第一章
夢小説設定
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家に帰れば、柔らかな心地の良い「お帰りなさいませ」の声と笑顔が出迎えてくれ、温かい飯が用意されている。
最初はぎこちなかったやり取りも、一月も経てば互いに呼吸が分かりだいぶ会話もスムーズになった。これは自分が変わったというより華の努力だと陣内左衛門は思っていた。
華は、人をよく見ている。
他人の感情の機微に敏感というか、決して表情豊かとは言えない自分の細かい変化を見逃さない。隣の山本家とも良好な関係を築いており、子供たちとも仲が良いようだった。ただ自己主張が少なく一歩引くところがあるので、本人は"気の付かない質"だと言っていたが気を遣いすぎるの間違いだろうと思える。
そんなわけで、年若い新妻の徹底して人に合わせる性質のお陰で自分は快適に過ごせているわけだが、そのせいで彼女の求めているものが分からない。
これでは一方通行だ。陣内左衛門としては、華にも心豊かに暮らして欲しいのだ。対等な関係を築くのが彼の理想であった。
それから悩ましい問題は夜の事。
初めてだからといって遠慮して全く手を出さないのも失礼な気がするし、かといって初夜の怯えぶりを見ると気軽に触れて良いとは思えない(というか距離の詰め方が分からない)。家に帰ると、彼女がきっちりと身なりを整えていることもあって、まだ触れてくれるなという無言の抗議なのかもしれないなどと考えて、結局何もできずに今に至る。
そんな中昆奈門の子を見に行くことになったので、話の流れで子が欲しいかどうかだけでも聞いてみようかと思ったのだが……
思いの外早く話が変わってしまい、焦って微妙な間で
「子どもは何人欲しいですか」
などと口にしてしまうとは……
彼女は思いもしなかった問いに固まってしまった。
質問もタイミングも完全に間違えた。
これでは昆奈門の誘い文句がどうのなどと言えない。むしろ自分の方がひどい。
華はしばらく固まったままかと思ったら、言葉の意味をようやく理解したと見えて首から上を真っ赤に染め上げた。そして伏し目がちにして小声でこう答えた。
「貴方の子なら、何人でも嬉しいです…」
その恥ずかしそうに答える様が可愛くて愛おしくて、陣内左衛門は今すぐにでも彼女を押し倒したくなった。こんな衝動は滅多に起こらない。女も知らぬ若いのでもあるまいし、ここでがっついてしまってはこの年若い妻の"初めて"を怖い思い出にしてしまう。それにまだ食事中だ。陣内左衛門はなんとか自制して、ひとつ咳払いをしてから彼女を真っ直ぐに見た。
「……では今夜貴女を抱きますが、よろしいですか」
華がこくりと、確かに頷いたのが見えた。