ててご夢、龍如夢共通。
旧長編
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「権兵衛、今日は私と出掛けますよ。」
いつもの私の部屋で待ち構えられている静かな朝の珈琲タイムでジャックの意外な台詞に、思わず珈琲をぶちまけずにすんだが、気管に入りむせた。
「ゲホゲホゲホ、お、お、おでがげでずか!?」
「さあ、行きますよ。」
さっと抱き抱えられた状態になり、部屋から出ていく。
「えっ、ま、まってください。ジャックさん私歩けます、逃げませんし、恥ずかしい、です。」
「私は姿を消して行きます。途中まで権兵衛も消えていた方が都合が良いですからね。
今更、権兵衛が逃げるだなんて誰も思っていませんよ。」
「えっ」
「何か変な事言いましたか?」
「皆信じてくれているんですか?」
ジャックさんは私に目を合わせ、耳元で囁き始めた。
「献身的でいて、愛想も良く、可愛らしい……それでいて芯は強いけど、乙女らしいと」
「は、恥ずかしいっっ、もうジャックさんわかりました。理解しましたから、もう。」
「そうですか?もう少しで町に出ますよ。あの忌々しい鍵ならば一瞬なんでしょうがね。」
「……忌々しい鍵?」
「失礼…こちらの話です。荘園には慣れたようですね。」
「色々ありましたけど、ジャックさんが拾ってくれたお陰で今がありますから……。本当にありがとうございました。」
パチリと目が合うと思わず笑ってしまった。
「何が可笑しいのですか?」
「館に向かってる時、優しく話しかけてきて、顔を時々覗き込んでくるから、目があって……その時は怖かったけど、安心しちゃって。」
「そうですね。忘れた事は一度もありませんよ。権兵衛の不安と安堵と……眠気と戦っている可憐な顔を。」
「眠気は余計ですよ!」
暫く経つと人の往来が多い町に着いていて、どうやら目当てのお店に向かっているようだった。
「着きましたよ、此方で下着を買ってきて下さい。お金とこちらのメモを渡しておきましょう。」
「下……着!?でもっでもっ欲しいです、買ってきます……ジャックさんは」
「フフ、流石に私は彼方の街灯の所で待ってますよ。」
やれやれと頭を少し振るとそっと地面に下ろし、ジャックさんの気配が無くなっていく。
白い袋の重みが金額は気にするなと言わんばかりだけど、白く折り曲げられたメモが気になった。
開けてみると
権兵衛の好きなのでいいんじゃないか?
派手な色は権兵衛には似合わねーぜ?
淡い色が良い……と思う。
柄でも可愛いからありだぞ?
くまさんもかわいいよね。
黒もオススメよ?セクシーランジェリーでもいいんじゃないかしら?
追伸
権兵衛ちゃん、金額は気にしなくていいし、なかなか外には出れないから好きなだけお買い物してね。美智子。
「何これっ、最後の美智子さんの一言だけしかまともなのないじゃんっっ。」
各々がメモに書いたのであろう……筆跡がバラバラだが、確実に帰ったら、紙袋を引ったくられて色を確認されそうだし、
仮に取られなくても何色を買ったのか質問と言う名のセクハラに合うことには、間違いない。
………………。気がついてはいけないことに気がついてしまった。最後の一言の筆跡とすぐ上の文が同じ事に…………。
もういっその事考えるのやめておこう。そうしよう。
私はこのメモの存在を忘れていて、見ていなかった。そうしよう。
無表情でお店のドアを開け、入店した。
「いらっしゃいませ、本日はどのような商品をお探しですか?」
「私に似合いそうな下着と適当な流行りの下着の上下セットで選んでもらえませんか?店員さんの押し売りと説明しやすいんで。」
「……はい?」
「派手じゃなければ、何でもいいです。」
「かしこまりました。」
メジャーでサイズを測られてピッタリのサイズの無難な下着のセットを選んでもらった。
……いつも付けていたよりもワンカップ上がったのは少しだけ嬉しかったかな。鼻歌交じりにお店の向かいにある街灯の元に足を進めた。
「お待たせしました、ジャックさん。」
「おや?随分と早かったですね。」
「ありがとうございました。衣服は揃えて頂いたんですけど、じつは下着はどうしようかと困ってたんです。」
「それは良かったです。っでどんな下着を買いました?」
「やっぱり聞きますよね……。」
「男に媚びる下着を買っていなければ私はいいですよ。」
「媚びません!もうっ、そんな事なら帰って確認してもいいですよ!!」
「……それは名案ですね。皆も気になっていたみたいですから御披露目会にしましょう。因みに、ジョーカー達は賭け事をしてたみたいなので。」
「人の下着を何だと思ってんですか!」
紙袋ごとヒョイっと抱っこされて、もうひとつ胸の上に紙袋を乗せられた。
「?」
「帰ったら食べましょうか。とても美味しそうなドーナツが売っていたので。」
「うー、なんか丸め込まれてる。うーん、でもドーナツいいですね。……ドーナツ……良い匂い。」
「さて、帰りましょう。」
「はい!……ジャックさん。また…連れてきてくださいね。」
「ええ。今度はゆっくりカフェにでも寄りましょう。フフ賭けには勝てそうです。」
「え」
不穏な会話をしつつ、居ない時に下着を当たられるより先に見せちゃえば問題ない気もする。
逆に隠し続けるという行為の方が人間は気になるもので…………。人間なのかな?
