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夏油傑
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結局あれから一緒に暮らす事となった私と狐の夏油さん。
でも、度々感じる夏油さんとの距離感の近さに私の心臓は今日も悲鳴を上げていた。
「ナマエ……ナマエ」
「ん……」
自分の名前を呼ぶ心地良い声と身体を揺さぶられる感覚がして薄っすらと瞼を開けば、視界一杯に映る夏油さんの顔。
あまりの近さに吃驚して咄嗟に布団で顔を隠せば、凄い力で剝ぎ取られてから、眩しすぎる笑顔でおはようと挨拶された。
「うぅ……おはよう御座います」
「ほら、朝ごはんは出来てるから、先に顔洗っといで」
恥ずかしくて顔もまともに見れない状態でとりあえず促されるがままに洗面台まで向かう。
向かう途中、キッチンからは、夏油さんお得意のお味噌汁の良い匂いがした。
「……はぁ」
冷水で顔を洗いながら、まだドキドキしてる自分の心臓に、いい加減耐性つけなきゃ……なんて思っていたら、自然と出たため息。
我ながら、もう数年もすればアラサーだというのに、どうして恋のひとつしてこなかったんだろうと
どんな時でも余裕綽々な大人の雰囲気を持つ夏油さんを思い返しながら考える。
思えば、合コンのひとつでも誘われた時に勇気を出して行くようにしておけばいくらかの出会いと機会があったかもしれないのだ。
そんな事を今更後悔する位には、夏油さんとの暮らしは刺激的だった。
「行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
いつものように夏油さんからのお見送りを受けて玄関を出た私は、今日も勤務先へと足を運ぶ。
仕事カバンの中には、夏油さんが手作りしてくれたお弁当が入っていた。
「でさー」
「えー、ほんとにー?」
信号待ち中、目の前の女子高生達が賑やかにお話している声が耳に入ってくる中、ふと誰かに見られているような感覚がして後ろを振り返る。
でもそこには誰もいなくて、気のせいかと青になったばかりの横断歩道を渡って、私は今日も一日出勤をした。
「やぁどうも。お疲れサマンサ!て、これは初対面の人にする挨拶じゃないかー」
「……あなた、は?」
帰り道。もうすぐ家に着くという所で、知らない男の人が曲がり角の先で話しかけて来た。
夜だというのにサングラスを掛け、多分夏油さんよりも少し高い位の高身長の白髪男性に私は咄嗟に身構えながら返事をした。
そんな私の様子に何かを察した男性は、おもむろに付けていたサングラスを外すと、私の前で両手を上げてひらひらと見せてきた。
「ごめんごめん、怖がらせるつもりは無かったんだけどね。この通り、君に危害を加えるつもりはこれっぽっちも無いから」
ね、と目を細めて笑う男性に、私は少しだけ強張っていた身体の緊張を解く事にした。
「ん、ありがとね。ところで早速なんだけど、傑とはいつからの関係なの?」
「っ……!?」
「ひと月位前から全然顔出さなくなっててさ。仕方ないから友達思いのナイスガイな僕が探しに来たんだけど、そしたら君の家に住み着いてて吃驚!」
もう見てたら面白くてさぁ!と1人で楽しそうにペラペラと話してくれた男性のお陰で、相手の目的はよく伝わった。
つまり夏油さんのお友達……てことは、この人も
「狐さん、ですか?」
思わず期待の眼差しで尋ねれば、男性は一瞬目を見開いた後、すぐにまた目を細めて、ふと人差し指と中指をクロスさせたハンドサインを掲げた。
