任務終わりからの帰り道、虎杖の誘いで皆でコンビニに寄ることになった１年ズは、それぞれ思い思いのものを買って、帰りの道中で食べ歩いていた。

「あれ、伏黒くんが食べ物買うなんて珍しいね。」

いつもは連れ添って飲み物だけ買う伏黒が今日はあんまんを買って食べていたのを見て、隣を歩くナマエが話しかけた。

「別に…ただの気分だ。」

「そうなんだ！でも、あそこのあんまん美味しいよね！」

言いながら、自分はピザまんを頬張ってニコニコとするナマエを横目で見ながら、伏黒は思わず唾を呑み込む。
最近は五条の影響でその店のあんまんにハマっていた彼女の事を、たまたま同期間に同任務の出動が重なった伏黒はよく見知っていた。

それにしたって美味しそうに食べるよな…。

一口だけかじった手の中にあるそれをナマエから視線を移し替えて眺めながら、口内に残るあまり好きではない甘ったるさを伏黒は密かに噛み締めていた。

「あ！虎杖ぃ、あんた何私の真似して肉まん買ってんのよ！」

「や、ただの偶然だし、大体俺が何選んで食おうが俺の勝手だろ！？」

「うっさい！口答えすんな！」

目の前を並んで歩く2人が盛り上がる中、会話の途切れた後ろの2人の間には何となく気まずい空気が流れ始めていたので、ナマエは咄嗟に伏黒へ声を掛けた。

「っ、もしかして伏黒くんて、甘いものあんまりだったりする…？」

「……まあ。甘すぎるのは…正直、得意じゃないな。」

言いながら、ナマエの視線が自分の手の中にある物に注がれている事に気づいていた伏黒は、罰の悪そうな表情をして顔を背けた。

じゃあなんで買ったんだ、とか思われてんだろうな…。

心の中でそんな事を考えながら、くそっダサすぎだろ等と自身を羞恥する伏黒であったが、彼は何も考え無しにあんまんを購入した訳では決して無かった。

というのも、彼の隣にいるナマエという人物は、それはとても美味しそうに物を食べるのだ。
それはもう、見ている伏黒からすれば、そんなに美味しいのかと自分の苦手な食べ物に対しても思い込む程で。
しかもこういった経験は今回が初めてでは無かった事もあり、それが余計に伏黒自身をげんなりとした気分にさせていた。

「……もしかして、私のせいだったりする？」

「…は、？」

予想だにしていなかったナマエからの問いかけに、伏黒はまさかバレてたのかと内心焦りながらぎこちなく彼女の方を見る。

「ほら、私最近、伏黒くんの前であんまんばっかり食べてたでしょ？その時に五条先生のオススメなんだよって、つい伏黒くんにも推しまくってたから…。」

「っ………はぁ。ちげぇよ、馬鹿。」

気まずそうに目を泳がせてそう話したナマエに、伏黒は安堵のため息を吐いてから軽くデコピンをくらわせる。
意味が分からず、執拗に訳を追及してくる彼女に、伏黒は思わず、

「っっだから、お前が旨そうに食ってるからだろうが！言わせんな！」

と言って、そのままの勢いに任せて「やる！」と顔を背けながら、ナマエに食べかけのあんまんを突き付けた。
吃驚した彼女が「え、あ、じゃあ…、」と代わりに食べかけのピザまんを差し出せば、チラっと確認してから受け取って食べ始めた伏黒に、あ…嫌じゃないんだ、と内心安堵しながら自分も貰ったあんまんを食べ始めるナマエ。

実は、こいつあんまんばっか食ってんな…、なんて、そろそろ伏黒が呆れ始めてるんじゃないかと不安に思って、わざと今日はピザまんをセレクトしたナマエだったのだが…。

「んーっ、やっぱりここのあんまんが一番！」

「…甘すぎないか？」

「それが良いの！体動かした後に食べると、あー今日も頑張れて良かった！、て思うの！」

「そういうもん…なのか？」

うん！と元気良く頷くナマエに伏黒は、やっぱり見てるのが一番だな…等と、密かに高鳴った自身の心臓を思って考えるのであった。


「……なんか知らんが、伏黒もナマエも良い雰囲気だなぁ？」

「しっ！気づかれんでしょ、お子ちゃまは黙ってなさい！」

「なっ、誰がお子ちゃまだよ！」

ところでお前ら全部聞こえてんだよ……。


余談だが、この頃から、虎杖と野薔薇の2人は、伏黒とナマエの関係性の進展に手を合わせて尽力し始めるのである。