女主夢
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臆病者のアイラブユー!
平和軸/篠木ケイジ
『知ってる?午後に嘘ついたら駄目なんだって』
11:40。お腹すいたなぁ、なんてぼんやり思いながら自室のベッドに寝転んでスマホを見ていたら、ピコンと上部に表示された通知が目に入る。
名前に目を通せば、ケイジさんからだった。
その名前にドキッとする。
通知をタップして、トーク画面を開いた。慣れた手つきで指を液晶画面に滑らせ、送信ボタンを押す。
『へぇ、そうなんですね』
送ったメッセージにはすぐさま既読がついた。
今日は4月1日。
私も今日こそは!とメッセージアプリにて嘘をついてみたが、「…そっか、エイプリルフールだもんね」とケイジさんに言われるだけで終わった。無念。
ケイジさんを騙すのは時間がかかりそうだな…
……それにしても、午後に嘘をつくのがダメなのか。
私が今日嘘を混ぜたメッセージを送ったのは朝8時だから問題ないだろう。私は1人、部屋でうんうんと頷く。
でも、日本でそういうルールは聞いたことないな。何処かの国の風習なのだろうか。
『…と、言っても嘘をつくのがダメな訳じゃなくてね。嘘をつくのは正午までで、午後にネタばらしをする、っていう英語圏あたりのルールなんだって』
私が疑問に思ったのを見透かしたかのように、さらに文章が送られてくる。分かりやすい説明は、流石ケイジさん、と言ったところだろうか。
『その方がエイプリルフールで騙されることが少なそうで良いですね』
『キミは騙されやすそうだもんね』
……なんだ、騙されやすそうって。ケイジさんは私を一体なんだと思っているんだろうか。
『毎年騙されてますが何か!?』
『半分冗談のつもりだったんだけど、本当なんだね…』
ちょっと引かれたような気がする。それとも呆れだろうか。どっちにしろショックだ。
毎年、嘘を見抜こうとはしているのだけれど、どう頑張っても誰かに騙される。1度騙された友達からは引っかからないけど、他の友達から騙されるんだよなぁ……
そのことを打てば、『それ、その癖がバレてるんじゃない?』と言われた。なるほど、確かに。
『…来年はもう騙されません!』
『今年はもう騙されてるんだ…』
どうしてこんなにも騙されやすいんだろうか……
『まあでも、それがキミの良さでもあるんじゃないかなー』
『ケイジさん………!』
私が落ち込んでいるのを察したのだろうか、ケイジさんはサラリとフォローしてくれた。こういうところが女子にモテるんだろうな……。
ケイジさんのモテテクを垣間見た気がする。
チクリと痛んだ胸には、気づかないフリをした。
その後もぽんぽんと会話が続いていく。
すると、途中でケイジさんからの返信が途絶えた。
何かしているのだろうか。既読はついているけど、返信内容に悩んでいるのだろうか…?
そう悩むが、私のメッセージは別に難しい内容でもない。先程からずっとケイジさんは即レスをしていたし、打つのが遅いとかでも無さそうだ。まさか既読スルーなんてするような人でもあるまいし。
じゃあ一体何を……?
