事件編【File1~10】
おはなしを読むためのお名前変換はこちらから
おはなし箱内全共通のお名前変換「夢語ノ森」では基本、おはなしの中で主人公の娘っこの性格や年齢を書き綴っていく形にしていますが、特別設定がある場合もございます。
そういったおはなしでは説明頁の設置や特記事項がありますので、ご参考までにどうぞ。
当森メインの夢創作を楽しめますよう、先ずは是非、井宿さんにお名前を教えていって下さいませ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「携帯電話って…使いやすいですか?」
「「「「「「「…うーん…」」」」」」」
バイトの合間の、昼の食事休憩の一時。
華音が問い掛けた質問に、美朱と唯を除いた全員からは、曖昧なのにも関わらず一致した反応が返ってきた。
「…華音も携帯持つんか?」
「はい。父が進級のお祝いとして買ってくれるみたいなので」
「良いなぁ、携帯。あたしもお母さんに頼んでみようかな~」
「あたしも高校を卒業するまでには欲しいって思ってるんだよね」
「…でも、私…あっても使いこなせる自信がない…です」
「慣れれば問題ないのだ?」
オイラたちでも使えているのだから…と、芳幸の言葉に真意は見出せなかったが、あまり深くまで考えずにいた。
それよりも何より、自分が携帯電話を持つという事の方が問題なように感じられて、即座に思考が切り替わった。
「慣れ…の問題だけなら良いんですが…」
「…だ?何か他に問題でもあるのだ?」
「……私…機械にはめっきり疎くて…。自分でも一番参ったのは、学校の授業でパソコンを使った時に…何故かエラー画面ばかりが表示されて…授業になりませんでした」
「華音…あんた、相当の機械音痴?」
「…何とでも言って下さい。家でも父も母も…姉も、真新しい機械は特に、私一人では一切触らせてくれないほどですから…十分に自覚はしています」
その時々での自分の失敗が思い出され、込み上がってきたもやもやした気持ちを紛らわすように、お茶を一口含む。
「珍しいわね。お嬢様はご機嫌ななめかしら」
「…機嫌を損ねた顔も可愛いのだね?」
頭を撫でられる感触に、今し方抱いた気持ちなど一瞬にして掻き消えてしまい、今度はいつもの如く恥ずかしさを抱く事となった。
「そんな不安なら、無理して持たんくてもええんとちゃう?俺かて仕事の事がなかったら携帯を持とうなんぞ思わんかったしな…」
「…もしもの時の為に持っておいた方が良いだろうからって父が言うので…――それに、父とお姉ちゃんが…芳幸さん…たちに教えてもらえれば、覚えも早いんじゃないかって…」
翼が話を戻してくれた事から、家族間で携帯電話の話題が上がった時の話をして皆の反応を窺う。
「で、でもっ、皆さんお仕事あるし……やっぱり携帯電話はもう少し考えて――」
「オイラは構わないのだ」
「あたしも構わないわよ~。何なら、日替わりで華音の為のミニ講座でも開く?」
「柳宿さん、それ良いかもしれませんね。僕も良ければ力になりますよ」
「俺も教えたるっ!この翼宿様に任せぃっ…!」
「…おい、翼宿大丈夫かよ…」
「唯ちゃんっ、あたしたちも携帯電話を持てるように頑張ろうっ!」
「う、うん?何を頑張るか良く分かんないけど…」
恐縮する思いで肩を竦めつつ立て続けに口を開いた華音に、芳幸、花娟、素煇、翼の四人が率先して話しに賛成の意を示してくれた。
使い方を教えて貰える事となり、ほっとしたのも束の間。
華音は頭を悩ませなければならない日々に身を投じる事になるのだった。
**§**
「説明書も持って来て頂けましたか?」
