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虎杖悠仁
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任務に行った彼女からの音沙汰が無くなって2日目の朝。彼女の衣類や持ち物が落ちていたという現場に赴いた虎杖は、何か手掛かりは無いかと痕跡を探していた。居合わせた補助監督の話では、目標の呪霊は既に祓われた後だったらしく、忽然と彼女の身体だけが消えていたそうな。こんな時に限って担任の五条は出張に出向いている上に、頼りになる同期の伏黒や野薔薇の2人も昨日から任務に出ていた。
俺もナマエも呪術師だから、いつかはって思ってた。けど……けどよぉ……!
「いくらなんでもッ……早過ぎんだろッッ」
ガンっと地面に叩きつけた虎杖の拳からは、微かに血が滲み出ていた。
それから、何の成果も得られないまま夕暮れ時になり、一度高専に戻った虎杖は、寮の前を見慣れぬ猫が彷徨いている事に気付く。猫は、虎杖を視認するなり、何故か勢いよく駆け寄って来て虎杖の足元をスリスリとしながら繰り返し鳴き声を上げた。
「んー? 何だお前、随分と汚れてんのな。よすよす……ってあれ、何で逃げんの?」
あ、もしかして汚れてるって言った事気にしてる?
そう言えば、猫は返事をするように一回だけ鳴いて返した。
「そっか……ごめんな、気が利かなくて。お詫びに俺んちの風呂で綺麗にしてやっからさ! ほら、おいでっ」
言いながら手を差し出した虎杖に、猫は恐る恐るといった様子で近寄って来る。そのまま猫を抱き抱えた虎杖は、自室へと戻るのだった。
祓う直前、呪霊の放った捨て身の攻撃を受けた私は、気付けば猫になっていた。気配を感じ、咄嗟に身を隠せば、補助監督さんが慌てた様子で私の服と荷物を持って行ってしまって。助けを求めようにも完全に機会を逃してしまった私は、とにかく高専に戻ろうと、手足を動かした。途中、自転車にぶつかりかけたり、子どもに捕まりかけたりもしたけれど、何とか高専に辿り着く事が出来た私は、早速、悠仁君のいる寮の前まで向かう。問題はこれからどう悠仁君に私が私だと認識して貰うかだけれど……。考え始めたらなかなか良い案が浮かばなくて。考えがまとまらずにいつまでも寮前でウロウロとしていたら、なんと悠仁君の方から目の前に出てきてくれたから、私は堪らず駆け寄った。
「にゃーにゃー(悠仁くーん! 悠仁くん!)」
「お? 初めて見る奴だな」
「にゃー、にゃー(私だよ悠仁くん、気付いて!)」
「んー? 何だお前、随分と汚れてんのな」
「!?」
「よすよす……ってあれ、何で逃げんの?」
聞き捨てならない彼からの言葉にはっとなってここまでの道中を思い返す。とにかく色んな道を駆け抜けて来たから知らないうちに汚れまくっていたのかもしれないと思ったけれど、それよりも。呪骸であるパンダ先輩は汗をかかないけど、猫とはいえ動物である私は当然汗をかく事に気付いてからは、恐ろしくて悠仁君に近付けなくなってしまった。そんな私に、悠仁君は猫相手にも関わらず、普通に話しかけて来て。思わず返事をしたら、謝ってからお風呂に入れてくれると話してくれた。正直、これ以上汚いと思われるのは嫌だったけれど、部屋に入れて貰えるならこれ以上のチャンスはないと、恐る恐る悠仁君に近寄れば、彼は笑顔で抱き抱えてから部屋へと連れて行ってくれた。
