「うん、勿論構わないよ。」

そう言ってすぐに差し出した手を握ってくれる優男。
そのまま歩き始めるんだけど、黙っているのも気恥ずかしくて、

「今日ほんと寒いねー！」

なんて俯きながら喋るナマエ。
少しして、チャリンチャリンと自転車のベルの音が前方からしたかと思えば、咄嗟に繋いでいた手を解いてナマエの肩に回した夏油に引き寄せられて自転車を回避する。
突然の事に固まっていれば、

「歩く時は、ちゃんと前を見るように。分かったかい？」

と優しく注意される。
慌てて謝って離れようとしたナマエだが、何故か肩の手に力がこもっていてそれは叶わなかった。
吃驚して見上げれば、「ところで、」と話す夏油と目が合う。

「寒いのは手だけかい？」

「…！」

ニコニコして聞いているがこれは意地悪する時の顔だと直感的に察するナマエ。
返答に迷っていれば、また一段と引き寄せられて空いた手に夏油の手が絡まってくる。
そして耳元にまで急接近して、

「お望みなら、全身温めてあげるよ…？」

と低い声で囁かれるのだから、お陰様で既に全身ポカポカ気分のナマエであった。