携帯電話が華音の手元に来て数日後。
事務所の応接席の一番奥側を拝借して、手始めとなる初日は素煇からの説明を受ける事となった。
「買った時の袋のまま持ってきたけど…良かった?」
「大丈夫ですよ。その方が全部揃っていると思いますから確実です」
まずは電源の操作から覚えましょう、との素煇の言葉を受け、恐々と購入時にショップ店員が電源を入れてくれた携帯電話を袋から取り出す。
華音の手元に収まるのは、折りたたみ式の細身な携帯電話。
パールがかったオフホワイトを基調としたそれは、見る角度によって綺麗な虹色の輝きを放つ。
縁には銀色があしらわれており、華やか過ぎず、シンプルなデザインのものだ。
電源を操作する為のボタンと電話を受ける時に操作するボタン。
とても良く似ているそれらの二つのボタンは、早速華音を混乱させる種となった。
「種類によっては、ボタンに電源と記されているものもあるんですが、この機種は違うみたいですね」
「そうなの…?」
「でも大丈夫です。ボタンに書かれた絵のままに覚えると覚えやすいと思います」
――受話器を置いてある形と受話器だけの形の電話の絵があるでしょう?と、素煇が指し示す部分を見てみると、確かに二つの絵が存在していた。
なるほど、素煇の言う様に覚えれば、頭に入りやすいかもしれない。
「素煇くんって、人への教え方が凄く上手なのね。家庭教師とか出来そう」
「…えっと…実は、どういう訳かそういう仕事も舞い込んできたりするんです。誰かがつい漏らしてしまったんでしょうかね。好きな事を仕事に出来るのはとても有難い事ではあるのですが」
最近は特に件数が多くて…と、困った表情を浮かべながらも何処か嬉しそうに笑む素煇。
彼は華音よりも年下ではあるが、高いIQを持ち合わせている事から学校には通っていないらしい。
寿一と言い、素煇と言い、とても優れた人材ばかりが揃っている探偵事務所なのだと感心せずにはいられなかった。
こんな事を思うのは少々大げさかもしれないが…。
そんな彼らとこうして関わりを持っていられる事さえも、貴重な人生の一部なのかもしれないという気がしてきて、少しでも時間を無駄にするまいと、華音は意欲的に目の前の事に取り組むのであった。
**§**
「…華音。あんたねぇ…」
花娟が命名した“華音の為の携帯電話講座”なる、二回目。
講座の時間が始まりを見せて15分程経った辺りから、両手を使い、もたもたと操作をし続けている華音の姿を前にして、本日の講師である花娟が額に手を当てて溜め息を漏らす。
「両手でやろうとするから余分なボタンを押すのよ。片手でやりなさいよ、片手で」
「…す、すみませんっ。でも、落としたらと思うと恐くて両手になってしまって…」
「携帯なんて誰でも一度は落とすもんでしょうに。――ねぇ、井宿。この子、こんなに不器用な子だった?ピアノはあんなに器用に弾けるのに。どうしてこうも携帯一つで四苦八苦してるのか不思議で仕方ないんだけど…」
「ピアノは好きな事だから何も問題はないのだ?機械は相当に苦手なようだが…」
くすくす…と笑いを響かせる彼に反応を示す余裕など、それこそ華音にはなかった。
数字の入力が儘ならず、先程から冷や汗ばかりが流れていく。
その為に余計に気持ちが焦る上に、手元も滑るという悪循環である。
「…か、花娟さんっ…助けて下さい…また変な所を押してしまいました」
「そういう時は、一度電源ボタンを軽く押してやり直すのよ。軽くよ軽く。長押しだと電源が切れるから」
「はい…あ、出来ました」
「さぁ、どうしたもんかしらね。このまま入力の練習をしてても堂々巡りになりそうだし…。なーんかいい方法はないかしらねぇ~」