すると、ぼわんと小さな音がして視界が一瞬煙たくなったかと思いきや、すぐに晴れた視界には白い耳とふわふわとした真っ白な尻尾が生えた男性の姿があった。
「んーっ、惜しい!正解は猫ちゃんでしたー!」
「猫ちゃん……!」
まさかの異種族が存在するという事実に、思わず顔がほころぶ。
これはもしや、犬のお方もいるのでは!?とかつては犬〇叉好きだった事もあって素直に期待してしまう。
しかし咄嗟に人目が気になった私は、目の前の男性に声を掛けて、とりあえず自宅まで案内する事にした。
自宅前まで着くと、何故かニヤリと笑った男性が、急に長毛の猫の姿になって胸に飛び込んで来た。
咄嗟に両手で受け止めればふわりとした感触が気持ち良くてついそのままモフってしまう。
そんな私の方を見ながら、彼は、前足は扉の方に向けて「にゃあ」と鳴いたので、私は促されるがままに扉を開けた。
「ただいまー」
「ああナマエ、おかえ……」
「にゃあー」
廊下に出てくるなり、私と猫を凝視して固まる夏油さん。
かと思いきや、ご機嫌な猫の声を聞くなり、夏油さんは顔を歪めて「悟、おまえ……!」と凄い剣幕で私――じゃなくて、抱えていた猫の方を睨みつけた。
それも束の間、またぼわんという小さな音と共に周りが煙たくなったかと思えば、気づけば私が男性の背中に抱き着く体勢になっていたので、慌てて離れてから玄関扉にまで背中を張り付ける。
すかさず私たちとの間に滑り込んで来た夏油さんによって目の前の視界が遮られれば、周りの空気感が一気にぴりっとしたものに変化した。
「不可抗力だってー。わざとじゃないんだからそう怒るなよぉ」
「分かったからとりあえずいっぺん殴らせろ」
「げぇ、絶対いっぺんじゃすまない奴じゃんそれ。それよりこのにおいは焼き魚?僕も頂こーっと」
「お前の分があるわけないだろう、帰れ」
「まあまあ。こんなとこで喧嘩したら後ろの彼女ちゃんに迷惑かかるでしょ。見てよ、怯えてすみっコぐらししちゃってるよー?」
ごめんねー。と申し訳ない顔をしてから奥のリビングがある部屋の方へと消えた男性を夏油君の足の隙間から見届けていると、頭上から大きなため息が聞こえてきた。
振り返った足に反応して上を向けば、目の合った夏油さんは申し訳なさそうな顔をして目の前にしゃがみ込んだ。
「あ、ごめん!ちょっと吃驚して腰抜けちゃっただけだからだいじょ、」
言葉の途中で引き寄せられた私の身体は、夏油さんの腕の中にすっぽりと収まってしまう。
途端、彼の体温と匂いが五感の一部を優しく刺激して、安心感が込み上げてきた所に、落ち着いた声で「すまない」と謝られたものだから、大したことじゃないと本当に思ってたのにも関わらず、涙が込み上げてきて自分でも困惑してしまった。
そんな私の背中を優しく撫で続けてくれた夏油さんに、落ち着いてから、もう大丈夫と声を掛ければ、何度か確認し返してきてからようやく一緒に立ち上がって、お互いに顔を見合わせた。
「あの人は夏油さんのお友達、なんだよね?」
「……まあ、同期の腐れ縁ではあるかな」
「もしかして連れ帰った翌朝に言ってた馬鹿って……彼?」
あからさまに嫌な顔をして黙り込んだ夏油さんを見て、以前本人が沈黙は肯定だよと言っていた事を思い出した。
でもだとしたら、きっとあの人は、喧嘩してから多分一度も顔を合わせてなかった夏油さんに本当は会いたかったんじゃないだろうか……。
だから、わざわざ様子を暫く窺ってから、満を持して私に接触してきたのでは無いか。
そう考えたら何だか2人の関係性にほんわかとした気分になって自然と顔が緩む。
そんな私に気づいた夏油さんが、不貞腐れたような態度で、
「君、何か嫌なこと考えてるだろう」
