連日に渡る現地での映画撮影がようやくクランクアップを迎え、打ち上げも程々に帰宅した虎杖。逸る気持ちを抑えて先にシャワーを浴び、いよいよ彼女の眠る寝室にと足を踏み入れれば、半年程前に彼女がわざわざ予約購入していたデフォルメした自分モデルの超巨大ぬいを抱きしめて眠っていた為、吃驚。同時に、もしかして寂しかったりしたんかな！？なんて都合良く捉えて、んんん可愛い過ぎじゃねぇ？？と静かに歯を食いしばりながら悶えてる。

「ん……」

起こしてしまったかと一瞬ドキリとしたが、ただの寝息で安堵する。しかし、抱き枕と化したぬいをぎゅっと抱き寄せる彼女を見ているうちに何だか少しずつモヤモヤしてきて。ほんとだったら今頃、彼女を抱きしめて眠るのにと、自分の場所がぬいに取られてしまっている事に気付いたらもう我慢ならなかった。
せーの、と慎重に、しかし素早く、力を入れて彼女の腕の中からぬいを引き剥がした虎杖は、彼女の腕がシーツに落ちきる前に手を滑り込ませる。そのまま抱き締めて彼女の頭に顔を埋めれば、自分と同じシャンプーの匂い、のはずなのにどこか安心する優しい匂いがして愛おしくなる。仕事柄、帰りが遅くなったり帰れない日もあったりして寂しい時もあるけれど、こうして彼女が待ってくれている事を実感する度に幸せな気持ちになるのだ。

「ゆ、じくん……」
「……ふはっ、まさか俺の夢見てくれてんの？」

起きたら吃驚するだろうなぁ。彼女の寝起きの反応を楽しみにしながら、虎杖は目を瞑るのだった。

「ん……ん"？！」

起きたら抱き締めていたはずのぬいが虎杖に代わっていて吃驚する彼女。慌てるも咄嗟に彼を起こさないようにと口元を押さえる。頭の中が？だらけだが、昨夜は寂しくてぬいをベッドに持ち込んだ事もあり、満更でもなかったり。とりあえず彼がまだ寝ている事もあり、いつもよりも積極的に彼の方へ擦り寄ってから、彼女はまた目を瞑るのだった。一方、狸寝入りして反応を楽しんでいた虎杖は、思わぬ展開にドキドキしてしまい、結局誤魔化しもあって慌てて目を覚ます事になるのだった。