雪花の負け犬
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お前みたいなやつを魔性と云うのだろうな。まったく、その気がないのなら手酷く振ってやれば良いだろうに。ああこれでは煉獄も報われないわけだ」
ネチネチと伊黒に絡まれている聖は、今にも死にそうな顔をしている。伊黒と出会ってから、もう半刻が経つ。それでもまだ説教が終わる兆しは見えない。
「そもそも、何なんだお前は。柱としての自覚が足りない。甘えているのか。どうなんだ」
「いえ、そんなつもりは」
「うるさい。口答えをするな」
「……はい」
ネチネチ、ネチネチ。最近柱になったばかりの聖にとって、先輩である伊黒の言葉を遮って、立ち去ることなどできない。 完全に詰みの状態である。
「煉獄が可怪しくなったのは、朗らかにお前が原因だろう。ならば責任を取るべきだと思わないのか。それなのにお前は只逃げ回るだけ、はぐらかすだけ。曖昧な態度でいるから、煉獄も諦められないのだ」
「…………」
「おい、何か言ったらどうなんだ」
うるさいと言ったり、何か言えと言ったり。一体全体どうしろというのか。
まだ伊黒は、聖の顔を見たことが無いため、どうして煉獄が聖に惚れ込んでいるのかは見当が付かない。だが、男相手にもじもじとするらしくない煉獄は、見たくない。それに対しておどおどとするばかりで、煉獄を袖にしているこの冬坂聖も気に食わない。嫌ならさっさと振ってしまえ。
「カァアァッ!!! 任務!! 任務デアル!!」
沈黙を打ち破ったのは、聖の鎹烏(聖はカー君と呼んでいる)だった。伊黒は舌打ちをする。
「行クゾ!! ハヤクシロ!! カァーッ!」
「う、うん、カー君……じゃあ伊黒さん、僕はこれで……」
「……ああ」
「カー君、それでどこへ向かえばいいの?」
「甘味屋デアル」
「え?」
「任務トハ、甘味屋デ ワタシニ餡蜜ヲ食ベサセルコトダ!!」
カァッ! と茶目っ気たっぷりに鳴いて、学生帽の上に留まる。どうやら、なかなか話の終わらない伊黒から逃がしてくれたようだった。伊黒さんには悪いことをしたと、少しだけ気に病むが、助かったことは事実上だし、得意げな相棒がクルクルと喉を鳴らしているので自然と笑みが溢れる
「ありがとう、カー君」
「ナンノコトダカ」
約束通り甘味屋に行って餡蜜を買う。流石に軒先で烏に餡蜜を上げるわけには行かないので、後で器は返すと約束して、人目の目立たない所へ移動する。カー君は嬉しそうに餡蜜を食べ、綺麗に完食すると満足気に飛び立っていった。
「こんなとこにいたのか」
「へ」
「俺の烏が、近くにお前がいるから共に鬼を殺しに向かえと。はて、お前は任務に行ったのでは無かったか? 俺の勘違いか? なぜこんなところでコソコソと甘味を食べている? 道中で説明してもらおうか、冬坂」
振り向いた先には、怒り心頭と言った様子の蛇柱が立っていた。腕を掴まれ(肘の関節を固定されている)無理矢理連れ出される。その間もネチネチと小言が絶えることなく続く。カー君はと言うと、知らん顔して頭上を旋回している。
小言は、道中から、鬼を倒し終わるまで続いた。
「ふん。他愛なかったな」
「そうですね……じゃあ僕はこれで……」
「待て」
「……はい」
「さっきの甘味は美味かったか」
また厭味か? 布の下の頬を引き攣らせて「おいしかった、ですよ?」と答える。(自分は食べていないが、カー君が美味しそうにしていた)
伊黒は、「そうか」とだけ言ってすたすたと歩いていってしまった。
何だったんだろう。
後日、甘露寺と産屋敷邸で会ったときに聞いたのだが、どうやら二人であの甘味屋に行ったらしい。
