⑴出会い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
- 数日後 -
「はは、またあの失礼なやつに会いたいなんて私、何考えてるんだろう」
自傷気味に乾いた笑いが出る
話にならない上司では埒があかないと思い、私は今ここホークス事務所の前に立っている
目の前に建つ立派な事務所をまじまじと見ると嫌でもあいつがプロヒーローなんだと自覚する
なんでも仕事が立て込んでいるらしく用事があるなら事務所まで来て欲しいと上司伝いに連絡を受けた
性格は最悪だけど彼は一応NO.2ヒーローだ
意を決して大きな入り口から中に入る
サイドキックらしいヒーローのお姉さんに親切にしてもらい、応接室みたいな部屋に通される
私みたいな小娘一人には手厚過ぎる来客対応で緊張する
フカフカのソファに腰を下ろして目の前に出されたちょっと高級そうな茶菓子をこのまま手をつけずに残してしまうのも失礼かとゆっくりと茶菓子に手を伸ばして口に運んだ瞬間、扉が開いた音と間延びした声が聞こえた
「すみませーん、お待たせしました」
初めて会った時の黒いスーツ姿ではなく、テレビでよく見るヒーロースーツを着た彼を見て悔しいけど本物のヒーローだって少しだけ胸が高鳴った
「あ…………」
ちょうど茶菓子を口にした瞬間だったので今の私の姿はひどく間抜けだ
「めちゃめちゃ寛いでますね〜」
また会って早々に彼は鼻で笑ったような反応を見せて話しかけてくる
「いや、これは………」
さすがにこれは恥ずかしさが込み上げて慌てて机に食べかけの茶菓子を置いてみる
「いやいや。冗談ですよ。お菓子好きなんですか?もっと持ってきます?」
彼はブハッと豪快に笑って私の正面に座った
まだ彼と会ったのは二回目だけど今日の笑顔は、初めて会った時のような小馬鹿にした笑みじゃない気がした
なんだか今日は不快な感じはしない
流石に追加の茶菓子は遠慮したけど今なら落ち着いた気持ちで話せるような気がして私はゆっくり、なるべく丁寧に話を切り出す
「あの…先日のお話なんですけど、貴方が私を気に入ったってご連絡を貰いまして…。何かの間違いだろうなって一応確認に来たんですが」
おずおずと切り出した内容に自分でもなんだか気恥ずかしい気持ちになる
「俺がアンタを気に入ってるって聞いてわざわざ確認にきたんですか?」
彼は少しだけ驚いたような反応を見せる
「いや、だから!間違いですよねって確認です!!!」
なんだか私が自惚れているような言い方をされて少しだけ声を荒げてしまう
それでも私の反応を全く気にしていない彼は初対面のときから少しも変わらない
彼は少しだけ考えるような素振りを見せたけど納得したように話し始めた
「うーん。それってさ〜、間違いっていうか正解も不正解もないって感じじゃない?」
全く意味が分からない
ポカンとしてる私を見て彼が、つーまーりーとわざとらしくトントンと机を叩いて言葉を続けた
「アンタは何も知らないのかもしれないけど、この問題はもう俺たちの意思でどうこうできる話じゃないってこと。」
「…と、言いますと?」
もう少しわかりやすくお願いしますの意味も込めて先を促してみたけど彼は察しがいいらしい
「俺はアンタを気に入ってるなんて一言も言ってないし、多分アンタも俺を好ましく思ってない。でもお互いにお互いが気に入ってるって連絡が来てる。俺はアンタが俺を気に入ってるって聞いたけど?」
「………はい?」
間抜けた自分の声が随分大きく聞こえた