「……おい、たま、お前何しとんのじゃ」
急にガサゴソという物音がし始めて、花娟と共にそちらを見やると、魏が翼宿に声を掛けられる事を気にも留めず、無心に彼自身のデスクの引き出し内を掻き回していた。
「また金でも探しとんのか…?」
「ちげーよ…確かあった気がすんだよなぁ…おっ、これだこれ。美朱から前に貰ったシール」
「シールぅ~?」
「俺、良い事思いついたんだよ、華音ー♪」
探していたらしい、その美朱から貰ったというシールを片手に、魏が機嫌よく華音と花娟がいる応接席へと歩み寄ってくる。
「これな、美朱が、良かったら何かの色分けにでも使って、ってくれたやつなんだ。七色+一色で全部で八色あるんだけどさ」
携帯貸してみ?と、魏に促されて彼へと手渡す。
魏は華音から受け取った携帯電話を開いた状態で机へと置き、華音の事を魏と携帯に近い所――テーブルの端へ呼んだ。
「シール、携帯に貼ってもいいか?」
「はい」
ソファーの端まで移動した華音は、可愛らしい小さな花の形をしたデザインのシールを見て躊躇することなく彼の問いに頷いた。
「数字のボタンは、今から皆の領域だ」
「…皆の領域…?」
「まぁ見てろって。まずは1のボタンに水色の花のシール…井宿、芳幸のスペースな。次の2は…華音の身体の事を気にかけてくれてる軫宿か?寿一の領域、緑色の花。3に白の花、唯のスペースにしとくか。
4も白色で、こっちは美朱な。5は柳宿…花娟、紫の花を貼っとこう。6は星宿様…賁絽所長の黄色の花だ。7に張宿…素煇のピンク。8に赤色で俺のスペースっと。9はオレンジ色、翼宿…翼。で、0は華音、お前の白色。
これでそれぞれの領域が出来たわけだ。間違って二つ同時に押したりすんなよ?皆一人ひとりのスペースだから」
「へぇー、良いじゃない。花のシールで場所の目印になるし、これなら華音でも使いやすくなるんじゃない?」
魏の説明には脱帽する思いで納得にしか至らず、言葉もなく首を縦に振る。
「だろォ~?あ、数字は別に華音の中での皆を順位付けしたわけじゃないからなっ。あくまで分かりやすくする為のもんだから、気ぃ悪くすんなよ」
「大丈夫です」
「ってなわけで、講義料100円。シールは美朱からの貰いもんだし、仲間のよしみでただに――」
「魏ー?あんたのずーっと後ろで井宿が笑いながら睨んでるけど?」
「…だよなぁ?ははは…どうりで悪寒が…。じゃ、華音、後も頑張れよ!」
一度は華音に向かって出した両の掌を引っ込めて、魏はそそくさとデスクへと戻って行った。
「何でお前が先で俺が最後なん?」
「あ?あぁ、数字の場所か?だって翼宿、華音をからかって困らせてばっかだろ?俺の方がポイント高いに決まってんじゃんか」
「俺だけやないっ、柳宿かて華音の事いつもからかっとるやんけ!っちゅーか、順位付けしたわけやない言うてポイント制はおかしいんとちゃうっ?」
デスクに戻った先で、魏と翼との間で交わされている会話を耳にしながら、魏が言ってくれた言葉たちを忘れないようにしっかりと頭に刻んだ。
**§**
講義三回目は翼が教えてくれるようだ。
今日は何をするのかと緊張気味に彼の言葉を待つが、いくら待てども彼から切り出される様子はない。
「…あ、あの…」
思わず不安になって華音が口を開くと、翼は頭を掻いて言葉を紡いだ。
「あぁ、すまん。何しようか考えとった。えーと?…なぁ、華音に何教えればええん?」
「そんな事じゃないかと思ったわよ」
「電話の掛け方までは柳宿さんが教えていたので、電話帳の呼び出し方とかでしょうか」
