深夜の初詣に行こうと約束していた2人は、年明け前に待ち合わせをしていた。
普段通り、10分前には来ていた夏油がナマエを待っていると、約束の時間ギリギリになって走って来るナマエの姿が目視出来た。
しかも見慣れない着物を着ていたものだから、夏油の中で少しの間思考が停止した。

「ご、ごめん！この格好、思いの外歩きづらくて…！」

目の前で息を切らすナマエ。
はっとした夏油は、近くの物陰へとナマエを促し、走って着崩れていた着物をお直しし始めた。

「あ、はは…な、何かダサいね、私。」

「そうかい？私は可愛らしいサプライズだったと思うよ。」

「うっ…バレてる。」

実は少し前から先輩である歌姫に協力して貰い着物サプライズなるものを企てていたナマエ。
夏油は絶対和服好きという歌姫からの根拠のない言い分もあって、結構ノリ気で当日を迎えたのだが、まさか着物がこんなに大変だとは思わなかった。
しかも着るにあたってセットしてくれたのは全て歌姫であった為、着崩れた着物を直す術など自分は持ち合わせていないというのについ急いでしまったので、何だかなぁと言った感じで今に至るのである。

「出来たよ。」

慣れた手つきでお直ししてくれた夏油に気恥ずかしくて伏せ目がちでお礼を伝えるナマエ。
そのまま格好を確認すれば、すっかり元の綺麗な状態に戻っていたので、相変わらず器用だなぁなんて思いながらそれに比べて私は等とついいじけそうになるのを踏み止まってナマエは物陰から表へと出た。

「うん。やっぱり可愛いね。」

「！」

街灯が辺りを照らす中、さっきよりも良く見えるようになったナマエの姿に夏油が目を細めて微笑む。
その台詞をその顔で言うのは反則では無かろうかと、

「ん"んん…」

なんて唸る事しか出来ずにいれば、

「言葉になってないよ。」

と笑って頭を撫でられた。

「っ…、早く行こ！」

そう言って先に歩き始めようとしたナマエの手を掴み、引き寄せる夏油。

「また着崩れたら大変だろ。ここはゆっくり行こう。」

「っ……う、うん。」

そのまま手を繋いで初詣に向かう2人であった。