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Vestige

その日から何日、何月経っただろう。

貴方は毎日丑三つ時に来る。

そして貴方は毎回言う。

「やがて世界は滅し、ユリは独りになる」

その言葉の意味が分からなかった。

私は毎回頷き微笑わらう。

そして今日は貴方の変わった話。

「僕はね、こんな世界嫌なんだ。僕は見ているしかできない子だから」

貴方は寂しそうにそう言う。

話し方を知らない私は貴方を見つめることしか出来ない。

と、思っていた。

(ねぇ、貴方の理想は?)

「え、僕の理想?」

貴方は私の心を読む変わった人。

特殊な人。

でも答えてくれる人。

「僕が望む世界はね、内緒」

貴方はふわっと笑う。

消え入りそうでどこか目を引く微笑み。

私はそんな貴方の世界の中に入ってみたかった。

今日もそんな一夜を明けた。

一夜明けると貴方は帰る。

そして人が来る。

半分に千切られたパンを持ってきた人。

私を殴り蹴り暴言を吐く人。

冷たい眼差しで私を睨む人。

夜まで苦痛な時間は終わらない。
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