やっぱり考える事を放棄して、ジャックさんと楽しく会話をしながら荘園に帰りついた。
「只今戻りましたー。」
大広間に行くと、いつもはちらほらしか居ないのに、何故か皆が集まっていた。
「お帰りなさい、権兵衛ちゃん。皆首を長くして待っていたわよ。ジャックと権兵衛ちゃんは珈琲でいいかしらね?さあ座って。」
と言いながら、美智子さんは袖に手を当て、優雅な仕草でカップに珈琲を注いでいた。
「ただいまです、美智子さん皆さん。……首を長くしてってどういうっ」
「皆さん、お静かに。さて、権兵衛が確認してもよいと言っていたので今から……」
「リッパーさん、ま、待って下さい。皆の前で公表するんですか?公開セクハラじゃないですか!」
私の声を他所に、ベインさんは立ち上がり声高々に話した。
「俺たちの金がどういう風に使われたのか知る権利がある……と思うんだが。」
「そうだぞ!権兵衛!!ここにいる皆で権兵衛の似合いそうなやつとかアイデアだしたんだぞ!!」
ロビーくんまでも椅子の上に立ち上がり、抗議していた。くっ、こうなれば味方を増やすしかない。
「じゃあじゃあ、レオさんは私のパンツに興味あるんですか!!」
いきなり矛先を向けられ、レオは後ろ頭をかきながら、少し申し訳なさそうに呟いた。
「権兵衛、俺は何でも好きな物でいいと思うんだが、その、なんというか、権兵衛の年齢的に、少しだけ心配というか。」
珍しくレオさんの歯切れの悪い言葉を聞きながら、心配?と言う言葉が聞こえてきた所でジョーカーさんが話に割って入ってきた。
「おい、レオ?ぼかしたらなーんにも伝わらないぜ?権兵衛、俺はいいんだけど、お色気たっぷりのを買ってきてたら、心配なんだとよ!!」
「ジョーカー、少し黙っていてくれないか。しかし……すまない、権兵衛。」
「あやまらないで下さい、レオさん。お気持ちは分かりましたけど。」
まさかの親目線で下着が気になるレオさんに、私はため息をついた。そう言えば娘さんの男の影とか気にしてたな……。
助けてくれそうな謝必安さん達は居ないし、中立をとってくれそうなバルクさんも、イドーラさんも居ない。諦めかけた時にハスターさんが居ることに気が付いた。
ここしかない!!
「ハスターさんまで、気になるんですか!!」
「一興だ。権兵衛よ、諦めるがよい。」
ガックリと肩を落とし回りをみると、美智子さんが扇子で口元は隠しているものの、明らかににこやかにしていた。
「ごめんなさいねぇ、権兵衛ちゃん。こんな面白そうな御披露目会は滅多にないの。一波乱起きないかしらねぇ?」
「ねえねえ、くまさん買ったの?ヒヒヒヒ。」
美智子さんもヴィオちゃんも今か今かと待っていて、一見関心は無さそうに優雅に紅茶を嗜んでいるように見えるジョゼフさんも、カメラをしっかりセットしている所を見ると、肩を落としてしまう。
先程まで座っていたジャックさんが立ち上がった。
「さて、紙袋は此方に預かっていますので、早速御披露目会といきましょうか。」
「待ってっっ放してえっっ」
後ろにいたジョーカーさんが手早く私を椅子に押さえつけ、その間にベインさんがチェーンでぐるぐる巻いていく。
「本来ならば一枚ずつなんですが、可哀想なので一気にいきましょうか。」
嗚呼。可哀想とは?