「よっしゃ。電話帳の登録はしたんか?」
「…自宅と事務所と芳幸さんの分は花娟さんと何とか…」
「ほなら俺のも登録して、試しに掛けてみ」
素煇から指示を貰い目的が明確になった為か、早速と言わんばかりに華音へと行動を促してくる。
「…はい。やってみます」
翼の電話番号らしい数字が書かれた紙を差し出されて、それと携帯とを睨めっこしながら一つずつ、番号を間違えないよう丁寧に入れていく。
「…私…翼さん…私……えっと、次は芳幸さんで……」
「……華音。それ、意味知らん奴が聞いたらおかしい奴かと思われるで。此処だけにせぇよ」
魏に教えて貰った方法で実践に取り組んでいた華音だったが、翼から掛けられた声にはっと我に返り、顔を上げて翼の方へ視線を移す。
「…声に…出てました?私…」
「思いっきり出とるがな。ぶつぶつどころやないで」
無意識に呟いていた事を指摘され、頬を赤められずにはいられない。
だが、その熱はすぐ冷める事となった。
この一瞬の間に携帯の画面が真っ暗になっていて、慌てて翼に画面を見せるように突き出す。
「つ、翼さんっ…大変です、画面が消えてます…!私、何かしました…っ?」
「…エコモードになっただけやん…お前おもろいな。見てて飽きひんわ」
「…エコ?そういえば花娟さんにも言われたような…――あっ」
「今度は何や」
「……最初からやり直しです。芳幸さんのボタンを余分に押してしまいました…」
何度かやっている作業でも…魏が提案してくれた方法でも、何をやろうとも思うように上手くいかず項垂れていると、くくっと笑いが漏れたのが聞こえて視線をそちらへ移す。
「も、もうあかんっ……華音が真剣やから堪えとったけどあかんわっ。堪忍せぇ…っ」
腹部を抱え込んでまで笑い出す翼に、どういった反応を取れば良いのかついと悩んでしまう。
そんな華音を離れたデスクから見ていたのか、いつの間にか芳幸が傍らに立っていて、翼へと咎めるような視線を投げかけていた。
「…翼宿。オイラが変わる。それにそろそろ時間なのだ?君はこの後、軫宿と魏と仕事に出る予定が入っているのでは?」
「おぉ、せやった。時間が予定よりも早まったんやった。っちゅうわけですまんな、華音。後は井宿に教えてもらい」
「ありがとうございました」
「おぅっ」
翼と入れ替わり芳幸が応接席の向かいへと座る。
そういえば、こうやって芳幸と向かい合わせに座る事は滅多にないか。
今存在する空間は、周りの環境から、学校の面接の風景を思わせる。
そんな風に思考を巡らせていたら、妙な緊張感を覚えて芳幸の顔を直視する事が出来なくなってしまった。
ドキドキ…と胸まで異様なくらいに高鳴ってくる。
「華音?」
「は、はいっ…」
「…何を考えていたのだ」
大げさな程に上ずった声で返事をしてしまった為に、違う所に意識を向けていた事はどうやらお見通しのようだ。
嘘を吐くような話でもなく、素直に考えていた事を口にする。
「え、えっと…芳幸さんとは隣同士で座る事が多いので、面と向かって座ると面接のように思えて…」
「…そうなのだね。華音となら別に向かい合う必要もないか…」
芳幸はそう言うと、一度落ち着けた腰を浮かせて華音の隣へ移動してくる。
声色を変え、ぴたりと隙間がない程に華音に寄り添ってきた。
「…あ、あの…芳幸さん…近く…ありませんか…っ?」
「一つの携帯を二人で覗かなければいけないのだから、このくらいでちょうどいいだろう?」
何故、彼は真剣モードに入っているのか…。
いや、確かに携帯電話の使い方を学ぶのだから、真剣な勉強の一つであるとは思うが。
普段以上にここまで真剣になる必要があるだろうか?
