どうにも彼女の様子がおかしいと思った虎杖は、彼女が1人で教室にいる時を見計らってメッセを送ってみる事にした。

「おせっかいだったらごめん。彼氏と何かあった？」
「……実は、呪術師のことバレちゃって。ごめん、ちょっと怖いかもって言われちゃった」

隠してた私が悪いんだけどね。届いたメッセを確認後、教室にいる彼女を見ると彼女は机に伏せて泣いていた。

「で、別れちゃったの？」

自分のスマホ画面に打ち込んだ文面を見て、咄嗟に、親指を止める虎杖。
彼の頭には、初めて彼氏が出来た事をそれは嬉しそうに野薔薇と話していた彼女の顔が浮かび上がっていた。

好きな子が悲しんでいるというのに。あまりにもデリカシーの無い言葉だと、虎杖は思った。
しかしそれ以上に、昂る気持ちが渦を巻く。死ぬほど後悔したあの日の事を、虎杖は決して忘れないようにしていた。

最低だ。分かってる。
でも、それでも、もう二度と、やらずに後悔するのだけは嫌だった。

覚悟を決めた虎杖は、スマホ片手に教室の扉を勢いよく開ける。
驚いた彼女は、泣き顔を見られた事に動揺し、慌てて背を向けながら話をした。

「ど、どうしたの虎杖君！？　何か忘れ物でも――」

突然、後ろから思いきり抱き締められた彼女は、驚きのあまり固まってしまう。

「吃驚したよな、困るよな、分かってる。でも俺、ナマエが好きなんだ！だからッ……これ以上泣くぐらいなら、俺にしてよ」

切なげな虎杖の声が、彼女の鼓膜に嫌というほど響いた。