よう実
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■ようじょと王
「おいクソ女」
「ぬぐっ」
俺の声が届いた瞬間にはもう手が伸びていた。ぐいっと首根っこを掴んで引き寄せると、彩は猫みてえに目を丸くして俺を見上げてくる。
「ひどいよ〜龍くん。なにもそんな強引に引き寄せなくてもいいのにぃ」
「お前が勝手にどっか行かなきゃ引き寄せたりしねえ」
睨む代わりに、奴の柔らかそうな頬を片方ぎゅっと摘んでやった。
途端に「ぐぇ〜」なんて色気もへったくれもない声を上げやがる。俺が睨みつけてる意味、ほんとに分かってんのかコイツは。
「蝶さん飛んでたから、捕まえようと思って〜」
「子どもかてめえは」
ため息が洩れる。
竜胆 彩。俺のCクラスの不思議っ子。クラスの中でも、コイツは別格だ。
ガキみてえに小せえ体。制服を着ていなければ、小学生だと勘違いしているだろう。けど、こいつが笑って棍を振り回せば、アルベルトだろうが誰だろうが地面に這いつくばる羽目になる。
「……ったく、てめえには首輪を付けておいた方がいいか?」
「え〜、苦しいのはやだなあ」
飄々と笑って言いやがる。こいつの場合首輪を付けたとしても、引きちぎってどっか行きそうだからどうしようもない。利口な飼い犬になんてまるでなりゃしねぇ。
「蝶さんより龍園くんの方が好きだからさ、彩はちゃんと戻ってきたでしょ?」
「それを言い訳にすんじゃねえ」
頬を離すと、彩はにぱっと笑う。まるで犬が腹を見せて擦り寄ってくるみてえだ。
「なあ、彩」
「なあに〜?」
背中を叩いて促せば、彩は俺の横にぴとっとくっつく。うっとうしいがどこかに行かれるよりはましだ。
「お前今度どっかで消えたら、ほんとに鎖で繋ぐからな」
「ん〜……じゃあ、その時は美味しいお菓子ちょうだいね?」
「条件を増やすな」
俺の脅しが効いてんのか効いてねえのか、彩は空を仰いで、またひらひらと手を振る。
「龍くん、見て〜あそこにも蝶さんいるよ」
指差す先には、小さなモンシロチョウ。こいつにとっては、蝶も俺も同列か。
「行くなよ」
「わかってる〜」
そう言いながら、一歩踏み出して蝶を追いかける。が、その足はすぐに止まる。俺の視線に気づいて振り向くと、またへらっと笑った。
「龍園くん、怖い顔してると可愛い顔が台無しだよ〜」
「誰が可愛い顔だ」
「彩の方が可愛いけどね〜」
わざわざ両手を頬に当ててにやにやする。
こいつの頭の中は一体何で出来てんだか。面倒くせえが、使い勝手は悪くねえ。こいつを掌握してるのは、俺だけだって自負がある。 だからこそ、首輪でも鎖でも、冗談抜きで付けた方がいいかもしれねえ。
「彩、次は勝手に消えたら──」
「彩お腹空いた〜」
人の言葉を遮って、腹をさすって笑うこいつに、もう一度ため息が漏れる。
「お前な……」
「龍くんが買ってくれるなら、彩はお利口さんだよ〜」
「……ハッ、都合のいい奴だ」
それでも手を引いて歩き出せば、彩は素直についてくる。 この細い手首を掴んでいれば、どこかに消えちまうこともないだろう。
そう思いながらも、いつか本当に鎖で繋がないといけなくなるかもしれねえな、とため息をついた。
「おいクソ女」
「ぬぐっ」
俺の声が届いた瞬間にはもう手が伸びていた。ぐいっと首根っこを掴んで引き寄せると、彩は猫みてえに目を丸くして俺を見上げてくる。
「ひどいよ〜龍くん。なにもそんな強引に引き寄せなくてもいいのにぃ」
「お前が勝手にどっか行かなきゃ引き寄せたりしねえ」
睨む代わりに、奴の柔らかそうな頬を片方ぎゅっと摘んでやった。
途端に「ぐぇ〜」なんて色気もへったくれもない声を上げやがる。俺が睨みつけてる意味、ほんとに分かってんのかコイツは。
「蝶さん飛んでたから、捕まえようと思って〜」
「子どもかてめえは」
ため息が洩れる。
竜胆 彩。俺のCクラスの不思議っ子。クラスの中でも、コイツは別格だ。
ガキみてえに小せえ体。制服を着ていなければ、小学生だと勘違いしているだろう。けど、こいつが笑って棍を振り回せば、アルベルトだろうが誰だろうが地面に這いつくばる羽目になる。
「……ったく、てめえには首輪を付けておいた方がいいか?」
「え〜、苦しいのはやだなあ」
飄々と笑って言いやがる。こいつの場合首輪を付けたとしても、引きちぎってどっか行きそうだからどうしようもない。利口な飼い犬になんてまるでなりゃしねぇ。
「蝶さんより龍園くんの方が好きだからさ、彩はちゃんと戻ってきたでしょ?」
「それを言い訳にすんじゃねえ」
頬を離すと、彩はにぱっと笑う。まるで犬が腹を見せて擦り寄ってくるみてえだ。
「なあ、彩」
「なあに〜?」
背中を叩いて促せば、彩は俺の横にぴとっとくっつく。うっとうしいがどこかに行かれるよりはましだ。
「お前今度どっかで消えたら、ほんとに鎖で繋ぐからな」
「ん〜……じゃあ、その時は美味しいお菓子ちょうだいね?」
「条件を増やすな」
俺の脅しが効いてんのか効いてねえのか、彩は空を仰いで、またひらひらと手を振る。
「龍くん、見て〜あそこにも蝶さんいるよ」
指差す先には、小さなモンシロチョウ。こいつにとっては、蝶も俺も同列か。
「行くなよ」
「わかってる〜」
そう言いながら、一歩踏み出して蝶を追いかける。が、その足はすぐに止まる。俺の視線に気づいて振り向くと、またへらっと笑った。
「龍園くん、怖い顔してると可愛い顔が台無しだよ〜」
「誰が可愛い顔だ」
「彩の方が可愛いけどね〜」
わざわざ両手を頬に当ててにやにやする。
こいつの頭の中は一体何で出来てんだか。面倒くせえが、使い勝手は悪くねえ。こいつを掌握してるのは、俺だけだって自負がある。 だからこそ、首輪でも鎖でも、冗談抜きで付けた方がいいかもしれねえ。
「彩、次は勝手に消えたら──」
「彩お腹空いた〜」
人の言葉を遮って、腹をさすって笑うこいつに、もう一度ため息が漏れる。
「お前な……」
「龍くんが買ってくれるなら、彩はお利口さんだよ〜」
「……ハッ、都合のいい奴だ」
それでも手を引いて歩き出せば、彩は素直についてくる。 この細い手首を掴んでいれば、どこかに消えちまうこともないだろう。
そう思いながらも、いつか本当に鎖で繋がないといけなくなるかもしれねえな、とため息をついた。
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