テニスボールを追いかける彼と
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ズキズキとは少し違う。今感じている痛みを例えるなら、内側から激しい突きを受けている感覚。ドンドン……ドドドン……四天宝寺……
ああ、ほら……痛みのせいで幻聴まで襲ってきた。生理痛恐るべし。
こういう時に限って手元には薬が無い。先月使い切ってしまったから買わないとなぁと思ってはいたものの、今日を迎えるまでずっと失念していた。どうせならその「毎月の恒例行事」も今月くらい忘れてほしかったのにきっちりやってきたから許しがたい。
重い溜息を吐いて、気休め程度に下腹部を擦る。しかし全く効果が無く、薬を買い忘れた過去の自分を恨んだ。
「なぁなぁ、夢子ねーちゃん。腹痛いん?」
「金ちゃん……と、謙也もおったんか」
「おいっ、おまけみたいに言うなや!」
テニスコートの隅でうずくまっていた私はゆっくり顔を上げる。そこには練習着姿の金ちゃんと謙也が心配そうな顔で立っていた。
「夢子ねーちゃんがこんなに痛がってるっちゅーことは、もしかして拾い食いでもしたんか!?」
「いやいや、金ちゃんじゃあらへんし。あれやろ? せ……」
「そう! だから金ちゃんも拾い食いしたらアカンで!」
私は謙也の言葉を遮ると、同級生を睨め付けた。目の前にいる純粋な一年生に聞こえないように小声で責める。
「謙也のアホ! 金ちゃんに生理痛なんて言えるわけあるかい!」
よっぽど鬼気迫る表情に見えたのか、謙也は「すまん……」と弱々しく謝った。
「なぁ、夢子。薬は飲んだんか?」
「それがちょうど切らしてて……」
「あー……保健室行けば貰えるんちゃう?」
謙也に言われるまで考えもつかなかったけれど、確かに保健室なら痛み止めの一つくらいあるかもしれない。確かにその手があった。にこーっと口角を浮かべて、言い出しっぺにお願いする。
「ほな謙也、ぱーっと行ってきてくれへん?」
「おお、任せとき! って、なんでやねん!」
「こっちは動くの辛いんやで!? それに万が一保健室で白石と鉢合わせしたら気まずいやん!」
「アホか! 俺かて気まずいわ!」
期待が音を立てて崩れていく。浪速のスピードスターなんだから一瞬で行って帰ってこれるだろうに。お人好しの謙也でも、女子のかわりに鎮痛剤を貰いに行くのは抵抗があるらしい。
「男には分からんねんこの辛さは……小春ちゃんだったら分かってくれるんやろなぁ……」
私は両手で顔を多いながらめそめそと泣き真似をする。
「言っとくけど小春も男やからな?」
「うう……痛たたたた……」
「あー…… 夢子、薬はないけどコレならあったわ」
何かガサゴソという音が聞こえたかと思うと、謙也は白いものをこっちに向けて投げてきた。
「カイロ……?」
「……あっためれば少しはマシになるやろ」
「ん……おおきに、謙也……」
「なぁなぁ、謙也。ねーちゃん本当に拾い食いしたん?」
「へ!? あ〜……どうやろなぁ……?」
まだじんわりと残っている熱が私の身体を癒していく。謙也は助けてくれと言いたげにこっちを見てくるが、タジタジになっている同級生が面白くてわざと知らないフリをした。
ああ、ほら……痛みのせいで幻聴まで襲ってきた。生理痛恐るべし。
こういう時に限って手元には薬が無い。先月使い切ってしまったから買わないとなぁと思ってはいたものの、今日を迎えるまでずっと失念していた。どうせならその「毎月の恒例行事」も今月くらい忘れてほしかったのにきっちりやってきたから許しがたい。
重い溜息を吐いて、気休め程度に下腹部を擦る。しかし全く効果が無く、薬を買い忘れた過去の自分を恨んだ。
「なぁなぁ、夢子ねーちゃん。腹痛いん?」
「金ちゃん……と、謙也もおったんか」
「おいっ、おまけみたいに言うなや!」
テニスコートの隅でうずくまっていた私はゆっくり顔を上げる。そこには練習着姿の金ちゃんと謙也が心配そうな顔で立っていた。
「夢子ねーちゃんがこんなに痛がってるっちゅーことは、もしかして拾い食いでもしたんか!?」
「いやいや、金ちゃんじゃあらへんし。あれやろ? せ……」
「そう! だから金ちゃんも拾い食いしたらアカンで!」
私は謙也の言葉を遮ると、同級生を睨め付けた。目の前にいる純粋な一年生に聞こえないように小声で責める。
「謙也のアホ! 金ちゃんに生理痛なんて言えるわけあるかい!」
よっぽど鬼気迫る表情に見えたのか、謙也は「すまん……」と弱々しく謝った。
「なぁ、夢子。薬は飲んだんか?」
「それがちょうど切らしてて……」
「あー……保健室行けば貰えるんちゃう?」
謙也に言われるまで考えもつかなかったけれど、確かに保健室なら痛み止めの一つくらいあるかもしれない。確かにその手があった。にこーっと口角を浮かべて、言い出しっぺにお願いする。
「ほな謙也、ぱーっと行ってきてくれへん?」
「おお、任せとき! って、なんでやねん!」
「こっちは動くの辛いんやで!? それに万が一保健室で白石と鉢合わせしたら気まずいやん!」
「アホか! 俺かて気まずいわ!」
期待が音を立てて崩れていく。浪速のスピードスターなんだから一瞬で行って帰ってこれるだろうに。お人好しの謙也でも、女子のかわりに鎮痛剤を貰いに行くのは抵抗があるらしい。
「男には分からんねんこの辛さは……小春ちゃんだったら分かってくれるんやろなぁ……」
私は両手で顔を多いながらめそめそと泣き真似をする。
「言っとくけど小春も男やからな?」
「うう……痛たたたた……」
「あー…… 夢子、薬はないけどコレならあったわ」
何かガサゴソという音が聞こえたかと思うと、謙也は白いものをこっちに向けて投げてきた。
「カイロ……?」
「……あっためれば少しはマシになるやろ」
「ん……おおきに、謙也……」
「なぁなぁ、謙也。ねーちゃん本当に拾い食いしたん?」
「へ!? あ〜……どうやろなぁ……?」
まだじんわりと残っている熱が私の身体を癒していく。謙也は助けてくれと言いたげにこっちを見てくるが、タジタジになっている同級生が面白くてわざと知らないフリをした。