「おかかあああああ！！！！」

「「！！？」」

ビュンと物凄い速さで彼女に飛びつき、そのまま彼女の事を隠すように背中を向けて顔だけ相手を見る狗巻。
昂っているのか、相手からは凄い剣幕で睨みつけられているように見えて。

「あの、えと、じゃあ頑張ってね！」

適当な事を言うと、早々に相手は立ち去ってしまった。

「あ、あの、狗巻さ」

「おかか！」

「う、くっ苦し……」

ギュウギュウと抱き締められて圧迫感から唸る彼女。
首筋に頭をぐりぐりと擦り付けられ、くすぐったさで高めの声が少しだけ漏れた。

「高菜？　すじこ？」

身体を離し、肩を掴みながら顔を覗き込む狗巻。

「は、はい……ちゃんと前を見て歩くように心がけます」

「しゃけしゃけ」

男の前で転けて手を貸してもらっていた彼女の行為を嗜めた狗巻は、反省の態度を示す彼女にやっと表情を和らげた。
雰囲気が和らいだ事に反応して、ほっと一息ついた彼女の耳に、不意にジィ、と聞いた事のある音が聞こえた。

「え、狗巻さ」

でろぉんと、大きく開けた口から出た舌に、持ち上げられていた手のひらを舐め上げられた。
ゾクゾクとした感覚に小さな悲鳴を上げた彼女だったが、狗巻は知ったことかといった様子でそのまま指の間から指先まで、度々リップ音も立てながら、それは丁寧に舐め続けた。

羞恥心と押し寄せる刺激とにすっかりやられてしまった彼女は、項垂れた様子で、ぐっと堪えていた。

「……ツナマヨ？」

「っ……そ、そりゃ、めちゃくちゃ恥ずかしいですけど」

「明太子」

「う、はい……反省します」

「ツナ」

良い子、とでも言うように、狗巻は項垂れた彼女の顎を持ち上げるとその唇に口付けた。