とジト目で見てきたので慌てて誤魔化しながら私はリビングへ続く扉を開いた。
部屋の中にはいると思っていた男性の姿はどこにもなくて。
代わりに料理が並んだ食卓の上には、「今日は色々ありがとね!それから最後ごめんねー。また僕の事モフりたくなったら連絡して!」なんていう書き置きとどこに持っていたのか色んな種類のケーキが入った白箱が置かれていた。
書き置きの下にはご丁寧に携帯の連絡先と名前が記されていて、私はそこから、男性の名前が五条悟という事を今知ったわけ、なのだが。
「…………え、何?」
「悟のこと、モフったのかい……?」
「えっ……」
ガラリと纏っていた雰囲気が変わった夏油さんを見て、私は咄嗟に一緒に暮らすことを決めたあの時の事を思い出した。
顔は笑っているのに目が据わっている彼の表情に、サーっと顔が青ざめていく感覚に陥った私はとにかく夏油さんから距離をとろうと適当な方向に後ずさりする。
そんな私にじりじりと近寄って来ながら、夏油さんは言葉を紡いだ。
「そういえば。その文面から察するに、君、本当はあの猫が悟だと分かって抱いてたんじゃないかい……?」
「え!?あ、や、その……っ」
ドンっと何かに躓いて一瞬意識が逸れた所を、すかさずすぐ後ろにあったベッドに押し倒して組み敷いてきた夏油さん。
必然的に見つめ合う体勢になってしまい、もう逃げられないと悟った私に、夏油さんはあろうことか今、モフった感想を尋ねてきた。
返答に困っていると急に夏油さんの顔が下りてきたので、怯んで目を瞑ると、少しして、ふにっと指先に柔らかい感触が伝わってきた。
驚いて目を開ければ、私の手を自分の狐耳に当てる夏油さんの姿があって。
不貞腐れた、というよりかは、拗ねたような表情をした夏油さんが、じとりと私を凝視して
「私の方が触り心地は良いだろう?」
なんて聞いてきたものだから、身体中が熱くなる感覚に浸りながら、私は、ただただ彼に頷いて返す事しか出来なかった。
でも、度々感じる夏油さんとの距離感の近さに私の心臓は今日も悲鳴を上げていた。
「ナマエ……ナマエ」
「ん……」
自分の名前を呼ぶ心地良い声と身体を揺さぶられる感覚がして薄っすらと瞼を開けば、視界一杯に映る夏油さんの顔。
あまりの近さに吃驚して咄嗟に布団で顔を隠せば、凄い力で剝ぎ取られてから、眩しすぎる笑顔でおはようと挨拶された。
「うぅ……おはよう御座います」
「ほら、朝ごはんは出来てるから、先に顔洗っといで」
恥ずかしくて顔もまともに見れない状態でとりあえず促されるがままに洗面台まで向かう。
向かう途中、キッチンからは、夏油さんお得意のお味噌汁の良い匂いがした。
「……はぁ」
冷水で顔を洗いながら、まだドキドキしてる自分の心臓に、いい加減耐性つけなきゃ……なんて思っていたら、自然と出たため息。
我ながら、もう数年もすればアラサーだというのに、どうして恋のひとつしてこなかったんだろうと
どんな時でも余裕綽々な大人の雰囲気を持つ夏油さんを思い返しながら考える。
思えば、合コンのひとつでも誘われた時に勇気を出して行くようにしておけばいくらかの出会いと機会があったかもしれないのだ。
そんな事を今更後悔する位には、夏油さんとの暮らしは刺激的だった。
「行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
いつものように夏油さんからのお見送りを受けて玄関を出た私は、今日も勤務先へと足を運ぶ。
仕事カバンの中には、夏油さんが手作りしてくれたお弁当が入っていた。
「でさー」
「えー、ほんとにー?」
