていって頂戴。」
何やら風呂敷に包まれた大きなお重箱を渡された。
「昨日一緒に拵えたお団子が入ってるわ。皆で食べてきてね。」
「今日の為にお団子作ってたんですか!?それでつまみ食いしたら私怒られたんですね。」
「うふふ、お腹が膨れれば襲われにくいかしらと思って。」
ただ、すごく重いので両手でしっかりと持っていると、肩をヌルリと撫でられた。
「権兵衛、時間であるぞ?」
「はい!皆さん行ってきます。」
ヌルリと風呂敷をかっさらわれ、持つと言ったのだが、
ハスターさんはそのまま真っ直ぐ玄関の外に向かってたので、慌てて走ってついて行った。
「ハスター様!お待ちしておりました。」
フードを被った男が門の前で恭しく跪いていた。
「権兵衛、アレについて行けばよい……アレは信用してもよい。帰りはジャックが迎えに来る手筈だ。」
スッと重い風呂敷を渡された。
「ありがとうございました、ハスターさん。」
「よい。頼んだぞ?」
「はい!行ってきます。」
両手が塞がっているため、ペコペコ頭を下げ、出迎えてくれていた男の人の方へ走った。
「持ちますよ。」
「いえいえいえ、重たいから私が持ちます。」
風呂敷の取り合いになったので、半分ずつ持つことで折り合いを付けた。
「僕はイライ・クラーク。君は……いや、名前は覚えて居ないんだよね?」
「私は権兵衛って、名前付けてもらったんです。もしかして、私の事知ってます?」
そう言うと、イライさんは小さく頷いていた。
「あの弁護士から聞いたよ。……先に言っておくが、この館の中には君の事を知ってる人は誰も居なかったよ。力になれなくてすまない。」
「そうなんですか……でもいいんです。それはついでの用事なんで。」
目は見えているのだろうか?と最初はびっくりしていたが、ホッとした表情になっていた。
「権兵衛はハスター様と良く話すのか?何を召し上がっていらっしゃるのか?ハスター様は、」
「ようこそ……ねえ、イライは困らせないで。」
「ハスター様と並んで歩いていたんだ。この権兵衛という女の子があのハスター様と!!にこやかに談笑しながらっっ。」
「何ですってっ、ハスター様……って、イライ、貴方ハスター様が来るの知っていて黙っていたのね?」
ギギギギギと音が聞こえるほど、怒っているように見える。
「フィオナ?綺麗なお顔が台無しだよ?権兵衛ちゃんって言うんだね?とても可愛いね。俺はカヴィン。広間まで案内しよう。」
手を取られ慌てて着いていくと、二人も罵り睨み合いながら風呂敷を持ってついてきていた。
「いらっしゃいなのー。」
ドアが開いたら、パーンと陽気な音が鳴り響き、クラッカーの紙吹雪が目の前をいっぱいにした。
「はうっ、びびびっくりしましたっ。」
「君があのハンターでもなく、サバイバーでもない噂のお嬢さんだよね。まあ、座って。名前は?」
変わった帽子を被った男の人に席までエスコートされた。
「あ、ありがとうございます。権兵衛です。」
「僕はノートン、よろしくね権兵衛。」
「お、おい。ず、ず、ずるいぞ!俺はクリーチャー・ピアソンだ。」
何がずるいのかわからないが、見たことのある顔を見つけた。
「ライリーさん、お久しぶりです。」
「君か。……ハンターの館にいて、よく生き延びているもんだな……。スパイじゃないだろうな?」
すると綺麗な女の人達が前に出てきた。
「権兵衛ちゃんは、辛い目にあっているかも知れないから、楽しい一時にしてあげたいの分かってるかしら?」
「本当に嫌な男だわ。」
「権兵衛ちゃん可哀想なのー!ライリーさんダメなのー!」
肩をつつかれた方に顔を向けると、可愛いつなぎ姿の女の子がいた。
「僕はトレイシー。右からヴィラ、パトリシア、エマだよ。…………バルクは元気?」
「え……?とっても元気でよく発明品を盗み見に行くんだけど怒られてるよ。」
「そうなんだ……気難しいのにありがとう。これからもよろしくね。」
トレイシーと微笑み合っていると、まわりは何やらあまりいい空気ではない模様なので、声を振り絞った。
「皆さん、あの、私ライリーさんの言う通りだと思います。……用が済んだらすぐ帰りますから。」