嬉しそうに話す甘露寺が
「今度、聖君も一緒に行こうね!」
なんて言うものだから、その後ろにいた伊黒に睨まれた。
解せぬ。
ネチネチと伊黒に絡まれている聖は、今にも死にそうな顔をしている。伊黒と出会ってから、もう半刻が経つ。それでもまだ説教が終わる兆しは見えない。
「そもそも、何なんだお前は。柱としての自覚が足りない。甘えているのか。どうなんだ」
「いえ、そんなつもりは」
「うるさい。口答えをするな」
「……はい」
ネチネチ、ネチネチ。最近柱になったばかりの聖にとって、先輩である伊黒の言葉を遮って、立ち去ることなどできない。 完全に詰みの状態である。
「煉獄が可怪しくなったのは、朗らかにお前が原因だろう。ならば責任を取るべきだと思わないのか。それなのにお前は只逃げ回るだけ、はぐらかすだけ。曖昧な態度でいるから、煉獄も諦められないのだ」
「…………」
「おい、何か言ったらどうなんだ」
うるさいと言ったり、何か言えと言ったり。一体全体どうしろというのか。
まだ伊黒は、聖の顔を見たことが無いため、どうして煉獄が聖に惚れ込んでいるのかは見当が付かない。だが、男相手にもじもじとするらしくない煉獄は、見たくない。それに対しておどおどとするばかりで、煉獄を袖にしているこの冬坂聖も気に食わない。嫌ならさっさと振ってしまえ。
「カァアァッ!!! 任務!! 任務デアル!!」
沈黙を打ち破ったのは、聖の鎹烏(聖はカー君と呼んでいる)だった。伊黒は舌打ちをする。
「行クゾ!! ハヤクシロ!! カァーッ!」
「う、うん、カー君……じゃあ伊黒さん、僕はこれで……」
「……ああ」
「カー君、それでどこへ向かえばいいの?」
「甘味屋デアル」
「え?」
「任務トハ、甘味屋デ ワタシニ餡蜜ヲ食ベサセルコトダ!!」
カァッ! と茶目っ気たっぷりに鳴いて、学生帽の上に留まる。どうやら、なかなか話の終わらない伊黒から逃がしてくれたようだった。伊黒さんには悪いことをしたと、少しだけ気に病むが、助かったことは事実上だし、得意げな相棒がクルクルと喉を鳴らしているので自然と笑みが溢れる
「ありがとう、カー君」
「ナンノコトダカ」
約束通り甘味屋に行って餡蜜を買う。流石に軒先で烏に餡蜜を上げるわけには行かないので、後で器は返すと約束して、人目の目立たない所へ移動する。カー君は嬉しそうに餡蜜を食べ、綺麗に完食すると満足気に飛び立っていった。
「こんなとこにいたのか」
「へ」
「俺の烏が、近くにお前がいるから共に鬼を殺しに向かえと。はて、お前は任務に行ったのでは無かったか? 俺の勘違いか? なぜこんなところでコソコソと甘味を食べている? 道中で説明してもらおうか、冬坂」
振り向いた先には、怒り心頭と言った様子の蛇柱が立っていた。腕を掴まれ(肘の関節を固定されている)無理矢理連れ出される。その間もネチネチと小言が絶えることなく続く。カー君はと言うと、知らん顔して頭上を旋回している。
小言は、道中から、鬼を倒し終わるまで続いた。
「ふん。他愛なかったな」
「そうですね……じゃあ僕はこれで……」
「待て」
「……はい」
「さっきの甘味は美味かったか」
また厭味か? 布の下の頬を引き攣らせて「おいしかった、ですよ?」と答える。(自分は食べていないが、カー君が美味しそうにしていた)
伊黒は、「そうか」とだけ言ってすたすたと歩いていってしまった。
何だったんだろう。
後日、甘露寺と産屋敷邸で会ったときに聞いたのだが、どうやら二人であの甘味屋に行ったらしい。
嬉しそうに話す甘露寺が
「今度、聖君も一緒に行こうね!」
なんて言うものだから、その後ろにいた伊黒に睨まれた。
解せぬ。