第一章
夢小説設定
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聞き間違いなどではない。
はっきりと"今夜抱きます"と言われた。
これで華の不安はひとつ解消されたものの、"初めて"に不安が無いわけはない。あの後は会話も止まってしまい、しんと静まり返った食卓は変な緊張感に包まれて、食を味わうどころではなかった。
食事を終えると、陣内左衛門は「食事の片付けは私がやりますから」とさっさと動いてしまったので、華は寝仕度を調えることにした。
夜着になり、いつもより丁寧に敷いた布団の上で正座になって陣内左衛門を待つ。緊張のあまり目が回りそうだった。でも…それでも……
彼が自分を抱くと、そう言ってくれたのは嬉しかった。これで妻としての役目が果たせる。ここにいることを許されたという気がして安堵した。
「お待たせしました」
そう言って陣内左衛門が目の前に座ろうとするのが見え、華は慌てて頭を下げた。
「あ、改めまして…不束者でございますがどうぞよろしくお願いいたします」
「……私は、結婚してから貴女を不束者だと思ったことは一度もありません」
上から降ってきたその声はとても柔らかで優しく、華が顔を上げるとその通りの眼差しの彼と目が合った。
改めて見ると、なんて美しい殿方なのだろう…
華は吸い込まれるように陣内左衛門を見つめた。陣内左衛門もまた、しばらく華の顔を眺めていた。
そしてふっと陣内左衛門が笑みを見せたかと思うと華の身体を引き寄せすっぽりと自身の胸に埋めてしまった。
華の耳元で、どくどくと陣内左衛門の心臓の音がする。彼の手が、身体が熱いのを感じた。
「………実は私もひどく緊張しているのです。しかしそれ以上に貴女は緊張してるのでしょうか。だから、されて嫌なことは嫌だと言ってくれて構いませんので」
くっついている為に陣内左衛門の低い声が全身に響いた。
「はい……でしたら、その、ひとつだけお願いが」
「なんなりと」
「灯りを、消してもよろしいでしょうか」
「灯りですか?」
「は、恥ずかしいので…」
陣内左衛門は一瞬きょとんとしたがすぐに
「それは気が付かず、申し訳ない」
と言った。そう言いつつも口元を手で抑え、少し笑っているように見えた。
「わ、笑っていらっしゃる?」
「すみません。貴女のことを本当に可愛いと思ったもので」
「可愛いだなんて…」
言われたことなどあったろうか。子供の頃から注目されるのはいつも一際美しい姉だった。
「貴女はとても可愛いです。だから、本当は灯りを消してしまうのが勿体無い」
華は両頬に触れられ上を向かされる。再び目が合うと何故か涙が出そうになった。
「…ですが、今日のところは貴女のご要望に従いましょう」
陣内左衛門はそう言って火を消し、華を横たえた。