「……」
「え、あれ、狗巻くん……？」

急に黙り込んだ彼にちょっと動揺する女性。
てっきりいつものように限られた語と身振り手振りで返してくれるものかとばかり思っていたからだった。
そんな時、たまたま近くを通りかかった彼女を見つけ、その場でわざわざ声を掛け手を振ってアピールしだした狗巻。彼女咄嗟に彼とその隣にいる女性との間から何か気まずさを感じとるも、執拗に手招きする彼に逆らう気も起きず、渋々と近づいて行く。

「えっと、何か御用です、」
「高菜ぁー♡」
「えっわっ、ちょっと狗巻さん……！」

近寄るなり突然抱き締められ腕の中に閉じ込められた彼女は、人前なのもあって慌てて離れようともがいた。しかし狗巻がそれを許さず、彼女の慌てた声だけが辺りに響く中、彼の目線は女性を捉えていた。

「っ、」

狗巻の据わった瞳からは、相手を拒絶する意がひしひしと感じとれて。まるで邪魔をするなと言わんばかりの威圧感に、恐怖心を抱いた女性はそそくさとその場から居なくなった。その後解放された彼女が女性が居なくなっている事に気付きもしやと勘違いしかけた所を狗巻は涼しい顔で

「おかかー」

腕でバツを作り否定するのだった。

（多くは語らない（語れない）からとりあえず邪魔すんなよ？て彼女の見えないところで静かに牽制する狗巻さん好き過ぎるんですよ……）