「傑くん…？」

「ん、何だい？」

「……今夜、…ど、どうです、か…？」

読んでいた本から思わず夏油が視線を移し替えれば、机に突っ伏しながら恥ずかしそうに目元だけ出して彼の方を見つめるナマエの姿が。
よほど思いきったのか、彼女の瞳は既に熱を孕んで涙ぐんでいた。

「っ…、ふふ、」

「わっ…笑わないでよ！」

肩を震わせ、持っていた本で顔を隠しながら笑いだした夏油に、ナマエは思わず伏せ込む。

「っ、すまないね。突拍子が無さすぎてつい。あとは誘い方が、」

「あー！そこは突っ込まないで！！」

う"ぅ…と恥ずかし過ぎて唸るナマエに夏油はふっと目を細めた。

「まあでも、私は一向に構わないから、来るなら来なよ。」

「っ……、…………………行く。」

長い沈黙の後に返された言葉は、酷くか細かったが、
夏油をその気にさせるには十分な響きであった。