第一章
夢小説設定
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それから一月が経った。
その間タソガレドキ城内は、タソガレドキ忍軍の組頭雑渡昆奈門の子誕生にすっかりお祭り騒ぎだった。これだけ騒がれるというのは昆奈門の存在がいかに城内で大きく、かなりの影響力を持つということだ。
その影響で陣内左衛門も城内の仕事で忙しく、また陣内左衛門の妻である華も、この一月祝いの品を選んだりとこの新婚夫婦は関係を深める間をすっかり逃し、慌ただしく過ごしていたのだった。
しかし忙しかったとはいえ、華は夫に触れられることが全くなかったことに不安を覚えた。
初夜は自らが緊張のあまり怯えてしまい事に及ばなかった。二日目、三日目も互いの話をしてから隣で眠った。そろそろかと思った四日目も、何もなかった。そして五日目は雑渡昆奈門の話題で終わった。それから、何事もなく一月経つのだ。
努力はしているつもりだった。
山本家に出向いて料理を教わったり、家も念入りに掃除をして身なりを整えて帰ってくる陣内左衛門を迎えた。
優しく丁寧に接してもらえていると思う。
しかし、それだけだった。
女としての魅力が足りないのではないか、気になる女性がいるのではないか…
そんな不安に駆られながらも本人に問う勇気もなく、夜を誘う勇気もなく日が過ぎていった。
「華さん」
ふたり向き合って夕飯を食べていると、ふいに陣内左衛門が声をかけてきた。
結局"華"と呼ばれたのは最初の一度だけで、その後は呼び捨てにされることはなく"華さん"で定着した。
「はい」
「急なのですが、明後日組頭の御子を見に行きませんか?」
「私も行ってよろしいのですか?」
「もちろん。志乃…組頭の奥方が是非夫婦で来てくれと言っているということなので」
陣内左衛門が昆奈門の妻を"志乃"と言ったことに華の胸がぴりと痛んだ。親しい仲なのだろうか。それを振り払うように少し笑って見せた。
「……奥様、体調はよろしいのですね」
「あぁ、安産だったという話だし、元々体力があるからなのか回復も早いらしいです」
「それは良かったです。では、お土産用意しておきますね」
「ありがとうございます。助かります」
陣内左衛門は丁寧に礼を言った後、再び夕飯を口に運び始めた。その食事姿はとても規則正しく静かであまりにも綺麗なので、華はつい見入ってしまう。
見られていることに気付いた陣内左衛門が箸を置いたので、華は慌てて取り繕った。
「あ、えっと、お口に合いますか?」
「はい、とても美味しいですよ。家に帰って貴女の作った温かい食事をいただけるのは嬉しいことです」
その言葉を聞いて華はホッとした。
それもつかの間、陣内左衛門が突然
「華さんは子ども何人欲しいですか」
と言ってきたので華は固まってしまった。