修羅系乙女の鬼殺隊活動記録
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「……チッ、」
錆兎は一人、人気のない町を歩いていた。有永が、あのいけ好かない男と出掛けてしまった為である。
有永の質問に答えとき、嘘の匂いがわかる有永が、「嘘はついていない」と言っていたが、本当の事を全て言っているようには見えなかった。
あの男は、何かを隠している。
それは、錆兎にも容易にわかることだった。
恐らく、鬼に組みしている、若しくは関係している人間だ。有永は、それがわかっていて、錆兎を下がらせた。
確かに有永は、共闘が苦手である。有永が生み出した怒の呼吸は、数多ある流派のなかで、屈指の破壊力を誇るが、精密性に欠けているらしい。
荒々しいその刀は、周囲にあるものを尽く薙ぎ倒し、目の前の怨敵を打ち砕く。炎の呼吸の派生であるソレと合わせるには、炎の呼吸のことをよく知り、有永とともに炎の呼吸の修練をしていた煉獄杏寿郎ぐらいだろうか。
だが、錆兎は納得がいっていない。
確かに炎の呼吸は使えないが、俺だってもう丙だ。昔とは比べ物にならないぐらい強くなった。俺だって、有永と共に戦える。#名前の背中を護る事ができる。
男なら。男に生まれたのなら、惚れた女一人、護れなくてどうすると言うのだ
だが、有永は、決まって錆兎を自分の戦いから遠ざける。
それがどうしても歯痒くて堪らなかった。
__最初に行方不明になった人の家に行ってください。
取り敢えずは、有永に言われた通り、最初に行方不明になった蕎麦屋の娘の家に向かっている。何か手がかりがあれば良いのだが……
「ここか……」
寂れた店だ。確か、この店の親父さんは、山で獣に襲われて死んでしまったのだったか。そして一人娘まで消えてしまった。奥さんが一人残されているらしいが、
「もし、誰かいませんか」
「……どなた」
声をかけると、店の奥からか細い声がした。家の中は真っ暗で何も見えない。錆兎は、「娘さんの話を聞きに来ました」と告げると、その人は黙り込んだあと、そっと入り口の方まで出てきた。
「……鬼狩り様、ですか」
「! ご存知でしたか」
「はい、私は以前に救っていただいた事がありますので。……と言っても幼い時分の話です。主人や町の人は信じてくれませんでしたが……」
「娘さんのこと、聞かせていただいても?」
「ええ、ええ。全て、全てお話いたします……中にどうぞ」
店の椅子に座ると、奥さんはさめざめと泣きながら、向かい側に座った。
「娘は、娘は、
______鬼になってしまいました」
蕎麦屋の娘は、大層な別嬪でいつも男に言い寄られていたそうだ。だが、娘は『おとうとおかあが心配だから、嫁に行きたくないわ』と笑っていた。
仲のいい親子だった。
ある日、山菜を取りに父親と娘の二人で出掛けたときのこと。
彼女は、鬼になった。
「獣に襲われたと言って、血塗れで帰ってまいりました。主人は、はらわたが飛び出て、すでに事切れてましたが、娘が担いで帰ってきたのです」
それから、娘の様子が可笑しい事に気が付いた。
昼間は店の奥に引き籠もって、出てこなくなり、夜には隣の町へふらふらと出掛けていき、血の匂いを纏わせて帰ってくる。
「そしたら、小さい頃に会った鬼のことを思い出しました
藤の花の守り袋をそっと娘のいる部屋に置いておくと、凄い剣幕で私に詰め寄ってきて……」
余計な事をするな。殺すぞ。
そう、この世の物とは思えない声で言い放った。
それで確信を得た奥さんは、アンタは鬼になったのかと問うと、娘は、いつもの顔で笑った。『ええ。でも、おかあ。それを人に言ったら、おかあを殺してやるわ。きっと、おとうのように惨たらしく殺してやるわ』奥さんは、何も言えなくなり、娘の言う通りにする他になかったそうだ。
「そんなある日、あの男が現れました。春雷亭侘助。娘は、彼に恋をしました」
『私、きっと、あの人と結ばれるわ!!』
町から人が消え始めたのは、その頃からだそうだ。
「娘は、帰ってこなくなりました……ですが、この一連の事件は娘の仕業でございます……お願いします、お願いします……鬼に堕ちた娘を、哀れな私の子を、」
『あーあ、おかあ。話しちゃった。だめって言ったのに』