部屋に着き、早速お風呂にと入れてくれた虎杖君は、上着を脱ぎ、パーカーの袖を腕捲りして泡だらけの私の身体を丁寧に洗ってくれる。度々、「気持ち良いか?」とか「おーよすよす、大人しくて偉いなぁお前」とか話しかけながら洗ってくれるからとても心地が良い。無意識にゴロゴロと喉を鳴らしてたら、洗い終えた後の泡をお湯で丁寧に洗い流してくれた。
「さてと、後は乾かすだけ」
「なー! なー!(ん? どうしたのその怪我!)」
「っ、んん? どうかし……ああ、これ? ちょっと地面強く叩きすぎちゃってさ……」
「あおーん!(えぇ? どうしてまた!)」
「ふはっ……なんでお前がそんな悲しそうにすんのさ」
「にゃーにゃー!(心配するでしょ! コンクリート殴っても平気なくせに!)」
「あー……サンキュー。心配してくれてんだよな」
そう言って宥めるように頭を撫でてくる悠仁君は、困ったような、悲しそうな顔をしてて。今の姿じゃ、ただ鳴き喚いて彼を困らせるだけだと思ったら、これ以上何も言えなかった。だから最後に「ぬおん……(ごめんね)」小さく謝ってみたら、一瞬固まった悠仁君がふと顔を上げて天井を見上げ始めた。どうしたんだろう?不思議に思って様子を見てたら、悠仁君の身体が微かに震え出して。そう言えば、滅多に無いけれど、彼は泣くのを我慢してる時に空を見上げる癖がある事を思い出した。居ても立っても居られなくなったけれど、今の私には鳴いて困らせる事しか出来ない事を察して無力感に打ち拉がれた。だって、こんな短い手じゃ、彼を抱きしめてあげる事さえできない。悠仁君、どうして泣いてるの。ひとりで泣かないで。私はここにいるよ。言葉に出来ない思いを悠仁君の手の傷を舐めたり膝に頭を擦り付けたりして伝えてみる。すると暫くして、意図が伝わったのか、腕で目元を拭った悠仁君が無理矢理笑って私を抱き上げてきた。
「ほんと、ナマエみたいな奴だなぁお前……ありがとな、慰めてくれて」
「……にゃあ(ナマエだよ……)」
結局それから、お風呂を上がって身体を乾かしてもらってから、夕食にツナ缶を頂いて、悠仁君とベッドに入った。明日には戻ってると良いなぁなんて思いながら、戻って無かったら五条先生に頼ろうと決意して、寝る前に悠仁君の顔を覗いてみれば、よほど疲れていたのか先に眠りに落ちていた。おやすみ悠仁君、また明日ね。ふに、と頭を擦り付けてた拍子に、口が悠仁君の唇に当たったその時だった。ボンっと小さな爆発音がしたかと思えば、視点が見慣れた位置に戻っていた。まさかと思い、咄嗟に手を確認してみれば、いつもの毛むくじゃらじゃない普通の手に戻っていて。嬉しさから目に涙を溜めながらふと悠仁君の方に焦点を合わせれば、瞳孔の開いた状態でまるで死人を見てるかのような目をして固まる悠仁君の顔があって何だかちょっとビビった。直後、彼の瞳が揺らいだかと思えば、素早く伸びて来た手に力強く抱き寄せられる。ちょっと力加減が痛くて苦しいけれど、小刻みに震えて嗚咽を漏らす彼が愛おしくて。
「ただいま悠仁君……心配かけてごめんね」
言いながら頭をポンポンと撫でれば、彼はおかえりと言って心底安心したように唇を重ねるのだった。
俺もナマエも呪術師だから、いつかはって思ってた。けど……けどよぉ……!
「いくらなんでもッ……早過ぎんだろッッ」
ガンっと地面に叩きつけた虎杖の拳からは、微かに血が滲み出ていた。
それから、何の成果も得られないまま夕暮れ時になり、一度高専に戻った虎杖は、寮の前を見慣れぬ猫が彷徨いている事に気付く。猫は、虎杖を視認するなり、何故か勢いよく駆け寄って来て虎杖の足元をスリスリとしながら繰り返し鳴き声を上げた。
「んー? 何だお前、随分と汚れてんのな。よすよす……ってあれ、何で逃げんの?」
あ、もしかして汚れてるって言った事気にしてる?