「華音。今日の勉強を頑張ったらご褒美をあげるのだ」
耳元で響く低音の声。
こんな彼…見た事ない。
優しい雰囲気は変わらずに存在しているというのに、微笑みは一切浮かべず、彼の瞳が華音の瞳を捉えて離さない。
「…ご褒、美…?」
「そう。きっと華音が喜んでくれるだろう事」
秘密…とでも言うように、華音のものよりも長く骨張った人差し指をピ…と唇の前で立て、華音の唇にもそっと押し当ててくる。
トクン、トクン…。
いつもとは異なる芳幸の言動に、彼にまで聞こえてしまうのでは…と心配する程に早く大きく高鳴る鼓動が耳につく。
「…が、頑張ります」
そこで漸く芳幸の口元がふっ…と綻んだ。
「では、今までの復習として、まずは翼宿の番号の登録を最後まで頑張るのだ」
「…はい…」
好きな人と行う勉強というのは、嬉しい反面でどうも集中力を長く保持する事は難しい…それを実感せざるを得ない状況に陥るまで、然程の時間はかからない―――…。
**§**
携帯電話の基本的な操作を学び、一通りの講座も何とか無事に終えたその日の夜。
あとは眠るだけとなった時間を待っていたかのように、勉強机として使用している机の上に置いておいた携帯電話が音を発した。
「…えっ?で、電話…?」
今日、芳幸と一緒に、電話帳に登録してある番号を呼び出して電話をかける事は覚えたが、実際に電話が掛かってくるという事は携帯を購入してからこれが初めての事だった。
携帯電話の――確か、サブディスプレイ画面という名称だったか――その部分に“沢井芳幸”の文字が表示されているのを見た華音は、慌てて携帯を手に取る。
「…えっと……芳幸さん…少し待ってて下さいっ…」
こういう時、落ち着かなければ自分は余計にミスをしてしまう事も講座中に嫌という程学んだ。
深呼吸をして今までに教えて貰った事柄を懸命に頭に巡らせる。
手始めに携帯電話を開け、通話ボタンと記憶しているボタンを確実に押してから耳へと携帯の上部を当てた。
『…およそ一分半。華音にしては早い方か。良く出来たのだ』
「は、計っていたんですか…」
電話を受け取れた事に安堵しつつ、聞こえてくる声に答える。
『一応の目安を知りたかったから計らせて貰ったのだ。ちゃんと自分で出られたのだね?』
「…お姉ちゃんに頼ると思ったの…?」
『あまり気持ちが急く様なら、そういう場合もあるかとも思ったのだが…落ち着いて出来たのだ。やれば出来るのだ、華音は』
彼の顔は見られないというのに、声だけでも電話先で微笑んでくれているのだろうという事が何となく分かる。
熱くなった頬を、携帯電話を持つ手とは反対の手で抑えた。
「…お仕事…お疲れ様です」
『華音も勉強頑張ったのだ』
「これがご褒美ですか?」
『喜んで貰えたのだ?』
「はい。眠る前にも芳幸さんの声が聞けて幸せです」
一瞬の間があった後、くすくすと笑い声が華音の耳を擽る。
『電話だと表情が見えないのが残念なのだ。とても素直なのだね?』
「…そ、そうでしょうか…?」
顔を合わせている時よりも、確かに少しは恥ずかしい気持ちは紛れているかもしれない。
…とは言っても、言葉がスムーズに出ないのはいつもと同じであるわけだが。
そのまま間が空いてしまい、互いに声だけなのだからと、何かしらの言葉を紡ごうと華音が口を開きかけた時だった。
ピピピピピッ―――…。
突如、携帯から目覚まし時計のアラームのような機械音が発せられて、驚いて耳を離す。
「…えっ、何…?」
『…華音?』
何かを知らせるように繰り返し鳴り響く音の向こう、芳幸が喋っていても申し訳ないがそれどころではない。
「どうしたら止まるのっ?――お、お姉ちゃんっ…!」
華音にとっては一大事。
一体何が起きているのか分かりかねて、結局のところは姉に助けを求める事を避けられずに慌てて自室を飛び出した。
充電が切れた事が原因だった事。
電源が完全に切れてしまうまでは、華音の慌てぶりが芳幸に全部筒抜けであった事。
それらは後に、姉の溜息と芳幸の心配顔とで語られ、明らかになった事実。
芳幸からの褒美を自ら無駄にしてしまった…と、酷く後悔する華音の姿が週末の朱雀探偵事務所に在ったらしい。
**§****§****§**
主人公にとことん苦手なものを作ろう!
と考えたら、こうなりました(笑)
くど過ぎるくらいだったらすみません…汗
七星士さん方、皆さんガラケーですが、管理人もガラケーの方が好きです。文明は進歩しましたね…(遠い目)
今後の物語の展開的に携帯の話が欲しかったので、一つ此処で盛り込んでみました。