よう実
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「…悪い綾瀬、ちょっと我慢してくれ」
耳元で彼の平坦な声が聞こえて心臓が跳ね上がる。ロッカーの中に2人も入れば、必然的に密着してしまう訳で。
(……ち、近いっ…!!)
ドクドクと心音がうるさい。心臓が激しく騒ぎだすものだから、綾小路くんにもバレてしまうかもしれない。そんな不安が頭をよぎる。
綾小路くんは何を考えているのだろうか、とちらりと彼を盗み見る。横に見えた顔はいつも通りの綾小路くん(に見える)。……いかんせん無表情がデフォルトだから何を考えているか分からない…っ!
「このロッカーは密閉性が高いな。外の物音が聞き取りづらい」
「え?あ、う、うん……そうだね」
どうやら私の取り越し苦労だったらしい。ドキドキしているのなんて私だけで、綾小路くんはこの状況をただ分析しているだけだった。……そうだよ、そんなラノベみたいな展開現実にある訳ないじゃない。ちょっと舞い上がっちゃった自分が恥ずかしい……
綾小路くんの言葉1つでここまで調子を狂わされる自分に嫌気が差す。でも、それが嫌ではないのはきっと彼のことを……
「綾瀬」
「は、はいっ!?」
「いや……その、悪いんだが……」
なぜか綾小路くんが言い淀む。どうしたのだろう?と彼を見ると彼は少し顔を赤くして私から視線を逸らした。そして、彼は目を閉じて俯く。……え、ちょ、ほんとにどうした!? 綾小路くんが焦る表情を見かけるのは初めてで……わたわたと不審な動きをして何とか離れようとする、が。といってもここはロッカーの中で。前には綾小路くん、後ろには壁。離れようにも離れられない状況だった。私は離れることを諦めドキドキしながら綾小路くんの言葉を待つことにした。
「……その…当たってるんだ…」
「あ、当たってるって何が…?」
そう恐る恐る聞き返すと綾小路くんは躊躇うような素振りをしてこちらを見た。若干頬が赤く染まっている気がする。
「……その、む、胸だ」
……胸?誰の…私の?…………私の!?!?
「ご、ごごごめん!!!」
「い、いや……大丈夫だ」
慌てて当てないように離れると、ふいっと目を逸らした綾小路くん。それから私達の間に沈黙が生まれる。私はと言うと無意識とはいえ胸が当たっていたことが恥ずかしくてそれどころではなかった。
「…と、とにかくだ。このロッカーから出よう」
「そ…そうだね!」
そう流れを変えるように言った綾小路くんに慌てて同意を返す。綾小路くんがロッカーの扉を開けようとするが、扉は固く閉ざされたまま開くことはなかった。
「開かない…な」
「立て付けが悪いのかな……ど、どうしよう」
「あ、あのさ……綾瀬」
「な、何?」
「その、少し離れてもらえるとありがたいんだが……」
「こ、これ以上どう離れろと…!?」
少し悩む素振りを見せた後、綾小路くんは白状するように言葉を漏らした。
「この際言うが、綾瀬の背中の感触を感じまくって……これはこれで都合いいんだ」
「へっ、な、何言ってるの!?」
「あ、ち、違うぞ?何も俺は綾瀬に邪な感情を抱いたまま会話してるとか、そんなことはまったく」
「……してた?」
「……………………してないとも言ってない……」
予想外の返答に私は動きを止める。どうやら綾小路くんは……存外えっちだったようだ。
「え、えっち、ばかあほ…すけべ」
「……言葉責めはやめてくれ綾瀬……」
よく分からない静寂が流れる。しかしそれも長くは続かない。
「あ、あのな……綾瀬」
「な、何……?」
「……その、これは事故だ。そう事故なんだ。だから、俺は悪くない」
「……へ?な、何言ってるの?」
まるで自分に言い聞かせるようにそんなことを口にする彼の意図が分からず私は困惑する。そして綾小路くんはこちらを振り向くと、私を強く抱きしめた。
「え」
「……悪い、綾瀬。もう限界だ」
そんな彼の言葉と共に、私の唇を綾小路くんの唇が強引に塞いでいた。突然の行動に私は何も出来ない。暴れようと思えば暴れられるのに、私の体はまるで金縛りにあったかのように身動きが取れなかった。