そう言えば、猫は返事をするように一回だけ鳴いて返した。
「そっか……ごめんな、気が利かなくて。お詫びに俺んちの風呂で綺麗にしてやっからさ! ほら、おいでっ」
言いながら手を差し出した虎杖に、猫は恐る恐るといった様子で近寄って来る。そのまま猫を抱き抱えた虎杖は、自室へと戻るのだった。
祓う直前、呪霊の放った捨て身の攻撃を受けた私は、気付けば猫になっていた。気配を感じ、咄嗟に身を隠せば、補助監督さんが慌てた様子で私の服と荷物を持って行ってしまって。助けを求めようにも完全に機会を逃してしまった私は、とにかく高専に戻ろうと、手足を動かした。途中、自転車にぶつかりかけたり、子どもに捕まりかけたりもしたけれど、何とか高専に辿り着く事が出来た私は、早速、悠仁君のいる寮の前まで向かう。問題はこれからどう悠仁君に私が私だと認識して貰うかだけれど……。考え始めたらなかなか良い案が浮かばなくて。考えがまとまらずにいつまでも寮前でウロウロとしていたら、なんと悠仁君の方から目の前に出てきてくれたから、私は堪らず駆け寄った。
「にゃーにゃー(悠仁くーん! 悠仁くん!)」
「お? 初めて見る奴だな」
「にゃー、にゃー(私だよ悠仁くん、気付いて!)」
「んー? 何だお前、随分と汚れてんのな」
「!?」
「よすよす……ってあれ、何で逃げんの?」
聞き捨てならない彼からの言葉にはっとなってここまでの道中を思い返す。とにかく色んな道を駆け抜けて来たから知らないうちに汚れまくっていたのかもしれないと思ったけれど、それよりも。呪骸であるパンダ先輩は汗をかかないけど、猫とはいえ動物である私は当然汗をかく事に気付いてからは、恐ろしくて悠仁君に近付けなくなってしまった。そんな私に、悠仁君は猫相手にも関わらず、普通に話しかけて来て。思わず返事をしたら、謝ってからお風呂に入れてくれると話してくれた。正直、これ以上汚いと思われるのは嫌だったけれど、部屋に入れて貰えるならこれ以上のチャンスはないと、恐る恐る悠仁君に近寄れば、彼は笑顔で抱き抱えてから部屋へと連れて行ってくれた。
部屋に着き、早速お風呂にと入れてくれた虎杖君は、上着を脱ぎ、パーカーの袖を腕捲りして泡だらけの私の身体を丁寧に洗ってくれる。度々、「気持ち良いか?」とか「おーよすよす、大人しくて偉いなぁお前」とか話しかけながら洗ってくれるからとても心地が良い。無意識にゴロゴロと喉を鳴らしてたら、洗い終えた後の泡をお湯で丁寧に洗い流してくれた。
「さてと、後は乾かすだけ」
「なー! なー!(ん? どうしたのその怪我!)」
「っ、んん? どうかし……ああ、これ? ちょっと地面強く叩きすぎちゃってさ……」
「あおーん!(えぇ? どうしてまた!)」
「ふはっ……なんでお前がそんな悲しそうにすんのさ」
「にゃーにゃー!(心配するでしょ! コンクリート殴っても平気なくせに!)」
「あー……サンキュー。心配してくれてんだよな」
そう言って宥めるように頭を撫でてくる悠仁君は、困ったような、悲しそうな顔をしてて。今の姿じゃ、ただ鳴き喚いて彼を困らせるだけだと思ったら、これ以上何も言えなかった。だから最後に「ぬおん……(ごめんね)」小さく謝ってみたら、一瞬固まった悠仁君がふと顔を上げて天井を見上げ始めた。どうしたんだろう?不思議に思って様子を見てたら、悠仁君の身体が微かに震え出して。そう言えば、滅多に無いけれど、彼は泣くのを我慢してる時に空を見上げる癖がある事を思い出した。居ても立っても居られなくなったけれど、今の私には鳴いて困らせる事しか出来ない事を察して無力感に打ち拉がれた。だって、こんな短い手じゃ、彼を抱きしめてあげる事さえできない。悠仁君、どうして泣いてるの。ひとりで泣かないで。私はここにいるよ。言葉に出来ない思いを悠仁君の手の傷を舐めたり膝に頭を擦り付けたりして伝えてみる。すると暫くして、意図が伝わったのか、腕で目元を拭った悠仁君が無理矢理笑って私を抱き上げてきた。
「ほんと、ナマエみたいな奴だなぁお前……ありがとな、慰めてくれて」
「……にゃあ(ナマエだよ……)」
結局それから、お風呂を上がって身体を乾かしてもらってから、夕食にツナ缶を頂いて、悠仁君とベッドに入った。明日には戻ってると良いなぁなんて思いながら、戻って無かったら五条先生に頼ろうと決意して、寝る前に悠仁君の顔を覗いてみれば、よほど疲れていたのか先に眠りに落ちていた。おやすみ悠仁君、また明日ね。ふに、と頭を擦り付けてた拍子に、口が悠仁君の唇に当たったその時だった。ボンっと小さな爆発音がしたかと思えば、視点が見慣れた位置に戻っていた。まさかと思い、咄嗟に手を確認してみれば、いつもの毛むくじゃらじゃない普通の手に戻っていて。嬉しさから目に涙を溜めながらふと悠仁君の方に焦点を合わせれば、瞳孔の開いた状態でまるで死人を見てるかのような目をして固まる悠仁君の顔があって何だかちょっとビビった。直後、彼の瞳が揺らいだかと思えば、素早く伸びて来た手に力強く抱き寄せられる。ちょっと力加減が痛くて苦しいけれど、小刻みに震えて嗚咽を漏らす彼が愛おしくて。
「ただいま悠仁君……心配かけてごめんね」
言いながら頭をポンポンと撫でれば、彼はおかえりと言って心底安心したように唇を重ねるのだった。
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