信号待ち中、目の前の女子高生達が賑やかにお話している声が耳に入ってくる中、ふと誰かに見られているような感覚がして後ろを振り返る。
でもそこには誰もいなくて、気のせいかと青になったばかりの横断歩道を渡って、私は今日も一日出勤をした。
「やぁどうも。お疲れサマンサ!て、これは初対面の人にする挨拶じゃないかー」
「……あなた、は?」
帰り道。もうすぐ家に着くという所で、知らない男の人が曲がり角の先で話しかけて来た。
夜だというのにサングラスを掛け、多分夏油さんよりも少し高い位の高身長の白髪男性に私は咄嗟に身構えながら返事をした。
そんな私の様子に何かを察した男性は、おもむろに付けていたサングラスを外すと、私の前で両手を上げてひらひらと見せてきた。
「ごめんごめん、怖がらせるつもりは無かったんだけどね。この通り、君に危害を加えるつもりはこれっぽっちも無いから」
ね、と目を細めて笑う男性に、私は少しだけ強張っていた身体の緊張を解く事にした。
「ん、ありがとね。ところで早速なんだけど、傑とはいつからの関係なの?」
「っ……!?」
「ひと月位前から全然顔出さなくなっててさ。仕方ないから友達思いのナイスガイな僕が探しに来たんだけど、そしたら君の家に住み着いてて吃驚!」
もう見てたら面白くてさぁ!と1人で楽しそうにペラペラと話してくれた男性のお陰で、相手の目的はよく伝わった。
つまり夏油さんのお友達……てことは、この人も
「狐さん、ですか?」
思わず期待の眼差しで尋ねれば、男性は一瞬目を見開いた後、すぐにまた目を細めて、ふと人差し指と中指をクロスさせたハンドサインを掲げた。
すると、ぼわんと小さな音がして視界が一瞬煙たくなったかと思いきや、すぐに晴れた視界には白い耳とふわふわとした真っ白な尻尾が生えた男性の姿があった。
「んーっ、惜しい!正解は猫ちゃんでしたー!」
「猫ちゃん……!」
まさかの異種族が存在するという事実に、思わず顔がほころぶ。
これはもしや、犬のお方もいるのでは!?とかつては犬〇叉好きだった事もあって素直に期待してしまう。
しかし咄嗟に人目が気になった私は、目の前の男性に声を掛けて、とりあえず自宅まで案内する事にした。
自宅前まで着くと、何故かニヤリと笑った男性が、急に長毛の猫の姿になって胸に飛び込んで来た。
咄嗟に両手で受け止めればふわりとした感触が気持ち良くてついそのままモフってしまう。
そんな私の方を見ながら、彼は、前足は扉の方に向けて「にゃあ」と鳴いたので、私は促されるがままに扉を開けた。
「ただいまー」
「ああナマエ、おかえ……」
「にゃあー」
廊下に出てくるなり、私と猫を凝視して固まる夏油さん。
かと思いきや、ご機嫌な猫の声を聞くなり、夏油さんは顔を歪めて「悟、おまえ……!」と凄い剣幕で私――じゃなくて、抱えていた猫の方を睨みつけた。
それも束の間、またぼわんという小さな音と共に周りが煙たくなったかと思えば、気づけば私が男性の背中に抱き着く体勢になっていたので、慌てて離れてから玄関扉にまで背中を張り付ける。
すかさず私たちとの間に滑り込んで来た夏油さんによって目の前の視界が遮られれば、周りの空気感が一気にぴりっとしたものに変化した。
「不可抗力だってー。わざとじゃないんだからそう怒るなよぉ」
「分かったからとりあえずいっぺん殴らせろ」
「げぇ、絶対いっぺんじゃすまない奴じゃんそれ。それよりこのにおいは焼き魚?僕も頂こーっと」
「お前の分があるわけないだろう、帰れ」
「まあまあ。こんなとこで喧嘩したら後ろの彼女ちゃんに迷惑かかるでしょ。見てよ、怯えてすみっコぐらししちゃってるよー?」