紙袋は可哀想にも、リッパーさんの手によって逆さに持たれ、ドサドサっとスローモーションに下着のセットが机の上に山になっていく。
色々と言いたい事はあったが、ぐるぐる頭の中で言の葉は散り落ちていった。
「権兵衛、単色ばかりだな。」
「今流行りだし派手じゃないし、私にはパステルカラーがお似合いですよってお店の人からオススメして頂いたから、そのシリーズを色違いで買ったの。」
ロビー君はふーんと興味無さそうに私の下着を見ていた。……ロビー君は単色は好みじゃないのかな?なんて開き直ってにこやかにいたら、
「権兵衛ってそこそこあるんだな。」
意地の悪そうな顔をしたジョーカーがヒョイとレースたっぷりの白いブラジャーを手に取っていた。
「もー、やっばりセクハラです!訴えてやるんだから、訴えてやるー。うえーん」
じゃらじゃらっと音がして、振り返るとレオさんがチェーンをほどいてくれたようだった。ほっとしたのもつかの間
パシャ
「何撮ってんですか!?」
「記念にね。権兵衛、ほらお気に入りの下着とも1枚撮ろう。」
「っっ撮りませんから!!もう御披露目会は終わりです!!」
「鹿柄とか買わなかったのか?」
「ベインさん、そんなのありません!!!それに鹿柄なんて履きませんからっ」
「っっっ」
ベインさんは少し悲しそうに肩を落としていたが、肩を叩かれたので顔を向けた。
「おい権兵衛!単色ばかりで苺の柄とかないのか?」
「ロビー君そんないかにもな下着買わないから!あとくまさんもね!!ヴィオちゃん。」
「えー。じゃあうさぎさんはどうかなー?」
子どもっぽいものは履かないよーと言っていると、いつの間にか隣に美智子さんが来ていた。
「権兵衛ちゃんってば、男受けのいい色選んでるわー。賭けは……ジャックの一人勝ちかしらね。」
「……男……受け?いい?」
「権兵衛ちゃん、そんなことよりドーナツ美味しそうね。頂いたら?」
美智子さんにはぐらかされながら、自由になった身で下着をかき集め、なんとか紙袋に封印した。
「それにしても随分と男に媚を売るような清楚な下着にしたのですね。」
上から聞き慣れた声がチクチク刺してきた。
「媚びてません。」
「ジャック、よいではないか。ククク、権兵衛。我はこの一興、楽しめたぞ。」
「一興にしないでください。」
「もし気に入らないのであれば、ジャックが購入してあげればよかろう。」
「ジャックが買うのなら……鹿柄だって。」
「ほらほら権兵衛、下着とのショットお願い出来るかな?」
「もう、やめてー。」
バタバタの中、謝必安さんが帰宅したためドーナツを囲んで反省会兼お茶会になりました。
「貴方達、恥ずかしくありません?大の大人が。」
「すまない。賭け事があったから、その、やましい気持ちはないって言ったら……その。」
「ベイン…………そもそも、レオも美智子もいながら。……権兵衛大丈夫でしたか?」
「謝必安さん……もう……一通り見られたのでもう大丈夫といえば大丈夫です。」
「いや、そもそも隠したところで今日は白だろ?」
「何でジョーカーさん知ってるの!?」
やれやれと頭を振りながらジャックが答えた。
「権兵衛はもっと気を付けたほうがいいですね。ジョーカー、それとパンツの色で賭け事するのやめてもらえます?」
「………………貴方達、恥ずかしくないのですか!!!」
謝必安さんが暴れた為お茶会はすぐにお開きになりました。その後、暫くの間謝必安さんからズボンが支給されましたが色々あったみたいでまたメイド服のスカートに戻りました。
一日の終わりの珈琲を口につけてか疑問をなげかけました。
「ジャックさん。……メイド服は嫌じゃないんですけど、ズボンの方が良かったと思うんです。動きやすかったし……。」
「ああ、その事ですか。私はどちらでも良いとは言ったのですが、権兵衛のパンツが見えないからという理由ですよ。」
「…………。」
私はすぐに考える事をやめた。