雪花の負け犬
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勝った。眠り鬼、魘夢に。
列車は脱線したが、乗客達は後から目覚めた煉獄達が対処したようで、全員無事。
聖も少し体力を消耗したくらいでほぼ無傷。これなら、すぐに来る“次”にも備えられる。
「……少しだけ。少しだけ感謝してるんです。どうしても思い出せなかった、大切な人の……健彦の名前を思い出せて……」
灰になり、散っていった魘夢に向けて、誰にも聞こえないような声量で呟く。
鬼に感謝するなど、他の柱に聞かれたら怒られてしまうな。そう思いながら、煉獄達の方へ向かった。彼らも大きな怪我はないらしい。今は、列車内にいる乗客を救助しているようだ。
「……来た」
轟音とともに、ソレは飛来した。十二鬼月、上弦の参。赤い短髪。蒼白い肌には青い紋様が描かれている。
来た。来てしまった。煉獄を殺す鬼が。
雪の呼吸 壱ノ型 銀華の息吹
不意を打ち、猗窩座の膝下を低姿勢で薙ぐ。
猗窩座は、驚いたような顔をして咄嗟に脚を振り上げて聖を蹴ろうとした。
しかし、腿から上しか上がらず、綺麗な切れ口の足がパタリと倒れた。それにより、持つ片方の脚もズルリとズレて、倒れふす。
「……不意打ちとはな」
「これが僕の戦い方です。相手が鬼ならば、全力で討ち取るのみ。それがどんな卑劣な手でも、邪道でも。僕は、皆が思うほど高潔な人間ではないのです」
猗窩座は、瞬時に脚を付け、地に手をついて脚を振り、旋回するように蹴りを繰り出した。思っていた以上に回復が早い。2歩引いて、回避するが、ビッと顔布の下方が破れ、鼻から下が露出した。頬に一線が入る。
煉獄と炭治郎がこちらに走ってくるのが見える。
迫りくる拳をいなし、その風圧に乗って煉獄の所まで後退する。
「相手は、上弦の参。格闘技か何かに精通しているようです」
「そうか、」
猗窩座は、余裕気な笑みで其々の顔を一瞥していくと、ドンッ、と足音を響かせて一足で炭治郎に迫り行った。
「しまっ___」
炎の呼吸 弐ノ型 登り炎天
煉獄が二人の間に入り、猗窩座を斬り、手を縦に割いたが後ろに下がられそれ以上には至らなかった。裂けた腕は直ぐに癒着し、「いい刀だ」と余裕げに笑む。
「一番歳若い者から狙うとは理解できない」
「話しの邪魔になるかと思った。俺とお前達との」
「君と俺達がなんの話をする? 初対面だが、俺はすでに君のことが嫌いだ」
「そうか、俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫唾が走る」
馬鹿にしたような目で、炭治郎を見る。そして、聖と煉獄に視線を移した。
「俺と君とでは、物ごとの価値基準が違うようだ」
「そうか。では素晴らしい提案をしよう
__お前達も鬼にならないか?」
「ならない」「なりません」
馬鹿馬鹿しい提案だ。煉獄と聖は、一言で切り捨てたが、猗窩座は、得意気に続ける。
「見れば解る。お前達の強さ。柱だな? その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い」
「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ」
「……僕は冬坂聖、雪柱を務めております」
「俺は猗窩座。杏寿郎、聖。お前達がなぜ至高の領域に踏み入れないか教えてやろう。人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ。
__鬼になろう。杏寿郎、聖。そうすれば、百年でも二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」
不意にハッ、と聖が鼻で笑った。杏寿郎は、そんな聖に少し驚いたようだが、聖は構わずに口を開いた。
「言いたいことは、それだけですか?」
普段気弱な印象の聖だが、時折こうして毒を吐くように口元を歪めることがある。本当に稀であるし、平常ならその表情は顔布の下に隠れているため、かなり珍しい顔だ。
今は筋の通った鼻から口元まではっきりと見えているため、目元は分からないにしても、聖が苛立っているのは、よく見て取れた。
もちろん、聖を恋い慕っている煉獄でさえ初めて見る顔である。
「僕は、怒っているのですよ。貴方は僕の同胞を侮辱した。人の営みを侮辱した。人の命は限りあるからこそ美しい。諸行無常、盛者必衰こそ世の運命。それすらも解らぬような輩に、僕は従わない。鬼になどならない」
「よもや、……いや。聖の言う通りだ。人間は、老いるからこそ、死ぬからこそ__堪らなく愛おしく、尊いのだ」
煉獄と聖は、しっかりと猗窩座を見据えて言った。
「竈門さんは、弱くなんかありません。侮辱しないでいただきたい」
「何度でも言おう。君と俺達では価値基準が違う。俺達は、如何なる理由があろうとも鬼にはならない」
「そうか……」
術式展開 破壊殺・羅針
猗窩座の足元に雪の結晶のような紋様が浮かび上がる。聖は、刀を持つ手に力を入れ、上体を低くした。
