一週間なんて直ぐに過ぎてしまう。
私達は本格的な受験対策期間に入り、学校がほぼ無くなった。卒業するまであと数える程しか来なくなる。
中也とも会えなくなった。
家は近所だけど、彼女は必死に勉強してて、気軽に呼び出せる様な雰囲気じゃない。
私の方は、実はもうAOで終わっちゃったんだけど。
中也はずっと将来はお花屋さんになりたいと云っていて、その為に農業系の大学を志望している。本気で植物について勉強して、将来は自分の花屋を持つのが夢なのだ。
私みたいに適当にやってない。とても真剣だ。
だから、流石の私でも彼女を適当に呼び出すなんて出来ない。
この前の模試で漸くA判定になったらしいから、きっと今ノリにノッてることだろう。

「暇だなあ……」
毎日LINEで『大好きだよ中也、勉強頑張ってね』と送っているけど、来るのは『はいはい』という素っ気ない返事ばかり。最近じゃもう既読すらつかないこともある。
周りも皆受験モードで、一般で寒い時期に動くのが嫌だというだけでAOにした私みたいな人は一人もいない。当然だけど。
つまり、誰も構ってくれないのだ。
「…………」
暇だ。
暇すぎて『名探偵コナン』の既刊を全巻読み、『ONEPIECE』も最新刊まで制覇し、『ハリー・ポッター』もシリーズ全話観たのにまだ暇だ。
ついでに『源氏物語』もきっちり全巻読んだ。

暇だ。
部屋を埋めた暇潰しグッズには飽き、大学の課題は一瞬で終わり、テレビもネットサーフィンも退屈だ。
入水するには寒すぎるし、首を吊ったら縄が切れるし、リストカットはメンヘラの代名詞みたいになったからなんとなくやりたくない。
もう本当にやることが無い。
中也から苦手な数学とかのヘルプのお願いがくるかしら、とスマホを見つめても、中也どころか誰からの連絡も無い。
『中也、勉強捗ってる？数学とか躓いてない？私が教えてあげようか？』と、結局は中也にラブコールを飛ばしてしまう。

スマホをベッドにぽんと投げ、私も遅れて横になる。
寝るしかすることないじゃない、此れ。

暇だよ中也、寂しいよ。
久し方会ってないけど、ちゃんと寝てる？ご飯食べてる？私に云われたかないだろうけど、折角の綺麗なお肌は大切にしてね。無理しちゃ駄目だよ。たまには息抜きしてね、付き合うから。

たぷたぷと打ったその文面を消して、私はスマホをまた投げて目を瞑る。
二度も投げられた文明の利器はやっぱりうんともすんともいわないのだ。