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Vestige

いつしか貴方は私の知らない外の世界を教えてくれた。

でも細部までは分からない。

ただ恵まれて望まれている理想郷アルカディアという事だけ。

人々に望まれている世界。

私も望んでもいいのだろうか。

私の想像でしかない理想郷。

貴方は問題ない。良い。と寂しげに俯く。

哀愁漂う儚くも美しい顔で。

その日から昼間は想像の世界を生きた。

貴方はその世界を好んだ。

私の理想郷を。

私は実の外を知らない。

理想郷の高い空を、ただ指でなぞる事しか出来ない。

貴方も私となぞった。

ぼやける形を指でうっすら綴っていくように。

だから、貴方がその理想郷を諦めたら、それでもう終わり。

跡形もなく消える。

縋りが失くなる。

また貴方は鬱げに微笑む。

(すき)

私はそう思った。

すき…とはなんだろう。

すき…はどんな感情?

思う言葉は私の…理想?

意味は?

戸惑う私。

貴方はふわふわ笑う。

「ありがとう」

その言葉を残して。
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