どれくらい時間が経ったのだろう。1分、それとももっとだったかもしれない。僅かな時間が永遠のように思い始めた頃、息が苦しくなり始めて慌ててとんとんと胸を叩く。それを合図にやっと離れて行くと……息が上がって呼吸が乱れた私と私を見つめている彼との間に銀の糸が引いてぷつりと途切れた。
「あの、えっと、これは」
「……その、俺は耐えられなかったんだ」
そんな意味深な発言をぶつけられて頭の中が真っ白になってしまった。私の心臓はドクドクと音を立て体の中に鼓動を強く響かせている。
「……綾瀬」
「……い、いちいち何?」
なんとか誤魔化すように口から声を絞り出す。
「……その顔凄くエロくて、可愛いと思う」
「ひえっ!?何言ってるの変態!!」
「綾瀬、そういう罵倒は最早逆効果だからな……頼む、我慢が効きそうにないんだ」
綾小路くんが呼吸の荒いままそう言って……三度唇を重ねる。今度は随分と乱暴に捻じ込むようなキスだ。ドキドキとうるさく脈動する心臓とは対照的に私は酷く落ち着いていた。無意識に彼を受け入れていた、自分でも……嫌というくらいその行動が理解できていたからだ。もう反発するような理性は残っていなかった。
「んっ……あ、やの、んぅ……」
「……んむ、あやせ……」
「ちょ……ま、待って!」
段々と気分が乗ってきた矢先、そんな緩い口づけで止められた綾小路くんは滅茶苦茶不満げだった。物足りないという視線がじとりと私を見つめる……その目線に耐えられなかった私は慌てて彼から離れてきっと彼を睨みつけた。
「綾小路くんっ!?」
「今のは完全に綾瀬が悪い」
「え、ええとっ!?いや、いやいやいや!?最初に事を起こしたのは君だったでしょ!!」
「……同意だろ?」
もうそれで良いんじゃないのか?と言わんばかりの堂々とした立ち振る舞いに一瞬納得してしまいそうになるが私は頑張って冷静さを保つ。
「な、何も解決になってない!!どさくさに紛れて凄いことしないで!」
「無茶苦茶だな。今のでこっちがどれだけ大変な思いをしてるか分かってない」
「なんで開き直ってるの!?……あ、綾小路くんのえっち!ばか!」
「その罵倒も逆効果だぞ綾瀬」
あ、あれ?私もしかして今追い詰められてる? ジリジリと距離を詰める綾小路くん。私はもうこれ以上逃げ場がない。
「ちょ……ちょっと待って!こ、これはまだ早いと思うの!だって私たちまだ付き合ってもいないのに!」
「なら付き合えば問題ないよな」
「問題ある!大ありよ!」
「そうか?」
「……いや、気持ちはわからないでも無いけどさ、2人っきりだし狭いから密着しちゃうし綾小路くんだって男の子なんだから生理現象なのは分かるんだけど、それはそれとしてもうちょっと頑張って!?」
彼の視界の外に逃れつつそんなことを言い聞かせるよう大声で言う。それは逆効果だって分かって言ってるのに……慌てふためく私とは裏腹に、彼はハッキリとした口調でそれに応じる。
「綾瀬……先っちょだけでも頼む」
「綾小路くん…それは先っちょだけで済まないやつって相場が決まってるんだよ?」
「先っちょだけで良いから」
「先っちょだけとか言うのやめて!」
私はロッカーの中で見た。彼のズボンのチャックが限界まで上がっていることを……私はぶるりと身震いする。ヤバい、これはヤバいかもしれない。
「綾瀬……もう我慢出来ないんだ」
「いや、あの……その、ね?綾小路くん。落ち着こう?」
「俺は至って冷静だ」
「嘘つけ!!」
冷静だ、と言う彼の目はギラギラと肉食獣のように光っていてひぇ、と悲鳴をこぼしたくなった。こんなののどこが冷静なんだ、思いっきり欲情してるじゃないか!!
「いや待って、そもそも私なんかに欲情しないで、後悔するよ!?!絶対!!」
「綾瀬は自己評価が低すぎだ。綾瀬は可愛いし、俺は綾瀬に欲情する。これは自然の摂理だ」
「怖い、綾小路くんそんなこと言うキャラじゃないよね!?もっと大人しい地味な子でしょ!?ちょっと、いや割と真面目に貞操の危機っ!!!」
「先端だけ、先っちょだけでいいから……」
「それで先っちょだけで済んだ例ないんだよね残念ながら!!!そうやって言っておきながら乱暴する気なんでしょう!?エロ同人みたいにっ!エロ同人みたいに!!」
「先っちょだけで済む例があるかもしれないじゃないか」
「ないよそんなの!!」
この状態の綾小路くんなんか微塵も信頼出来ないもん!
