任務終わり。
酷い顔してんぞと五条に揶揄われたナマエは、反論する気も起きないでそのまま手洗い場で顔を洗っていた。
そこへ「大丈夫か？」と夏油がタオルを持参して来てくれたので、ナマエは有難うと受け取り、顔に押し当てた。

「また洗濯して返すね。」

「それは良いが君、また目を擦っただろう。目元が真っ赤だよ。」

「うっ…」

改めて、今度は夏油に指摘されたものだから、ナマエは慌ててタオルで顔を隠す。
好きな異性に見られたのだ。五条の時とは訳が違うかった。

「あ、はは…五条くんから聞いたんだろうけど、ちょっと任務で失敗しちゃって。私よりずっと小さな子を怪我させちゃって、」

「呪霊が、だろう？」

「え？あ、うん、そう…。……もっと早く気付いてあげられたら良かったんだけどね。」

そこまで言ってまた、ナマエの脳裏には怪我で泣き叫んでいたあの子の記憶が思い起こされる。
よほど怖かっただろうにとか、きっと傷跡が残るんじゃ無いだろうかとか、色々な思いが溢れてきて自分では歯止めが効かなくなる。

あ…やば。また泣いてしまいそうになった時、

「ちょっと失礼するよ。」

と、夏油がナマエを抱き寄せた。

突然の事に吃驚して固まるナマエに、

「どうせ泣くなら思う存分に泣いた方が良い…何、私の胸ならいくらでも貸してあげるよ。」

なんていつもの穏やかな口調で言うものだからすっかりそれどころでは無くなったナマエは慌てて離れて後退りした。

「ごっごめ…！でもさほら！そういうのは夏油君の好きな子にしてあげないと！！」

勘違いされるよーと我ながら意識しすぎだと思う程には動揺しながら笑って伝えると、

「勘違いも何も、私は端からそのつもりだよ。」

なんてまたもや平気な顔して言ってくるものだから思考がバグってしまい理解が追いつかない。

「それとも何だい？ナマエにはこの私が節操なく誰にでも触れるような、そんな男に見えてたのかい？」

「っ、そっそんなわけ…！」

思わず顔を上げると、見計らっていたように既に至近距離でナマエの事を見ていた夏油と思いの外近くて吃驚するナマエ。
固まるナマエに夏油はニコニコしながら、

「有難う。ところで、もう私の胸は良いのかな。」

と言ってくるものだから、一気に赤面しきったナマエは、俯きながら

「だ、大丈夫です…。」

と弱々しく返すのであった。