「……あんた何か勘違いしてねぇか？」

ピリッとした空気を感じて、思わずたじろぐ女性。
それでも思い切って、女性は「何がっ？」と伏黒に聞き直した。

「俺があいつを選んだのは俺の判断、あいつが俺を選んだのはあいつの判断だ。それを今更変えてやるつもりは毛頭ねぇ」
「っ……や、だからね？　人間なんだから心変わりくらい」
「するわけねぇだろ」

殺気にも似た冷たい目が女性を捕らえる。あまりの威圧感に女性はそれ以上何も言えなかった。

帰り道、彼女とスマホでやり取りをしていた伏黒は、夜ご飯のお誘いをして了承を得た。必要な材料を買い集め、彼女の部屋へと向かうと、いつものように明るい笑顔で彼女が出迎えてくれた。2人並んで台所に立ちながら他愛の無い話をしていると、彼女がところでと話を切り出した。

「こうしてたら、何だか夫婦みたいだよね」
「！」
「あはは、なんちゃってー。き、気が早過ぎるよね！　まだどうなるかも分からないの、に……」

怪訝な表情で迫ってきた伏黒に彼女はそのまま唇を奪われた。伏黒によって、一歩二歩と後ずさるのを余儀なくされた彼女は、背後にあった壁に背中を押し付ける。息をする暇さえ与えて貰えない程の濃厚なキスに、彼女の身体が甘く痺れる。もはや壁にもたれていなけば立っている事さえ難しいといった所で、ようやく伏黒の唇が離れた。

「まだとかねぇかんな」
「っ……え？」
「お前を離してやる気は一生ねぇから……覚えとけよ」

返事は？　
黙る彼女に問い掛ければ、彼女緊張した面持ちではいと一言。その後はまた普通に中断してた支度をやり始めるものだから、彼女の頭には暫く疑問符が飛び交っていたのだった。

（離れる気も離す気も離してやる気もない伏黒君の普段クールだけど実は愛が重い部分が書きたかった……！）