これは恋か友情か
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あれから図書館で調べたけど、元の世界に帰る方法は見つからなかった。
この世界の植物や食事は発祥不明の物が多いけど、それらはどれも「ある日突然生えてた」とか「なんか適当にやったら出来てた」とか、そんなゆるゆるな記述ばかり。
緩すぎん?と思ったけど、そういえばここは魔法の世界。なんでもありなんでしたそうでした。
桜の木も見に行ってみたけど、今は時期的に落ち葉を散らしていた。
今日は休日。
マジフト部に参加するというグリムを見送った後、私はキッチンに立った。
リドル寮長へのお礼のケーキを作るためだ。
このためにトレイ先輩にレシピを聞いて、材料も揃えた。準備万端だ。
今回はリドル寮長のみに贈るので、いつも頂くのより小さいサイズで作る。
いちごのタルトはトレイ先輩のをたくさん食べているだろうから、ちょっと珍しいあんずタルトだ。
これはまだ寮長は食べたことがないらしい。
しかしこの世界は本当にすごい。今は冬なのに、初夏に実るはずのあんずがもう出来ていた。
魔法って便利だな。
「成功してくれよ……」
レシピに穴や抜けはないから、もうあとは己の腕次第だ。
女子力皆無の不器用人間がどこまで粘れるかな。
結論:トレイ先輩って凄い。
私は何とか形にしたタルトを箱に入れ、冷蔵庫にしまった。
「つっかれた……」
私でもちゃんと作れるレシピを分かりやすく教えてくれた先輩マジ凄い。感謝。
目の前にはちゃっかり自分用にもう一個作った全く同じものが置いてある。
カロリーってナニソレオイシイノ?
「いただきまーす」
この世界では私以外誰もやらない食前の挨拶をして、フォークを入れた。
「あ、美味しい」
そりゃそうか。トレイ先輩のレシピだもんな。
これならリドル寮長に渡しても大丈夫だろう。
少し冷蔵庫で寝かして、カードを添えて……ってまだ書いてないじゃん。危ない危ない。
私は慌てて買っておいた小さなカードを取り出した。
赤と白のシンプルなカラーリングがハーツラビュルを思い起こさせる、素敵なデザインのものだ。
『花束ありがとうございました。嬉しかったです』と書いて、セットの封筒に入れる。
少し時間を置いて冷蔵庫からケーキを取り出し、外箱に封筒をマスキングテープで貼り付けた。
「よし」
ハーツラビュルに進撃して、無事リドル寮長にケーキを渡した。
「ボクに?」と訊いてきたから、「この前の花束のお礼です」と返答した。
「ありがとう。大事に食べるよ」とにこにこ笑う寮長は本当に天使の生まれ変わりか何かだろうか。今すぐ国で保護してほしい。
「トレイ先輩と比べれば全然ですけど……」
「君が作ったなら大丈夫だよ。トレイもこの前君は筋がいいと言っていたからね」
トレイ先輩優しい……。というかハーツラビュルの先輩方はみんな優しい。
リドル寮長もオバブロ事件後はかなり態度が柔らかくなったし。
「じゃあ、私はこれで」
「ああ。じゃあね」
手を振る寮長。
「渡せた……」
嬉しい。リドル寮長の笑顔が見られて、とても嬉しい。
「喜んでくれるといいな」
タルト生地に忍ばせた蜂蜜とアプリコットのような、どこか温かくて、甘酸っぱい気持ちがふわりと広がる。
私は上機嫌で、オンボロ寮への道を歩いた。
この世界の植物や食事は発祥不明の物が多いけど、それらはどれも「ある日突然生えてた」とか「なんか適当にやったら出来てた」とか、そんなゆるゆるな記述ばかり。
緩すぎん?と思ったけど、そういえばここは魔法の世界。なんでもありなんでしたそうでした。
桜の木も見に行ってみたけど、今は時期的に落ち葉を散らしていた。
今日は休日。
マジフト部に参加するというグリムを見送った後、私はキッチンに立った。
リドル寮長へのお礼のケーキを作るためだ。
このためにトレイ先輩にレシピを聞いて、材料も揃えた。準備万端だ。
今回はリドル寮長のみに贈るので、いつも頂くのより小さいサイズで作る。
いちごのタルトはトレイ先輩のをたくさん食べているだろうから、ちょっと珍しいあんずタルトだ。
これはまだ寮長は食べたことがないらしい。
しかしこの世界は本当にすごい。今は冬なのに、初夏に実るはずのあんずがもう出来ていた。
魔法って便利だな。
「成功してくれよ……」
レシピに穴や抜けはないから、もうあとは己の腕次第だ。
女子力皆無の不器用人間がどこまで粘れるかな。
結論:トレイ先輩って凄い。
私は何とか形にしたタルトを箱に入れ、冷蔵庫にしまった。
「つっかれた……」
私でもちゃんと作れるレシピを分かりやすく教えてくれた先輩マジ凄い。感謝。
目の前にはちゃっかり自分用にもう一個作った全く同じものが置いてある。
カロリーってナニソレオイシイノ?
「いただきまーす」
この世界では私以外誰もやらない食前の挨拶をして、フォークを入れた。
「あ、美味しい」
そりゃそうか。トレイ先輩のレシピだもんな。
これならリドル寮長に渡しても大丈夫だろう。
少し冷蔵庫で寝かして、カードを添えて……ってまだ書いてないじゃん。危ない危ない。
私は慌てて買っておいた小さなカードを取り出した。
赤と白のシンプルなカラーリングがハーツラビュルを思い起こさせる、素敵なデザインのものだ。
『花束ありがとうございました。嬉しかったです』と書いて、セットの封筒に入れる。
少し時間を置いて冷蔵庫からケーキを取り出し、外箱に封筒をマスキングテープで貼り付けた。
「よし」
ハーツラビュルに進撃して、無事リドル寮長にケーキを渡した。
「ボクに?」と訊いてきたから、「この前の花束のお礼です」と返答した。
「ありがとう。大事に食べるよ」とにこにこ笑う寮長は本当に天使の生まれ変わりか何かだろうか。今すぐ国で保護してほしい。
「トレイ先輩と比べれば全然ですけど……」
「君が作ったなら大丈夫だよ。トレイもこの前君は筋がいいと言っていたからね」
トレイ先輩優しい……。というかハーツラビュルの先輩方はみんな優しい。
リドル寮長もオバブロ事件後はかなり態度が柔らかくなったし。
「じゃあ、私はこれで」
「ああ。じゃあね」
手を振る寮長。
「渡せた……」
嬉しい。リドル寮長の笑顔が見られて、とても嬉しい。
「喜んでくれるといいな」
タルト生地に忍ばせた蜂蜜とアプリコットのような、どこか温かくて、甘酸っぱい気持ちがふわりと広がる。
私は上機嫌で、オンボロ寮への道を歩いた。