彼女が玄関に急げば、もう既に荷物を受け取る夏油がいた。しかし上半身に何も羽織って無かった為、後で部屋に戻ってから彼女が指摘すれば、夏油は涼しい顔で言葉を返した。

「仕方ないだろう？　私のは今、君に貸してるんだから」

言われて初めて自身の恰好に気づく彼女。途端、恥ずかしくなって、とりあえず小さく謝罪した。

「ご、ごめん……」
「構わないよ。それよりも、問題はその恰好で出ようとした事だよね」

はっとしてにこやかな笑顔を向ける夏油を見つめる彼女。例え未遂であっても、夏油という男は、決して見逃してはくれないのだ。

「君を信じていないわけではないけど……リスク回避はきちんとして貰わないとね…………ひとつひとつ、この身体で覚えていこうね」

こうしてまた一つ、大人の階段を上る彼女なのであった。(言い方)