これは恋か友情か
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とも-だち 【友達】
互いに心を許し合って、対等に交わっている人。一緒に遊んだりしゃべったりする親しい人。友人。朋友 (ほうゆう) 。友。
少年は辞書を閉じた。
正しく自分達のことだな、と彼は思った。
頭の中に浮かぶのは、自分よりも背が高くて、髪が短くて、さっぱりとした性格の女の子。初めてこの腕で抱きたいと、守ってあげたいと思った、唯一無二の女の子だ。
今日は彼女からケーキを貰った。先程食後のデザートとして頂いたそれは甘酸っぱくて、でもどこか温かくて、まるで恋のようだな、なんて柄にもなく思う。
初恋の味はレモンの味だと言う人がいる。いちごだという説もある。
彼は小さく笑った。そんなの嘘だ。
彼にとっての初恋はアプリコットであり、完璧な友情の花束の中に忍ばせた恋慕であり、幸せなのにどこか苦しい、狂ったような胸の内だった。
そばにいたい。抱き締めたい。キスがしたい。
知らなかった世界は、少年が思うより過酷で優しく、温かくて恐ろしいものだった。
いつか彼女は帰ってしまうかもしれない。
告げた想いを受け入れて貰えないかもしれない。
少年は微かに痛んだ胸を抑えた。
神様なんて信じてはいないけれど、彼は密かに月に願う。
この想いが露と消えるくらいなら、このままで。
こい-びと 〔こひ-〕 【恋人】
恋しく思う相手。普通、相思相愛の間柄にいう。
少女は辞書を開いた。
目当ての項目をそっと指でなぞり、静かに目を閉じる。
自分とあの人は、いつかはこの名前の関係に落ち着くのかな、と彼女は思う。
頭の中に浮かぶのは、自分よりも背が低くて、髪が赤くて、どこか可愛らしい性格の男の子。初めての淡いときめきを感じ、ずっとそばにいたいと思った、唯一無二の男の子だ。
今日は彼にケーキを贈った。少し前に貰った花束の礼として作ったそれを、彼はもう食べただろうか。美味しいって思ってくれたら嬉しいな。
その気持ちに与えられる名前に気づかないほど、彼女はは鈍感ではなかった。
初恋はレモンの味だと言う人がいる。いちごだという説もある。
少女には、まだわからなかった。
初恋だった。異世界いきなりやって来て、どうしようもなく不安で寂しい心を優しく慰め、それから荒れ狂う海に叩き落としたような、そんな恋だ。
嫌だ、落ちたくない。嘘、この海になら、堕ちてもいい。
少女はそっと「恋」をなぞった。
ねえ、あなたはどうですか。
あなたにとっての私は、恋ですか。友情ですか。
薔薇とトランプを統べる記憶の中の彼に、そっと語りかける。
答えをください、と彼女は月に願った。
この関係が恋なのか、友情なのか、どうか私に答えをください。
恋を恐れる少年と、恋を知った少女。
二人の願いを静かに呑み込んで、満月はそっと空に沈んだ。
互いに心を許し合って、対等に交わっている人。一緒に遊んだりしゃべったりする親しい人。友人。朋友 (ほうゆう) 。友。
少年は辞書を閉じた。
正しく自分達のことだな、と彼は思った。
頭の中に浮かぶのは、自分よりも背が高くて、髪が短くて、さっぱりとした性格の女の子。初めてこの腕で抱きたいと、守ってあげたいと思った、唯一無二の女の子だ。
今日は彼女からケーキを貰った。先程食後のデザートとして頂いたそれは甘酸っぱくて、でもどこか温かくて、まるで恋のようだな、なんて柄にもなく思う。
初恋の味はレモンの味だと言う人がいる。いちごだという説もある。
彼は小さく笑った。そんなの嘘だ。
彼にとっての初恋はアプリコットであり、完璧な友情の花束の中に忍ばせた恋慕であり、幸せなのにどこか苦しい、狂ったような胸の内だった。
そばにいたい。抱き締めたい。キスがしたい。
知らなかった世界は、少年が思うより過酷で優しく、温かくて恐ろしいものだった。
いつか彼女は帰ってしまうかもしれない。
告げた想いを受け入れて貰えないかもしれない。
少年は微かに痛んだ胸を抑えた。
神様なんて信じてはいないけれど、彼は密かに月に願う。
この想いが露と消えるくらいなら、このままで。
こい-びと 〔こひ-〕 【恋人】
恋しく思う相手。普通、相思相愛の間柄にいう。
少女は辞書を開いた。
目当ての項目をそっと指でなぞり、静かに目を閉じる。
自分とあの人は、いつかはこの名前の関係に落ち着くのかな、と彼女は思う。
頭の中に浮かぶのは、自分よりも背が低くて、髪が赤くて、どこか可愛らしい性格の男の子。初めての淡いときめきを感じ、ずっとそばにいたいと思った、唯一無二の男の子だ。
今日は彼にケーキを贈った。少し前に貰った花束の礼として作ったそれを、彼はもう食べただろうか。美味しいって思ってくれたら嬉しいな。
その気持ちに与えられる名前に気づかないほど、彼女はは鈍感ではなかった。
初恋はレモンの味だと言う人がいる。いちごだという説もある。
少女には、まだわからなかった。
初恋だった。異世界いきなりやって来て、どうしようもなく不安で寂しい心を優しく慰め、それから荒れ狂う海に叩き落としたような、そんな恋だ。
嫌だ、落ちたくない。嘘、この海になら、堕ちてもいい。
少女はそっと「恋」をなぞった。
ねえ、あなたはどうですか。
あなたにとっての私は、恋ですか。友情ですか。
薔薇とトランプを統べる記憶の中の彼に、そっと語りかける。
答えをください、と彼女は月に願った。
この関係が恋なのか、友情なのか、どうか私に答えをください。
恋を恐れる少年と、恋を知った少女。
二人の願いを静かに呑み込んで、満月はそっと空に沈んだ。
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