皆、ふと思い出した様に静かになった。
そもそも権兵衛が来た理由の一つだ。
一枚のメモ紙を広げた。
「荘園の主から一日ゲームはお休みする事は間違いありません。ハンターサイドもお休みすることを約束します。
一応、ハンターが来ると信頼性に欠けるので、ハンターでない私が来ました。
危害や情報を持ち帰るつもりはありません。2時にはこの館を必ず出ま……す?」
時計を確認すると2時まで、あと30分しかない。
「2時までなのか?権兵衛。折角来たのになあー。色々話せたらと思ってたんだがなー。」
「ジャッ……リッパーさんが迎えにきてくれるので。」
ウィリアムと呼ばれた男は、ひきつった顔をしていた。
「いきなり皆の名前覚えるの大変でしょう?ふふふ、彼は昨日リッパーにボコボコに負けたから。」
「おい、マーサ言うなよ。リッパーなんて、こっこっ怖くねーし。」
「ねえねえ、その風呂敷はなあに?」
「忘れてた……召し上がって下さい。昨日、私と美智子さんで、作ったんです。
……私は団子を丸めて、串に刺しただけですけど。」
風呂敷をほどくと、一枚のメモが入っていた。
「権兵衛がお世話になります。
必ず帰して頂けますよう、何卒。」
「愛されてるね。」
まじまじとメモを後ろから見ていたみたいで、びっくりして振り替えると、男の人もびっくりしていた。
「ああ、このこはイソップさん。対人は苦手なんだけど貴方を見に今日は無理して此処に居るのよね?
私の事はエミリーと呼んでね?」
とエミリーさんが話すと、コクコク首を縦に振っていた。
「おっ!美味しそうー。」
ラックと呼ばれた男の人は、警戒することなく口に運んでいた。それを見た他のメンバーも団子に手を伸ばしていく。
「美味しい!なんていう団子なの?」
「みたらし団子と三色団子と餡団子です。私も食べてもいいですか?つまみ食い出来なかったんです。」
と言うと、隣にいた緑色のフードを被っていた男が笑っていた。
「……つまみ食い?……ぷふ。」
「一つもくれなくて、こっそり手を伸ばしたら、扇子で叩かれたんですよ。昨日の出来立てを食べれなかったんですよ?私の悲しみ……分かります?」
「まあまあ、権兵衛ちゃん、時間は大丈夫かい?」
「うそっそろそろ行かなきゃ。でも、お団子……。」
時計を指した男が、やれやれと首を振り手を差し出してきた。
「私はセルヴェ。大切にされているお嬢さんだね。きっと帰ったら出来立てのお団子が待ってるよ。来るのはリッパーだよね。きっと早めに帰してあげた方がいいと思うから、見送りは私とナワーブ君で行こうか。」
「セルヴェ……万が一は、ステッキで。」
「ああ、君がいると一安心だ。さて、行こうか。」
手を引かれながら、皆に挨拶をして玄関まで別れ、玄関から出て行く。
「これ、皆からだ。」
袋には色々なクッキーが入っていた。
「女性陣が作ってたんだ。変なものは入ってないから安心しろ。」
「とても嬉しいです。ありがとうございます。」
「いや、俺は何もしていない。……それより、記憶は戻りそうか?あと、ハンターから何もされていないか?」
「記憶は……全くですけど、ハンターさん達には良くしてもらってます。」
「何かあったらこっちにいつ逃げてきてもいいから……。」
セルヴェさんの顔がひきつった様子から、もう待って……待ちわびている姿が浮かび上がる。まあ、何もソコには居ないように見えるが。
「ここで大丈夫です。それでは、セルヴェさん、ナワーブさん。」
一礼すると、手を振りながら門から出て行くと、声が降ってくる。
「権兵衛、随分と遅かったですね。」
「多分ジャックさんが早いんです。何分前に来たんですか?」
「それよりもお団子は美味しかったです?」
「時間が短すぎて食べ損ねました!!まだありますかね、お団子。」
「美智子が新しく作ってるのを見て来ましたよ。」
「やったー!!ジャックさん、早く帰りましょう。」
「ええ。」
またサバイバーの所に行きたいと言われたらなんと言えば良いか少しだけ心配はしていたけど。
こればかりは美智子の作戦通りと言わざるを得ないと思い、笑いが溢れた。