ててご夢、龍如夢共通。
旧長編
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改めて自室をよく見てみると、皆の部屋の間取りと大体同じだった。そう、皆と同じ部屋を使わせてもらっているという事実と良くして貰っているという安心感で胸はいっぱいになっていた。
「みんないい人だー。」
ぽふっと大きなベッドにダイブした。
皆もベッドで眠るのかなーなんて思ってたら、
ドアのノック音がした。
「はーい!……あっ」
「休憩の所失礼しますね、権兵衛。」
返事をしてドアに向かおうとしたが、ひとりでにドアが開き、見慣れた靴が部屋に入ってきた。
さーっと背中に汗が流れるのを感じ、本能的に心音が壊れんばかりに鳴り響いた。
ただならぬ殺気を感じる。
「あ……リッパーさん。」
何かしたか……頭で一生懸命考えるが思い当たらない。そのままリッパーさんは私に近付いてきて、ジリジリ距離を詰めて、私の背中はあっさりと壁にぶつかった。
ドンっと顔の横に手を付かれ、私はヒッと縮こまった。
「何故、権兵衛は皆を名前で呼ぶのに私の名前を呼ばないのですか?
何故、鹿なんかを被っているのですか?……お遊びにお茶まで呼ばれてさぞかし楽しかったのでしょう。
何故、私の部屋を訪れなかったのでしょうか。
何故っ、」
「ま、ま、ま、待って下さいっ、」
何とか声を振り絞った。もうこれ以上は身体は縮こまらないし、顔の距離もかなり近い。
「私はずーっと待っていましたが……権兵衛。」
リッパーの声色に本能的にヤバいと思い、首を勢い良く左右に振り、更に声を振り絞った。
「い、い、言い訳をさせて下さい。
リッパーさんとお名前を聞いていたので、勝手にジャックさんとお呼びするのは悪いと思ったんです。ごめんなさい。
鹿の帽子は、トランプで負けて罰ゲームで1日被ると約束したためです、初めてきちんとお話させていただいたので仲良くなれたらと思いました。
あと、リッ……ジャックさんは私の名前も付けてくれて、もう自己紹介する間柄ではないと思ったんです。でも、お部屋にお礼に行かなかったのははすみません。
無意識でしたが、朝の……あの、……刃が……怖かったん、です。」
「そうでしたか、ふーむ。」
最後の言葉で俯いていたが、ジャックさんの言葉が落ちて来なかったので、ゆっくり顔をあげると、ギラリとした目に射ぬかれた。
「私が怖いのですか?」
「……すこし怖いです。」
「困りましたね。」
ふーっと目の前でため息を吐かれると、鹿の帽子を掴まれその辺に投げ捨てられた。
「ごめんなさい、絶対慣れますから、頑張りますから。」
「それは良かったです。珈琲でも淹れましょうか?」
「わ、私がやります!やらせて下さい。」
ジャックさんはゆったりとした動きで椅子に座り、鼻歌を歌い始めた。
どうやら機嫌が少し良くなってきたみたいとほっとしたので、キッチンに向かい珈琲の準備に取りかかった。
権兵衛が離れて行ったのを確認して、椅子の方を睨み付けた。
「イドーラ、趣味が悪いですよ。すぐに権兵衛から離れて下さい。今すぐに。」
「フフフ、もう大丈夫のようね。皆から頼まれてたのよ、分かってくれるかしら?」
床に魔法陣が出現して、その中から信徒が出てきた。
「権兵衛の言い訳に嘘偽りがなくて良かったです。あと、目障りですからこれを棄てておいてもらえます?」
ジャックは床に落ちていた鹿の帽子をひょいと掴むと、信徒に手渡した。
「おやすみ、ジャック。あまり権兵衛を壊さないでね。」
「……どうでしょう。」
信徒が消えるのを確認した後に権兵衛が大慌てでお盆に珈琲を載せて来た。
「ジャックさん!お待たせしました。お砂糖とミルクはどうします?」
久々に自分に向ける微笑みを見て満足したのも束の間、スカートと靴下との間にちらりと見える、太ももにため息をついた。
「とっととと 、当然ブラックでしたよね、すみません。」
が、すぐ涙目になるくるくると表情が変化する権兵衛に思わず笑ってしまった。
「珈琲を淹れるの上手いですね、権兵衛。毎朝と毎晩お願いしますね。」
「ありがとうございます。……へ、はい!えっ、毎日ですか?」
「何か不都合でもあります?」
「全くないです。」
ふるふると左右に振る権兵衛に満足し、少し薄い味の珈琲を堪能した。