「鬼にならないなら、殺す」
戦闘が、始まった。
列車は脱線したが、乗客達は後から目覚めた煉獄達が対処したようで、全員無事。
聖も少し体力を消耗したくらいでほぼ無傷。これなら、すぐに来る“次”にも備えられる。
「……少しだけ。少しだけ感謝してるんです。どうしても思い出せなかった、大切な人の……健彦の名前を思い出せて……」
灰になり、散っていった魘夢に向けて、誰にも聞こえないような声量で呟く。
鬼に感謝するなど、他の柱に聞かれたら怒られてしまうな。そう思いながら、煉獄達の方へ向かった。彼らも大きな怪我はないらしい。今は、列車内にいる乗客を救助しているようだ。
「……来た」
轟音とともに、ソレは飛来した。十二鬼月、上弦の参。赤い短髪。蒼白い肌には青い紋様が描かれている。
来た。来てしまった。煉獄を殺す鬼が。
雪の呼吸 壱ノ型 銀華の息吹
不意を打ち、猗窩座の膝下を低姿勢で薙ぐ。
猗窩座は、驚いたような顔をして咄嗟に脚を振り上げて聖を蹴ろうとした。
しかし、腿から上しか上がらず、綺麗な切れ口の足がパタリと倒れた。それにより、持つ片方の脚もズルリとズレて、倒れふす。
「……不意打ちとはな」
「これが僕の戦い方です。相手が鬼ならば、全力で討ち取るのみ。それがどんな卑劣な手でも、邪道でも。僕は、皆が思うほど高潔な人間ではないのです」
猗窩座は、瞬時に脚を付け、地に手をついて脚を振り、旋回するように蹴りを繰り出した。思っていた以上に回復が早い。2歩引いて、回避するが、ビッと顔布の下方が破れ、鼻から下が露出した。頬に一線が入る。
煉獄と炭治郎がこちらに走ってくるのが見える。
迫りくる拳をいなし、その風圧に乗って煉獄の所まで後退する。
「相手は、上弦の参。格闘技か何かに精通しているようです」
「そうか、」
猗窩座は、余裕気な笑みで其々の顔を一瞥していくと、ドンッ、と足音を響かせて一足で炭治郎に迫り行った。
「しまっ___」
炎の呼吸 弐ノ型 登り炎天
煉獄が二人の間に入り、猗窩座を斬り、手を縦に割いたが後ろに下がられそれ以上には至らなかった。裂けた腕は直ぐに癒着し、「いい刀だ」と余裕げに笑む。
「一番歳若い者から狙うとは理解できない」
「話しの邪魔になるかと思った。俺とお前達との」
「君と俺達がなんの話をする? 初対面だが、俺はすでに君のことが嫌いだ」
「そうか、俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫唾が走る」
馬鹿にしたような目で、炭治郎を見る。そして、聖と煉獄に視線を移した。
「俺と君とでは、物ごとの価値基準が違うようだ」
「そうか。では素晴らしい提案をしよう
__お前達も鬼にならないか?」
「ならない」「なりません」
馬鹿馬鹿しい提案だ。煉獄と聖は、一言で切り捨てたが、猗窩座は、得意気に続ける。
「見れば解る。お前達の強さ。柱だな? その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い」
「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ」
「……僕は冬坂聖、雪柱を務めております」
「俺は猗窩座。杏寿郎、聖。お前達がなぜ至高の領域に踏み入れないか教えてやろう。人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ。
__鬼になろう。杏寿郎、聖。そうすれば、百年でも二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」
不意にハッ、と聖が鼻で笑った。杏寿郎は、そんな聖に少し驚いたようだが、聖は構わずに口を開いた。
「言いたいことは、それだけですか?」
普段気弱な印象の聖だが、時折こうして毒を吐くように口元を歪めることがある。本当に稀であるし、平常ならその表情は顔布の下に隠れているため、かなり珍しい顔だ。
今は筋の通った鼻から口元まではっきりと見えているため、目元は分からないにしても、聖が苛立っているのは、よく見て取れた。
もちろん、聖を恋い慕っている煉獄でさえ初めて見る顔である。
「僕は、怒っているのですよ。貴方は僕の同胞を侮辱した。人の営みを侮辱した。人の命は限りあるからこそ美しい。諸行無常、盛者必衰こそ世の運命。それすらも解らぬような輩に、僕は従わない。鬼になどならない」
「よもや、……いや。聖の言う通りだ。人間は、老いるからこそ、死ぬからこそ__堪らなく愛おしく、尊いのだ」
煉獄と聖は、しっかりと猗窩座を見据えて言った。
「竈門さんは、弱くなんかありません。侮辱しないでいただきたい」
「何度でも言おう。君と俺達では価値基準が違う。俺達は、如何なる理由があろうとも鬼にはならない」
「そうか……」
術式展開 破壊殺・羅針
猗窩座の足元に雪の結晶のような紋様が浮かび上がる。聖は、刀を持つ手に力を入れ、上体を低くした。
「鬼にならないなら、殺す」
戦闘が、始まった。