攻め主
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横から、じとっと突き刺さるような視線。
ちらりと盗み見れば、ムスッとした顔でこちらをずっと眺めている。
いつもの大人の余裕を持ち合わせるハナマルからは想像できないような幼い行動に口元が緩む。
まだその可愛らしい行動(36歳に言うのもどうかと思うが)を目に焼き付けておきたいが、そろそろ下の用意も出来てる頃のはずなので、ぐっと堪えて声をかける。
「……そんなに見つめられると穴があくんだけどな、ハナマル?どうかしたか?」
「……いーや?別になんでもないぞ?」
「の、割には俺のこと見るじゃん。」
「……別にぃ、何ともないけど…?」
話を切り出せば、明らかになんでもあるような声音で言ったハナマルは俺から軽く目を逸らし、口をすぼめた。
…話のキャッチボールが出来てないな。
いつものハナマルならば、主様がカッコよくてねぇ、くらいの軽口を返してきそうなものだが、どうやらそれほどの余裕もないらしい。
くすくすと笑みをもらすと、なんで笑ってるんだよ主様…と不満げに言葉が返ってきた。
「構わなさすぎて怒っちゃったか?」
「そーなんだけどそうじゃない、っていうかぁ…」
「……よーし、わかった。今から食堂に行こう。」
「……はっ?」
素っ頓狂な声を出す彼の手を掴み、ずんずん歩き出す。
少々強引であるがまあ、この調子だと大丈夫だろう。
「お、おいおい主様?」
「ん~何?」
「なんで今の流れで食堂に行くことになったんだ…!?」
「なんとなく。」
「ナントナク…」
俺の答えに呆れたように溜息をつく音が後ろから聞こえた。その後は諦めたようで俺に従って静かに歩いている。
俺は別に傍若無人とかじゃないからな。
違うからな!!
階段を降りて、そのまま廊下を歩けば食堂が見えた。
俺が入ってから、ハナマルも中に入ろうとする。そしてその瞬間中にいたみんながクラッカーを引く。
パンッと破裂音が鳴り、火薬の匂いがする。
ハナマルは驚いたように目を見開いた。
「うぉっ…!?」
「「「「ハナマル、誕生日おめでとう!!!」」」」
食堂の中には、執事のみんなだけではなく、子供たちもいる。
俺と子供たちがどうしてもサプライズしたくて、細心の注意を払って用意したんだよな。
ちなみに嘘がつけなさそうな執事には途中まで黙っておいた。敵を騙すにはまず味方から、ってな。
呆気に取られた顔のままのハナマルに近づき、誕生日おめでとう、ともう一度声をかける。その声で現実に戻されたのか、ぱっとこちらを見た。
「んふふ、サプライズ成功だな~」
「…あーなるほどねぇ、そういう事だったのか……」
俺カッコ悪ぃ…とぐしゃっと髪を掻きむしった。
「ほらほら、みんな用意したんだから、行っておいでよ、主役サン?」
「…ああ、そうだな。俺のためにみんな頑張ってくれたんだもんな~」
おちゃらける彼のように言えば、同じように返してくる。
よ~し、調子戻ってきたな、なんて笑う顔はいつもの彼だった。
「主様」
後ろから聞きなれた声がして振り向く。
予想通り、フルーレか仕立てた特別な衣装に身を包んだハナマルが立っていた。
うーん、服の隙間から見える鎖骨がえっち。
「お、誰かと思えば本日の主役じゃないか、ずいぶんと引っ張りだこだったな?」
「そりゃーもうね。…おかげで、最高の誕生日になりそうだよ。」
「そりゃ良かったなぁ。」
そう言ってもらえるとこちらも頑張った甲斐があるというものだ。
顔は先刻までの淀んだ表情とは同じか疑ってしまうくらいには、晴れやかな顔をしていた。
「##夢主##様」
「何?」
「………ありがとう、な。」
ふ、とそれはもう今までにないほど優しい、砂糖を煮詰めたような甘ったるい顔で微笑んで言われるもんだから、心臓がぎゅんと鳴ったような気がした。
俺はハナマルの顔が直視出来なくて、ぱっと両手で顔を覆い隠した。嘘です、顔は盗み見てます。だって可愛いから。
「…主様、どうかしたか?」
「……………それは、ズルい…」
ぜーったい無自覚だ、これ。
無自覚じゃなきゃ困る。主に俺が。
ハナマルは不思議そうな表情をして、顎に手をあてて考え込んだ後、何か思い当たったのかにやりと意地悪そうな笑みを浮かべた。
あ、これマズイ。
「主様ってば俺に惚れちゃったのかぁ〜?」
「…うん、惚れちゃった。」
「まあハナマル様はかっこいいからしょうが、な……え"っ、今惚れたって言った!?」
手を口元に持っていき揶揄うように笑う姿に、一泡吹かせてやりたくてそう返す。
「ちょ、主様もっかい言って!?」
「だ、か、ら、ハナマルがあんまりにも優しい顔するもんだから、惚れちゃった。」
「~~~っ!」
耳元で囁けば、きゅっと顔を顰めて顔を片手で隠す。まあ隠せてないけど。
ハナマルの耳は紅く染まっていて、頬は色付いている。…照れた顔は新鮮だな。
心のシャッターに刻もう。
今日のことは一生忘れねぇわ。
「なんだよ、驚いた顔して。」
気を抜いたら頬がだらしなく緩みそうで必死に体裁を保つ。…落ち着け俺、π=3.141592………
「い、いや…そんな倍返しで来ると思ってなかったからなぁ、心の準備が…」
「じゃあこれから慣れような、ハナマル。」
「…、しばらくは勘弁してほしいねぇ……」
『ハナマル、誕生日おめでとう』