「ナマエ、飯食いに行こうぜ！」

ナマエの同級生である虎杖は、よく彼女を誘って食事に出掛けていた。普段からの昼食や夕食、任務終わりでの買い食い等。
あまりの頻度に始めは戸惑っていたナマエであったが、虎杖の人柄の良さや話しやすさに今ではすっかり居心地が良くなって、彼からのお誘いは日々過ごす中での大きな楽しみのひとつになっていた。

「んー、今日何食べたいとかナマエはある？」

「っ…、えっと、その…虎杖君さえ良かったら、なんだけど…。」

「…ん？」

それは、そんな楽しい時間をいつも提供してくれている彼に向けた、ナマエからのささやかなお礼のつもりで手渡したものだった。
彼女の上着ポケットから出てきたそれを受け取った虎杖は、その透明フィルムで綺麗に包まれた物を見て目を丸くした。

「……えっ、こ、これって、まさかナマエの手作り？」

「あー…たまには自分で作ってみようかな、て…。っい、一応味見して不味くは無かったから持って来たんだけど！人の手作りとか無理な人だったらごめんね！捨ててね！」

自信の無さから思わずテンパってしまい早口になるナマエ。
言いながら胸の前でブンブンと手を振っていれば、突然、その手首を虎杖の大きな手がガシッと掴んだ。

「全っ然！寧ろすっげぇー嬉しいから！」

ありがとうな！！

そう眩し過ぎるくらいの満面の笑みをして言われたものだから、ナマエとしてはどう反応して良いのか分からず、ただただ顔面に熱が集中してくるのを感じていた。

本当は、私が言いたかったのに……。

これだけ盛大に相手に言われてしまってはそれも叶わず。

日頃の感謝を込めたお礼は、また今度する事に決めたナマエであった。