「高菜ぁ！」
「おわっ、いっ狗巻さん！？」
「ツナツナ」

1人歩いていた彼女の背後をとり、突然抱き締めて吃驚させるという、ほぼ日常化した行為。
しかし、背中に当たる感触に違和感を覚えた彼女は、後ろを振り向くなり、狗巻の胸元を視認して目を丸くさせた。

「えっあれっ…………あ、メロンパンですか？」
「おかかぁ」
「えぇ……？」

ふるふると首を横に振りながら、目の前で人差し指をクロスさせる狗巻に彼女は首を傾げる。
何にせよ、よく出来たお胸だなぁなんてまじまじと見つめながら悠長に構えていた彼女の手を掴み、狗巻は自身の胸元へと手の平を押し当てた。

「……えっ」
「すじこ？」

思わず思考が停止する彼女をニコニコと見つめ返す狗巻。
少しして、それが本物だと理解した彼女は、赤らめた顔を隠しながら、狗巻の身体について問い詰めた。

「なるほど……でも明日には治りそうなんですね、良かった」
「しゃけ！」

大きく頷いた途端、ぽよんっと揺れた狗巻の胸元に、彼女ははっとして狗巻の手を掴む。
そのまま何も言わずに手を引かれ、足早に移動を始めた彼女の後を、狗巻は不思議に思いながらも黙って付いて行く事にした。


どこに行くのかと思えば到着したのは狗巻自身の部屋で。

疑問に思う狗巻に、彼女は

「元に戻るまで外出禁止です！」

と、彼がしたように人差し指をクロスして見せた。

「明太子？」
「っ……狗巻さんには分からないかもですが、胸は下着を付けないと目立っちゃうんですよ。だから、その……見られたく、ないので」

私が、と尻すぼみしながらもご丁寧に伝えてくれた彼女に、予想外の返答を得た狗巻は暫く天を見上げ頭を抱えていた。

「……あの、狗巻さん？」
「ツナマヨぉ……」
「？？」


その後、帰ろうとした彼女が、狗巻に捕まってそのまま帰れなくなるのはまた別のお話。