朝から元気の無い彼女を心配してすぐに声を掛ける。

「何でも無いよ」

「大丈夫だよ、有難う」

そう、平気な素振りをしてやり過ごそうとした彼女の手を掴み、引き寄せた虎杖は、そのまま彼女を正面から抱き締めた。
突然の事に慌てる彼女に

「……俺じゃ、頼りね？」

耳元で呟くと、ピタリと動きが止まる。

「彼氏の俺にくらい、もっと甘えてよ」

言いながら、腕の力を強めた虎杖に、やがて彼女が気まずそうに顔を上げて口を開いた。

「ごめん、あの…………実は、前に話したコラボカフェで爆、死しちゃって」

「……はい？」

尻すぼみして明かされた理由につい変な声が出た虎杖は、目を点にして、彼女を見つめる。

「く、くだらないでしょ？　だから、言いたくなかったの……」

呆れられていると思った彼女が堪らず顔を真っ赤にして釈明すれば、はっとした虎杖が、はぁーと安心したように溜め息を吐いて彼女に寄りかかった。

く、苦し……と唸る彼女に、

「あんま心配させんなよな！……まあ、ナマエの気持ちは分からんでもないけど」

そう言ってから身体を起こした虎杖は、

「おしっ、今度は俺とも行こうぜ！　てか、最初から誘ってくれれば良かっただろー！」

それからは何かと一緒にイベント事に行ってくれるようになる虎杖。

虎杖の、彼女の推し引きが凄過ぎて逆に羨ましがられたりしたら可愛い。