ケイジさんのらしくない行動に首を傾げていると、返信が返ってきた。
私はそのメッセージにすぐ目を通したことを、激しく後悔することになる。
『好きだよ』
送られてきたのは、たった4文字。
でも、私を動揺させるには充分すぎる文字数だった。
今日はエイプリルフール。つまりこれは嘘。
………そういうことなのはよく分かっている。分かってる、はず。
…ずるいじゃないか。
そんな、人の好意を弄ぶような嘘だなんて。
私は、今日が4月1日じゃなければ良かったのに、と思った。思ってしまった。この好意が本物であったのなら、どれほど良かったのだろう。
好きな人との会話で沸き立っていた心が一瞬で冷えきっていくのを感じる。じわり、と目尻に水滴が滲む。
ぼやけた視界のままスマホに目を落とせば、トーク欄を開いたままになっている。あ、既読にしてしまった。
バレてはいけない。私はそう思い、のたのたとフリック入力をする。
『流石に騙されませんよ〜!』
これが私の普通の反応、だろう。多分。
今は正常な判断もまともに出来ないような気がしたが、なんとか乗り切るしかない。
私は目元の雫を拭い、大きく息を吸った。
大丈夫、大丈夫だ。誤魔化せるはず。
最後まで隠し通す覚悟を決めた。と、ほぼ同時に着信音が部屋に響き心臓が跳ねる。
慌てて画面を見れば、ケイジさんからだった。
少しだけ躊躇して、それから応答ボタンを恐る恐るタップする。
先程会話をしていたから居留守は使えないし、誤魔化すつもりなら出るべきだった。
「も、もしもし」
緊張しながらも平静を装い、喉から声を絞り出す。
「もしもーし、おまわりさんだよ」
返ってきた声はひどくのんびりとしていて、そういうところが好きだったはずが、今はそれが憎らしい。
「……えっと、突然どうしたんですか?」
「うん、さっきのことなんだけどさ」
さっき。その言葉は確実にメッセージアプリでの会話を示していた。怖い。彼の口から直接事実を突きつけられてしまうのだろうか。
「メッセージの時刻、確認してご覧?」
そう返信が返ってくる。時刻?
私は思わず部屋に置いてあるデジタル時計を見る。
12:03
12時3分がどうかしたのか。
そう思った瞬間頭によぎったのは、先程までの会話。
『午後に嘘をついたら駄目なんだって』
「………えっ!?」
通話中にしたまま、アプリを開き、慌ててメッセージの時刻を確認する。
送信時刻は、12:00ピッタリだった。
「…ま、まって」
ドクドク、と心臓が早鐘を打つ。
12:00って、一体どっちに入るんだろう。
嘘をついていいのは正午までで、ネタばらしをするのが午後。じゃあこれは?嘘?本当のこと?
「ま、待ってください、これってどっちですか!?」
「さあ、どっちだと思う?」
答えを焦らすような文章が返ってくる。
でも、決して否定ではなかった。
…期待しても、いいのだろうか。ケイジさんも同じ感情を抱いていると想像しても許されるのだろうか。
……この後ケイジさんの発言で、私はもう一度狼狽えることとなる。
「キミの、都合の良い捉え方で構わないよ」
平和軸/篠木ケイジ
『知ってる?午後に嘘ついたら駄目なんだって』
11:40。お腹すいたなぁ、なんてぼんやり思いながら自室のベッドに寝転んでスマホを見ていたら、ピコンと上部に表示された通知が目に入る。
名前に目を通せば、ケイジさんからだった。
その名前にドキッとする。
通知をタップして、トーク画面を開いた。慣れた手つきで指を液晶画面に滑らせ、送信ボタンを押す。
『へぇ、そうなんですね』
送ったメッセージにはすぐさま既読がついた。
今日は4月1日。
私も今日こそは!とメッセージアプリにて嘘をついてみたが、「…そっか、エイプリルフールだもんね」とケイジさんに言われるだけで終わった。無念。
ケイジさんを騙すのは時間がかかりそうだな…
……それにしても、午後に嘘をつくのがダメなのか。
私が今日嘘を混ぜたメッセージを送ったのは朝8時だから問題ないだろう。私は1人、部屋でうんうんと頷く。
でも、日本でそういうルールは聞いたことないな。何処かの国の風習なのだろうか。
『…と、言っても嘘をつくのがダメな訳じゃなくてね。嘘をつくのは正午までで、午後にネタばらしをする、っていう英語圏あたりのルールなんだって』
私が疑問に思ったのを見透かしたかのように、さらに文章が送られてくる。分かりやすい説明は、流石ケイジさん、と言ったところだろうか。
『その方がエイプリルフールで騙されることが少なそうで良いですね』
『キミは騙されやすそうだもんね』
……なんだ、騙されやすそうって。ケイジさんは私を一体なんだと思っているんだろうか。
『毎年騙されてますが何か!?』
『半分冗談のつもりだったんだけど、本当なんだね…』
ちょっと引かれたような気がする。それとも呆れだろうか。どっちにしろショックだ。
毎年、嘘を見抜こうとはしているのだけれど、どう頑張っても誰かに騙される。1度騙された友達からは引っかからないけど、他の友達から騙されるんだよなぁ……
そのことを打てば、『それ、その癖がバレてるんじゃない?』と言われた。なるほど、確かに。
『…来年はもう騙されません!』
『今年はもう騙されてるんだ…』
どうしてこんなにも騙されやすいんだろうか……
『まあでも、それがキミの良さでもあるんじゃないかなー』
『ケイジさん………!』
私が落ち込んでいるのを察したのだろうか、ケイジさんはサラリとフォローしてくれた。こういうところが女子にモテるんだろうな……。
ケイジさんのモテテクを垣間見た気がする。
チクリと痛んだ胸には、気づかないフリをした。
その後もぽんぽんと会話が続いていく。
すると、途中でケイジさんからの返信が途絶えた。
何かしているのだろうか。既読はついているけど、返信内容に悩んでいるのだろうか…?
