「あ！　夏油様おかえりなさーい！」

庭にビニールプールを広げて遊んでた彼女と双子の3人は、夏油に気付くなり明るい声で挨拶をした。

「そろそろ終わろっかー」

プール内を水着姿で居る双子に外からホースの水を浴びせていた彼女が声をかける。素直に聞き入れた2人へ先に着替えるよう促した彼女はそのままテキパキ後片付けを開始した。

「随分と賑やかだったみたいだね」

縁側に佇む夏油の声掛けにホースを巻き取っていた彼女の手が止まる。

「……もしかして、お仕事の邪魔しちゃいました？」
「いや？　ただ楽しめたようで安心しただけだよ」
「あ、なら良かったです。そうですね、2人とも本当に楽しそうで」
「君は？」

はっとして顔を上げれば、細めた瞼から瞳を覗かせる夏油と目が合う。

「君はちゃんと楽しめたかい？　ナマエ」

もう一度、今度はより丁寧になされた夏油からの問い掛けに、彼女は咄嗟に昨夜の事を思い出す。一緒に海に行きたいと水着をプレゼントしてくれた双子の為に夏油からの承諾を受けようとした彼女。夏油からの返答としては終始曖昧なままだったわけだが、その代わり無数の所有印を体中に付けられたのだった。勿論、これでは人前はおろか、家族の前でさえ水着にはなれない。

「はいっ。今度は傑様ともしたいです」

少し間が空いてしまったが、素直な感想を夏油に述べる彼女。夏油に対して、彼女はどこまでも純情だった。

「そうかい、それは良かった」
「はいっ」
「暑かっただろう？　おいで、私が身体を流してあげよう」
「えぇ！？　そっそんな、悪いですよ……！」
「フフ、と言いつつすぐに駆け寄って来るナマエが私は好きだよ」
「……！　私も好きです！」

頭を撫でられ嬉しそうにしていた彼女がはっとしたように返す。
2人は浴室へと向かうのだった。