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Vestige

秘密の森の奥。

国や町からとても離れた場所。

一つの小さな集落。

そこに建てられた檻の中で私独り。

泣き疲れて今日も体が重たい。

鉄格子の檻の中、手枷足枷を繋がれて抜け出せない。

毎日縛られて、時が過ぎてゆくのをただ待ち続ける。

そんな毎日を過ごしていた中、私と同じくらいの貴方がここに来た。

不思議な雰囲気を漂わせてただ私に聞いた。

「君の名前は?」と。

私は生まれた時からこの中。

誰も名付けてはくれない。

私は首を振った。

「ないの?」と貴方は聞いた。

その姿はなんとも無垢でぼやけている。

白い髪をふわふわ靡かせ、コバルトブルーの瞳を潤わせている。

汚れ一つない純白な貴方。

そんな貴方は人差し指を立てて私に名前をつけた。

「ユリ」

「なんでかな。とても綺麗だからかな。長髪の薄金髪。海のような澄み渡る瞳。どこか憂いで掴めないその美しい容姿…それでユリ」

私を美しいと貴方は言う。

ボサボサにされた髪を。

機械をつけられた頭を。

生気がないであろう瞳を。

病気のように細く白すぎる肌を。

貴方は美しいと。

綺麗だと。

その薄い血の気もない唇で。

汚れのない体で。

私を言葉で撫でた。

私は人の温かさを知った。
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