「調子に乗って飲み過ぎだ、馬鹿」
「あー！　まだ飲んでたのにー！」

休日前の夜。
久しぶりに宅飲みでもしようかと思い立ち、2人でお酒と料理の材料を買って適当な映画でも流しながら飲食を楽しんでいた。
そんな中、新商品として売られていた甘めのお酒を余程気に入ったらしく、いつもよりペース速めに飲んでいた彼女の手から、伏黒は奪い取ったお酒を自身で飲み干した。

文句を言う彼女を適当に流しながら、さっさと机の後片付けをして台所へ向かおうとした伏黒を、彼女はつまらなそうに服の端を掴んで引き止めた。

「恵くん、もうおしまいにしちゃうの？　もっとお話しようよー」
「……明日、出かけるんだろ。今日はこの辺にして、早めに休んどけ」
「えぇ……」

言って、台所へ向かってしまった伏黒を目で追いかけながら、彼女は拗ねた顔をして

「恵くんのｲｼﾞﾜﾙ……」

そう小さく呟いた。


「ﾁｯ……人の気も知らねぇで」

洗い物をしながら苛立ったように呟く伏黒。
酔うと距離感が近くなる彼女の隣に座りながら、我ながらよくもった方だと伏黒は自分なりに振り返っていた。

とにかく風呂に入ったらさっさと寝てしまおう。
そう決意して台所を出れば、いつの間にか待ち構えていた彼女が伏黒の腕にと抱き着いた。

「ねぇ恵くん？　良かったら、一緒にお風呂入らない？」
「は……？」

人の気も知らねぇでこの馬鹿は……！

普段そういうお誘いをしない彼女からの台詞に上目遣いなのも相まっていよいよ理性が危うくなる伏黒。
思わず力めば、どうやら彼女を睨みつけてしまっていたようで、涙目になった彼女に

「う゛…‥やっぱり、駄目？」

首を傾げられ、プツンと伏黒の中で何か糸の切れる音がした。