ごめんねー。と申し訳ない顔をしてから奥のリビングがある部屋の方へと消えた男性を夏油君の足の隙間から見届けていると、頭上から大きなため息が聞こえてきた。
振り返った足に反応して上を向けば、目の合った夏油さんは申し訳なさそうな顔をして目の前にしゃがみ込んだ。
「あ、ごめん!ちょっと吃驚して腰抜けちゃっただけだからだいじょ、」
言葉の途中で引き寄せられた私の身体は、夏油さんの腕の中にすっぽりと収まってしまう。
途端、彼の体温と匂いが五感の一部を優しく刺激して、安心感が込み上げてきた所に、落ち着いた声で「すまない」と謝られたものだから、大したことじゃないと本当に思ってたのにも関わらず、涙が込み上げてきて自分でも困惑してしまった。
そんな私の背中を優しく撫で続けてくれた夏油さんに、落ち着いてから、もう大丈夫と声を掛ければ、何度か確認し返してきてからようやく一緒に立ち上がって、お互いに顔を見合わせた。
「あの人は夏油さんのお友達、なんだよね?」
「……まあ、同期の腐れ縁ではあるかな」
「もしかして連れ帰った翌朝に言ってた馬鹿って……彼?」
あからさまに嫌な顔をして黙り込んだ夏油さんを見て、以前本人が沈黙は肯定だよと言っていた事を思い出した。
でもだとしたら、きっとあの人は、喧嘩してから多分一度も顔を合わせてなかった夏油さんに本当は会いたかったんじゃないだろうか……。
だから、わざわざ様子を暫く窺ってから、満を持して私に接触してきたのでは無いか。
そう考えたら何だか2人の関係性にほんわかとした気分になって自然と顔が緩む。
そんな私に気づいた夏油さんが、不貞腐れたような態度で、
「君、何か嫌なこと考えてるだろう」
とジト目で見てきたので慌てて誤魔化しながら私はリビングへ続く扉を開いた。
部屋の中にはいると思っていた男性の姿はどこにもなくて。
代わりに料理が並んだ食卓の上には、「今日は色々ありがとね!それから最後ごめんねー。また僕の事モフりたくなったら連絡して!」なんていう書き置きとどこに持っていたのか色んな種類のケーキが入った白箱が置かれていた。
書き置きの下にはご丁寧に携帯の連絡先と名前が記されていて、私はそこから、男性の名前が五条悟という事を今知ったわけ、なのだが。
「…………え、何?」
「悟のこと、モフったのかい……?」
「えっ……」
ガラリと纏っていた雰囲気が変わった夏油さんを見て、私は咄嗟に一緒に暮らすことを決めたあの時の事を思い出した。
顔は笑っているのに目が据わっている彼の表情に、サーっと顔が青ざめていく感覚に陥った私はとにかく夏油さんから距離をとろうと適当な方向に後ずさりする。
そんな私にじりじりと近寄って来ながら、夏油さんは言葉を紡いだ。
「そういえば。その文面から察するに、君、本当はあの猫が悟だと分かって抱いてたんじゃないかい……?」
「え!?あ、や、その……っ」
ドンっと何かに躓いて一瞬意識が逸れた所を、すかさずすぐ後ろにあったベッドに押し倒して組み敷いてきた夏油さん。
必然的に見つめ合う体勢になってしまい、もう逃げられないと悟った私に、夏油さんはあろうことか今、モフった感想を尋ねてきた。
返答に困っていると急に夏油さんの顔が下りてきたので、怯んで目を瞑ると、少しして、ふにっと指先に柔らかい感触が伝わってきた。
驚いて目を開ければ、私の手を自分の狐耳に当てる夏油さんの姿があって。
不貞腐れた、というよりかは、拗ねたような表情をした夏油さんが、じとりと私を凝視して
「私の方が触り心地は良いだろう?」
なんて聞いてきたものだから、身体中が熱くなる感覚に浸りながら、私は、ただただ彼に頷いて返す事しか出来なかった。