そう悩むが、私のメッセージは別に難しい内容でもない。先程からずっとケイジさんは即レスをしていたし、打つのが遅いとかでも無さそうだ。まさか既読スルーなんてするような人でもあるまいし。
じゃあ一体何を……?
ケイジさんのらしくない行動に首を傾げていると、返信が返ってきた。
私はそのメッセージにすぐ目を通したことを、激しく後悔することになる。
『好きだよ』
送られてきたのは、たった4文字。
でも、私を動揺させるには充分すぎる文字数だった。
今日はエイプリルフール。つまりこれは嘘。
………そういうことなのはよく分かっている。分かってる、はず。
…ずるいじゃないか。
そんな、人の好意を弄ぶような嘘だなんて。
私は、今日が4月1日じゃなければ良かったのに、と思った。思ってしまった。この好意が本物であったのなら、どれほど良かったのだろう。
好きな人との会話で沸き立っていた心が一瞬で冷えきっていくのを感じる。じわり、と目尻に水滴が滲む。
ぼやけた視界のままスマホに目を落とせば、トーク欄を開いたままになっている。あ、既読にしてしまった。
バレてはいけない。私はそう思い、のたのたとフリック入力をする。
『流石に騙されませんよ〜!』
これが私の普通の反応、だろう。多分。
今は正常な判断もまともに出来ないような気がしたが、なんとか乗り切るしかない。
私は目元の雫を拭い、大きく息を吸った。
大丈夫、大丈夫だ。誤魔化せるはず。
最後まで隠し通す覚悟を決めた。と、ほぼ同時に着信音が部屋に響き心臓が跳ねる。
慌てて画面を見れば、ケイジさんからだった。
少しだけ躊躇して、それから応答ボタンを恐る恐るタップする。
先程会話をしていたから居留守は使えないし、誤魔化すつもりなら出るべきだった。
「も、もしもし」
緊張しながらも平静を装い、喉から声を絞り出す。
「もしもーし、おまわりさんだよ」
返ってきた声はひどくのんびりとしていて、そういうところが好きだったはずが、今はそれが憎らしい。
「……えっと、突然どうしたんですか?」
「うん、さっきのことなんだけどさ」
さっき。その言葉は確実にメッセージアプリでの会話を示していた。怖い。彼の口から直接事実を突きつけられてしまうのだろうか。
「メッセージの時刻、確認してご覧?」
そう返信が返ってくる。時刻?
私は思わず部屋に置いてあるデジタル時計を見る。
12:03
12時3分がどうかしたのか。
そう思った瞬間頭によぎったのは、先程までの会話。
『午後に嘘をついたら駄目なんだって』
「………えっ!?」
通話中にしたまま、アプリを開き、慌ててメッセージの時刻を確認する。
送信時刻は、12:00ピッタリだった。
「…ま、まって」
ドクドク、と心臓が早鐘を打つ。
12:00って、一体どっちに入るんだろう。
嘘をついていいのは正午までで、ネタばらしをするのが午後。じゃあこれは?嘘?本当のこと?
「ま、待ってください、これってどっちですか!?」
「さあ、どっちだと思う?」
答えを焦らすような文章が返ってくる。
でも、決して否定ではなかった。
…期待しても、いいのだろうか。ケイジさんも同じ感情を抱いていると想像しても許されるのだろうか。
……この後ケイジさんの発言で、私はもう一度狼狽えることとなる。
「キミの、都合の良い捉え方で構わないよ」