「この…っ、私が優柔不断でずっとOK出せずにいるばっかりに図に乗ってるな!?堀北さん!堀北さんに言うからね!?綾小路くんに襲われてるー!!って!!?」
「……ああ」
そうか、とでも言いたげな表情で軽く頷いた。……う、嘘でしょ…
「脅しが通じない!?わ、分かった、そういうつもりなら平田くんに言うから!!!こんなことに巻き込むのは非常に申し訳ないけど私の貞操の危機だから許してね!?平田くんなら絶対綾小路くんを止めてくれるから!!」
「綾瀬……それで俺が止まるとでも?」
「……へ?」
「俺は止まらない」
そうハッキリと言い張った綾小路くんの目は真剣で……それが本気だと言うことが伺えた。…こんなところで真剣な顔して欲しくなかった……!顔だけ見ればカッコイイのにっ…
「綾小路くん、ちょっと待って?一旦落ち着こう、私は別に君とするのが嫌で拒否してる訳じゃなくてね、こんなところでするのが嫌なの」
「それは俺も同じ気持ちだ。でも綾瀬が可愛いのがいけないんだ。俺は悪くない」
「何その超理論!?綾小路くん、ちょっと冷静じゃなくなってない!?」
「綾瀬、もういいだろ?な?先っぽだけでいいからさ」
「い、いや!先っぽだけとか絶対嘘だ!!!」
どうしよう、真面目に貞操の危機である。初めてがこんなロッカーなんてそれは嫌だ、せめて別の所がいい。ど、どうしたらいい?どうしたら綾小路くんの正気を戻せる……!?混乱した頭でグルグルと考える。今思えば私のおかしい状況下に居て、綾小路くんの熱に当てられて正気じゃなかったのだ。だから、とんでもない答えを下してしまった。
「………わ、分かった!!!じゃあこうしよう!素股、素股ならいい!」
「すまた……?」
私はもうなりふり構っていられず、どうにか綾小路くんから距離を取ってそう提案した。
「わ、私の太ももに……綾小路くんのを、その……擦り付けるの」
「それは完全にセッ」
「違う!これはまだセッ……スじゃない!」
「……そうだな。まだセッ……」
もうダメだ。このロッカーは私と綾小路くん2人きりの閉鎖空間だ。逃げ場なんてどこにもありはしない。
「ギリだからね!?折衷案だから!」
「……まあ、生殺しは凄く精神にクるが……勘弁してやるか。満足感ないしな……」
何とか襲われることを拒否することに成功はした。しかし、綾小路くんの下半身は未だに臨戦態勢だ。
「じゃあ綾瀬……その太ももを貸してくれないか」
「う、うん。ど、どうぞ……」
私はソックスを下に下ろして太ももを晒す。スカートを少し捲り上げると、綾小路くんがゆっくりと私の太ももの上に彼のモノを擦り付けた。………っすー………………落ち着け、素数だ、素数を数えよう。
「……っ、綾瀬」「は、はい!?」「これは、思ったよりもヤバいな……っ!」
「そ、そう?それは良かった……」
もうダメだ。綾小路くん完全に理性がトんでる……
はぁ、と吐き出された吐息は色っぽくてこっちまで変な気になってしまいそうだった。
「綾瀬……悪い、ちょっと早くするな?」
「え、あ」
彼のモノが太ももを擦るスピードが上る。ああああ落ち着け私!!!!平常心だ平常心!!!!いや、こんな状況で平常心もクソもあるか!!!畜生!!なんでこんなことにっ…!
「んっ……あ、あやせっ……」
綾小路くんの吐息が荒くなり始める。私はもう何が何だか分からなくてぎゅっと目をつぶった。
「綾瀬っ……出る……っ!」
「ひゃっ!?」
そして太ももに熱いものが飛び散った。
「はあ、はあっ……悪い綾瀬。汚したな」
「う、うん……それはいいんだけど」
綾小路くんは射精後すぐに冷静になって自分のしてしまったことを後悔しているらしい、賢者タイムというやつだろうか。私はティッシュで太ももに付いた白濁液を拭っていく。
「その、なんだ……綾瀬」「な、何……?」
「これは事故だ。俺は悪くない」
「………うん、もう分かったから…気の迷いってことにしておくから」
「気の迷いというか、綾瀬が魅力的過ぎた……だな。綾瀬を視界に入れる度触りたくなってしまうんだ……どうしようもないこの欲情を堪えられる訳もなく今に至るという訳だ」
「……分かった、分かったからもういい……」
そのうっとり顔で愛を囁かないで欲しい。彼のピュアな言葉に悶えそうになる。向けられているものは全然ピュアではないが……まあいい、とりあえず貞操は守られたので気にしない。代わりに何かを失った気がするが、まぁそれはそれとして、だ。安心したようにホッと一息ついた時、
「綾瀬……もっと太もも借りたい」
彼はそんなことを言ってから熱の篭った視線をこちらに向けてきた。…どうやら、1回では足りなかったらしい。
「だ、ダメ!もう終わり!」「頼む綾瀬……もう1回だけ」
「しないよ!!これでも譲歩したの!もう絶対しないから!!」
「綾瀬、頼む。1回だけでいいんだ」
「い、1回って……その、1回って何を?」
「素股」
「絶対にダメっ!!」
私はロッカーの中で綾小路くんの魔の手から必死に逃げながら叫ぶ。この後結局、3、4回ほどされてしまい、駆けつけた堀北さんと綾小路くんの間で一悶着あったのだが…今の私はそんなことを知る由もなかった。
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