「!?」
幼子の声がどこからともなく聞こえ、錆兎は刀を抜いた。奥さんは、がたがたと震え出し、膝を付いて頭を抱えた。
『おかあは、殺したくなかったのに。なんで話しちゃうの? なんで侘様と私の恋路を邪魔するの?』
現れたのは、10歳くらいの女の子だった。
無邪気に笑っているが、その目の奥に光がない。
『あの女達もそう。私の侘様なのに。どいつもこいつも……人の男に手を出すなんて、はしたないったらありゃしないわ』
ぐりん、と首を傾げてソレは、奥さんを睨めつける。鋭い牙が生えた口を開き、延々と呪いの様な言葉を吐き続けた。
『おかあを始末したら、あの女よ。あの黒髪の綺麗な女。私の侘様と楽しそうにしてるわ。腹立たしい。浮気者の男を持つと苦労しちゃうわ』
「有永の、ことか」
『そんな名前なの? あの泥棒猫。 ふぅん。そうなのね。興味ないけど、大丈夫よ。骨も残らず食べたげ、』
水の呼吸 壱ノ型 水面斬り
すぱん、と頸を落とす。だが、鬼は消えずにケラケラと笑い始めた。
『無駄よ!! 無駄!! 私、本体じゃないもの!!』
ぼきり、ぼきりと音を立てて、鬼の身体が変形していく。胸から飛び出た肋骨は大きく逆方向に反り返り、蜘蛛の足のように地面につき、落ちた首は、逆さまのまま背骨の部分だった骨が拾い上げ、ぶら下がっている。
わけがわからない。この世の物とは思えぬその化物に、奥さんはただ身を震わせた。
『狭いわねぇ……』
ぼとぼとと、ナニカを落としながら、急速に接近してくる鬼に錆兎は、刀を振るうが、骨の部分が思いの外硬く、まるで歯が立たない。
奥さんを抱え、店の外に飛び出ると、それも追いかけて来た。
『外に出たら、見られちゃうじゃないの!!』
口ではそう言っているが、構うことなく突進してくる鬼をいなしていく。
「アンタ!! ここは俺が食い止める! この藤の花のお守りを持って、逃げろ!」
奥さんを逃げ出すのを見届けて、錆兎は、刀を振るう。
水の呼吸 弐ノ型 水車
なんとか硬い骨の一部を断つことが出来たが、また代わりの骨が出てきて、その部分を補い始める。
『この町は、もう駄目ね! 鬼狩りが来てしまったのだもの。なら、侘様を連れて町を出るしかないわね。ふふ、大丈夫よ私達なら。だって夫婦なのだもの。おとうとおかあのように手を取り合って、二人で生きていくの! 素敵なことだと思うわよねぇ!!』
「知るか!!」
砂を蹴り上げ、鬼の目に当たる
『ぎゃ、』
鬼は怯んだようで、目を瞑った。
水の呼吸 拾弐・・ノ型 荒波
ごうごうと荒れ狂う波のように、めちゃくちゃな斬撃が鬼を襲う。全ての骨が叩き斬られ、辺りに散らばるが、それでも止むことはない。
この技は、開発途中ではあるが、錆兎の生み出した技である。技を繰り出すためのタメが長く、相手にスキが無くては使うことができないが、一度発動してしまえば、逃れることが出来ずに、相手は寸寸になる。
(何故、拾弐ノ型なのかというと、兄弟弟子である義勇が開発途中の技が拾壱ノ型だった為である)
『ぎゃ、あ!ぁ!』
鬼の身体がばらばらと身体が崩れ落ちた。まだウゴウゴと蠢いているが、破片をくっつけることができずにいる。
錆兎は、胡蝶しのぶに試してほしいと言われていた、藤の花の香水のようなものをこれでもかというぐらい振り掛ける。すると、次第に動きが鈍くなり、消沈した。
「胡蝶に礼を言わなくてはな……、ぐっ!」
びきり、と体中に痛みが走る。まだ開発途中の拾弐ノ型を使った代償である。
体中の筋繊維に傷が付き、悲鳴を上げているようだ。
「……有永の元に、行かなくては」
だが、立ち止まっている暇はない。錆兎は、有永の元に急いだ。
「立派な寄席ですねぇ」
「そうだろう?」
有永は、侘助の噺が聞きたいと頼み込み、寄席に来ていた。もう誰も人はいない為、暗く、静まり返っている。
「一番前の席に座っていておくれ」
「はい、」
侘助は、舞台に上がると姿勢を正して座った。そして、綺麗にお辞儀をすると、懐から扇子を取り出して、ぱちぱちと音を立てて開閉し始めた。
「さて、別嬪に惹かれるというのは、男の性と言うものでして、馬鹿な男は、次から次へと別嬪に目移りしていくものでございます。花から花に渡り歩く蝶のようなものだと言えば聞こえは良いですが、__